「人口知能(AI)は、経営にどんな影響を与えるでしょうかね?」
先日、クライアント企業の社長さんと次の新規事業をテーマにしてお話をしていたときのこと―。
私が大注目している『人工知能』の話になりました。
私は、自主開催セミナーで2030年にはパソコンが姿を消す。という予測をよくお話しています。
これは『人工知能』がカタチとしてのパソコンを不要にするのでは?と感じているためです。(コンピュータの上で人工知能は動くので、カタチとして…と表現しています)
何を根拠に…と思われるかも知れませんが、これは人工知能だけの見地からではなく、藤冨がお伝えしている「波及営業」のベースになっている「イノベーション普及学」からも予見できるのです。
イノベーション普及学とは、社会学者のロジャーズが提唱したもので、新しい技術や商品・サービスが、どのように普及するのかを説明した理論です。
この理論では、新しい技術などが生まれてから、普及していき消滅するまでの時間軸を取るとキレイな正規分布図を描くと言われています。
本当か?
と思い、私が営業マンとして携わっていたときの商品「パソコン」をベースに同法則に基づいて興味本位で検証してみたところ…世界初のパソコン「アルテア」という商品が1974年発売されてからウィンドウズ95が発売された1995年までが「導入期」で、その間およそ21年間の歳月を要していました。
そして6年間で市場は急成長を遂げ2002年より成熟期に入り、2008年には理論上の衰退期に入っていました。
成長期から成熟期が6年間。
成熟期から衰退期が6年間。
この12年間は、ものの見事に正規分布を描いていました。
ということは、2008年から21年後の2029年 — つまり13年後の未来はパソコンという商品が世の中から消えるという予測がつく訳です。
ただし、消え行くからには、その代替機能を果たす「何か」がなくてはなりません。
その「何か」が、人工知能になるのでは? と感じているのです。
これは、時代の大きな流れを俯瞰してみていたときにも、気づかされたことです。
人間社会は、自己の能力を外部化することによって、生活を快適にし、仕事上での生産性を高めてきたと見る事ができます。
その外部化の視点は、大きく分けて3つあると感じています。
一つ目が「肉体労働の外部化」です。
車や電車、飛行機などの移動手段。
洗濯機や掃除機、炊飯器などの生活電化製品。
そして、重機による建設やコピー機による事務作業の生産性向上など「肉体労働外部化できる道具」をつくってきました。
これが、第一のステージと捉えています。
そして、第二ステージは「原始的な脳の働きの外部化」です。
コンピュータやインターネットの出現で「計算」や「記憶(知識)」を外部化し、さらに個人や産業構造の「コミュニケーション」を変化させることで、人間の能力増強を図ることに成功しました。
なぜ、原始的かというと、鳥でも虫でも栄養素として摂取できる食物を記憶し、食べごろになるものや効率的に採取できる方法を計算して行動しているからです。
しかし、これからはもっと高度な判断が出来る「概念の獲得」が人工知能によってもたらされ、あたかも「思考」をもったように振る舞えるようになる道具へと進化していきます。
それが第三のステージである「思考・判断の外部化」です。
人工知能は驚くほどの発達により、「高度な脳の働き」の外部化まで実現できるようになっています。
人間の視覚や聴力をはるかに超えた感度をもつセンサーで、環境を認識し、さらに自らの働きが周囲にどのような影響を与えるのかまで計算できるようになっているので、あたかも「思考」を持ったように振る舞う「判断」ができるようになっています。
人工知能の世界に触れてみると分かりますが、この分野で一歩抜きん出るには、情報の蓄積と結果の結びつけの「量と計算式」がカギを握ります。
結果に影響を与える情報と与えない情報を蓄積し続けること。
因果関係における抽象概念を獲得し、予測機能との整合性を検証し続けること。
この知識獲得とブラッシュアップに尽力した企業や人が、人工知能社会の勝者になることは間違いありません。
大きな流れの中では、検索結果を世界中から集めているGoogleや、本だけでなく家電、食品・日用品までの購買データを蓄積しているAmazonなど、莫大なプラットフォームをもっている企業が有利になることは間違いない現実です。
しかし、彼らにすべてのビジネスチャンスを奪われることはありません。
日本の中小企業経営者も、この大きな流れを意識し、自社の事業モデルや会社運営のなかで、人工知能がもたらす影響を常に考え続けることで、業界内で革新をもたらすアイディアが生まれてくるはずです。
ポイントは、繰り替えしになりますが、
結果に影響を与える情報と与えない情報を蓄積し続けること。
因果関係における抽象概念を獲得し、予測機能との整合性を検証し続けることです。
アンテナなくして、情報は入ってきません。
今出来る事は、アンテナを高くし、つねに感度良好に保つことです。
人工知能の最先端研究者である東大の松尾教授は、「資本主義経済においても、生物が生き残る環境においても、《予測性が高いものが勝ち残りやすい》という本質的な競争条件がある」と言っています。
これから人工知能がもたらす変化は、「購買行動」だけではなく「社員の働き方、雇用関係」にまで影響することは容易に予測できます。
御社では、人工知能が自社に与える影響を予測し、アンテナの感度を高めていますでしょうか?