『営業マンの行動目標を決めているのですが、どうも売上との相関関係がないような気がしているのですが……ちょっと見てもらえませんか?』
様々な業界の企業から「営業戦略の立案と遂行」のお手伝いをさせて頂くなか、実践への落とし込みまで到達すると、多くの社長さんから求められるのが、このような行動目標のあり方です。
巷では、月間「何件の訪問目標を達成せよ」とか「手紙が1点、電話が2点、訪問が5点、月間100点を達成せよ」など、様々な行動目標のたて方が推奨されています。
どのような手法も、どこかの業界で成果に結びついたからこそ、推奨されているわけですが……
それが我が社にマッチするか否かは別問題です。
法人営業で数千万円、数億円の課題解決型商品を販売するのに、訪問回数が受注確度の向上に繋がるか…というと、その関係性は希薄ですし、そもそも論点がズレています。
課題を解決するようなシステム商品や産業機器などは「相手が正しく課題を認識できているか」また「その課題解決により、その影響はどこまで波及するのか」の認識が、受注確度の向上に強く影響していきます。
いくらセールス活動において「自社商品の特徴やメリット」を理解させても、相手が腑に落ちない…という現象は、その商品を買う利益にまで変換ができていないことが販売プロセスのボトルネックになっているのです。
営業マンが「何回も同じことを説明しているのに、相手がアホだから理解ができないだよなー」と居酒屋で愚痴っても意味がありません。
説明をいくらしたこところで、相手に「これはウチの利益になる」と気づいてもらわない限りは、受注には結びつかないのです。
ときどき同行営業をして商談を観察させて頂くなか、「正直、ここに何度足を運んでも受注はしませんよ」と言う現場もあります。
我が社の商品で解決できる課題が、相手の利益に繋がらない限り、接点は生まれません。
仮に接点が生まれても、課題解決の結果に得られる「利益」が、選択しない損失(購入しない場合の損失)を上回らない限り、受注には至らないのです。
しかし、行動目標が「訪問回数」になっている限り、営業マンのこの行動は正しいと言わざるを得ません。
それに、営業は魔物であり、50件に1件くらいは、この因果関係がなくても受注が成立することもあるので厄介です。
・ その商品を購入する以上、その営業マンと付き合うメリットがある。
・ 業績好調によって気持ちが大きくなり、衝動買いしてしまう。
などなど、動機は様々ですが、セリングポイントとバイングポイントがズレたまま成約に至るレアケースもあります。
このレアケースに営業マンは「自分が評価された!」と喜び、全ての世界で起こりえるように認識してしまうのです。
もちろん、営業マン個人がそう思うのは自由です。
そう思っていた方が、営業モチベーションがあがるのであれば、否定する必要すら感じません。
しかし、それを組織の基準にはなり得ません。
これは、冷静に精査すれば分かります。
コンサルティング現場でも、すべての要素をテーブルにあげて、この議論をすると会議室が一瞬凍ることがあります。
ムダな活動は、ムダな交通費などの経費を生み出すばかりでなく、ムダが積み重なると、ムダな人員まで抱える事になります。
「訪問回数」を目標にしてしまったがために、このようなムダを抱える現場を過去たくさん見てきました。
本来、「相手の認識」が受注と強い因果関係で結ばれているのなら、相手の認識を「見える化」して、それを目標に置き換える必要があるのです。
訪問活動のみならず、この相手の認識を一つのゴールに設定し、マーケティング活動も営業活動もすべてそこに絞り込んでいくことで「活動」と「成果」のパイプが太くなっていきます。
ムダな動きが減れば、多くの経費が抑制されるばかりでなく、効果的な活動が研ぎ澄まされていきますから受け取る果実も多くなっていきます。
システム商品や産業機器などを取り扱う理系企業の社長さんからは、「製造プロセスの最適化」と「営業プロセスの最適化」って同じアプローチなのですね……と言われますが、まさにその通りだと思います。
「正しい活動」が「最大の成果」を生み出すロジックをつくりあげる過程は、製造も営業も一緒です。
『下手な鉄砲数打っても当たらない』と、拙著「営業を設計する技術」でも過激な発言して波紋を呼んでしまいましたが、その真意はココにあります。
もちろん、訪問件数と売上に強い相関関係が見られる業界もあります。
日本アイ・オー・シーが創業当初手掛けていたフリーペーバーの営業活動などは、一日の訪問件数と売上には強い相関関係が見られます。
数十万円、いっても100万円程度の広告媒体で、受注動機は極めてシンプル。
「集客したい」「認知度をあげたい」「有名店に名を連ねてステイタスをあげたい」など、相手が求めていそうなポイントをグサリと刺す回数を増やせば増やすほど、受注件数は増えていきます。
武道の量稽古と一緒で、正しい動作を繰り返し・繰り返し続ける事でスキルが身に付き、成果にもしっかりと結びつく、そうゆう営業スタイルです。
このような業界であれば「訪問回数」を目標値にしても全く問題はありません。
ようするに「ゴール」から逆算したときに、どのような「活動」が「成果」に強く結びつくのか…まずはこれを明らかにする必要があるのです。
そして、回数や件数のように数値ができない活動があっても「見える化」出来るように知恵を絞り、目標値に変換する技術が必要なのです。
このロジックを構築しない限り、目標管理は絵に描いた餅で終わります。
御社の目標管理は、行動(営業活動)と成果(売上)の因果関係が解明され、それに沿ったマネジメントによって売上増大に貢献されていますか?