「営業マンに頼る部分と頼らない部分を分けて考える…今まさに取り組もうとしていますが、具体化するのは意外にも難しいものですね」
先週のコラム「なぜ営業研修では、人を育成できないのか?」 を配信直後に、以前セミナーにご参加された社長さんからメールを頂きました。
なんでも、ホームページを全面的に改良する予定で、3社ほどから提案と見積もりを依頼しているとのこと。
「営業マンには「商談」に専念をさせて、商談の場をつくる「集客」に関しては、ホームページに投資をしていこうと思っているんです。
でも、提案を受ければ、受けただけ、迷いも深くなります。何を中心にして考えれば良いでしょうか?」
というお悩みでした。
お悩みをコラムでシェアさせて頂く了解のもと、話をつっこんで聞いてみましたが …… 業者のあまりにも低いレベルに驚いてしまいました。
1社だけではありません。3社ともピントが外れていたのです。
各社の主だった主張は…
1社は、Facebook広告と連動させるべきだ…という主張。
2社目は、文書による説明を極力排除し、画像中心にすべきだ!という主張。
3社目は、動画を中心に作り込むべきだ!という主張でした
どの主張も、自分の得意分野や受注額が膨らみそうな提案から入っている模様です。
クライアント企業のビジネスモデルを理解する姿勢は、まったくと言って良いほど見受けられませんでした。
Facebookは、生産材の営業には向きませんし、購買関与者が多数いる場合は、関与者毎に意思決定に必要な情報提供は欠かせません。
イメージを販売する洋服屋や宝飾品なら、画像中心のWEBサイトの方が訴求力は増します。
プチ贅沢品であれば、自己承認欲求が満たせるFacebookの世界は効果的です。
何の手法が効果的か? などの議論は、ビジネスモデルを理解した上で検討すべきものなのです。
ビジネスモデルを理解せずに、手法の話ばかりをするのは、単に自分の得意を売りたいだけであり、彼らと付き合っても「金づる」にされるのがオチです。
もちろん、専門知識がないから…と耳を閉ざして聞いている方にも責任があります。
たしかに、ホームページ屋と商談すると分からない単語が羅列するので、脳みそがフリーズしてしまいがちです。
それでも、自らのビジネスモデルを業者に理解させ、自分が理解出来る言葉に落とし込んでもらえるまで、「例えて言うならどうゆうことですか?」と突っ込んで摺り合わせをすることが大事です。
上記例でいうと、
「Facebook広告からリードしましょう。なので、WEBサイト構築費とFacebookページの制作費が掛かります」
と言われたら、
「Facebook広告では、どのような客層が反応するのですか? 弊社の顧客は意思決定は工場長であり、採用検討者は、ライン責任者になりますが……そのような顧客も集客できますか?」と自分の目線で聞いてみるのです。
こうした発注者側の質問によりフリーズをする業者をゴマンと見てきました。
ゴマンは大げさかも知れません。
しかし、生産材のWEBサイトの構築などに関与させて頂いた経験のなかでは、9割以上の業者が、クライアントのビジネスモデルを理解しないまま提案してきていました。
このちょっとした質問 — つまり我が社の顧客は集められるのか? という問いを発するだけで業者が9割以上もいなくなるのです。
集客だけでなく、サイトデザインについても同じです。
自社の顧客の購買選択基準から照らし合わせれば、イメージ訴求か、機能訴求 か ―は、必然的に答えが出てきます。
また、WEBサイトの場合は、ゴール設定も重要であり、どのような問合せトリガーを作るのか? オファーは掛けるべきか? など顧客の購買行動や購買基準に沿って考えないと大きく反応を落としてしまいます。
取扱商品の単価によっては、1%の反応率の誤差が、年間で数百万円ものコスト差を生み出してしまうケースさえあります。
売れる営業マンが、普通の営業マンの数倍、数十倍の成績格差をつけますが、WEBサイトも同様で、集客力に数十倍もの差が出てしまいます。
売上換算すると、数千万円にものぼる会社もあるほどです。
これは、何もWEBサイトに限ったことではありません。
広告デザイン、チラシ・カタログ製作、社外報、ダイレクトメールなどなど、プル戦略は、すべて「営業センス」が必要なのです。
営業センスのない人間は、顧客が何に反応し、どのような気持ちで商談を迎え、どのような検討ステージを経て、受注に至るのか…
そこまで考えたプル戦略の営業を設計できません。
私の知る範囲では、そうした営業センスのある設計者1割程度です。
その少数派である「成果をあげられる集客ツールを作れる業者」を見つけるには、発注者側の発注スキルを高める必要があります。
または、自社のビジネスモデルを理解してくれた上で、ツール制作や広告手法の両面からアプローチできる人材に発注要件を固めさせる方法もあるでしょう。
いずれにせよ、WEBにしろ、DMにしろ手法だけに踊らされないことが肝心です。
ビジネスモデル ― つまり売上がたつ瞬間から逆算し、「意思決定の場面」「商談の場面」「興味・関心を惹き付ける場面」をイメージし、それに適した手法を摺り合わせていくことが肝心です。
一般論なんて二の次です。
自社基準で考える事が大事なのです。
御社は、世の中の常識や一般論に目を向けず、自社のビジネスモデル基準で営業を設計していますでしょうか?