とことん「本質追求」コラム第138話 業績が伸びる環境の作り方

 

「ウチの営業マンにマーケティングを教育したいのですが、社員教育をお願いできますでしょうか?」

 

以前、当社セミナーにご参加された社長さんから1年ぶりにメールを頂きました。営業部隊は頑張っているものの思うように数字が伸びないというのです。

マンネリ化しているのか、環境が変わったのか…は定かではありませんが、先日、執筆したコラム「営業とマーケティングの違いとは?」を読んで思うところがあったようです。

 

残念ながら単発の社員教育は、お受けしていませんが、何故マーケティングを教育したいのか…その真意を知りたく電話で詳しく伺ってみることにしました。

 

と言うのも、「営業とマーケティングの違い」にも記載した通り、私の捉え方だとマーケティングとは経営そのものです。

 

「顧客になりえる人(法人)が、驚き、喜び、歓迎するような新しい価値を創造し、それを対象市場にまんべんなく的確なコミュニケションを展開していく活動」と、定義すると、これは営業部の仕事の範疇を完全に超えてしまっています。

 

このことは社長さんも分かっていました。

それでもなぜ営業部隊にマーケティングを教えたいのか…その意図を知れば、他に最良のアプローチが発見できると考えたのです。

 

「実はウチの営業は役割がちゃんと決まっていないですよ。チラシやDMを作るのは営業企画。ホームページは外注。でも藤冨さんのコラムを読んでいて気がついたのですが、これらの活動は皆“見込客の発掘”ですよね。」

 

「それでも営業には新規を開拓しろ!とハッパも掛けています。でも飛込みをするわけでもないし、電話営業もしていません。新規は全部“問い合わせ”か、以前展示会で名刺交換した人からの注文ばかりです」

 

「だから営業マンにマーケティングセンスを…」と話を進めようとされた瞬間に、方向がズレていたことにハッと気づかれたのです。

 

「そうか! 営業に数字の目標を持たせても、問い合わせは営業にはコントロールできないから、どこかで“オレの責任者じゃない”という雰囲気が出ていたのか…」と、本質にズドンと切り込んでこられました。

 

 

そうなんです。

自分でコントロールしにくい目標を与えられても、どこかで無責任になってしまいます。

自らのやるべきことが明確であり、正しくやれば結果に結びつくのであれば、自己責任は自然と芽生えてきます。

いえ、例え自然と芽生えなくても、「これはあなたの責任です」と堂々と自覚させることはできます。

 

結果が出ないのは、出ないなりの環境に問題があるのです。

 

1.何をどう行動すれば「成果」に結びつくかわかっていない。

2.自己コントロールできない要素が、成果に強い影響を与えている。

3.責任の所在が不明確であり、改善の工夫の必要性が浮き彫りにならない。

 

 

などなど、他にも様々な要素があると思いますが…

要するに、売れていくためのロジックが明確でなく、そのロジックを動かす目標が曖昧な環境では、結果は出にくいということなのです

 

営業部が飛込みやテレアポで「見込客」を発掘する組織であれば、営業マンが創意工夫し、「どう行動すれば成果に結びつくか」を考えなければなりません。

 

しかし、冒頭の企業さんのように「飛込み」や「テレアポ」といったアプローチが有効ではない事業体では、営業部以外の部署が「見込客」を発掘に強く関与しています。

 

・ホームページからの問い合わせ。

・  展示会での見せ方

・  カタログやチラシづくり

・  ダイレクトメール

 

などなど、販売促進的な要素に「見込客」の発掘が依存されているのです。

 

にも関わらず、営業にだけ目標があり、見込客発掘プロセスに目標がなければ、売れていくロジックに磨きがかかるはずもありません。

 

・  ホームページから「見込客」を集めるために必要な要素はなにか?それを最適化すれば、何件の「見込客」が手に入るのか。

・  展示会で「見込客」を集めるために必要な要素は何か?それを最適化すれば、何件の「見込客」が手に入るのか。

・  ダイレクトメールで「見込客」を集める為に必要な要素はなにか?それを最適化すれば、何件の「見込客」が手に入るのか。

・  カタログやチラシのつくり方を変えれば、どれだけの潜在客を振り向かせることが出来るのか。

 

などなど、目標をしっかりと立て、営業部と同様に結果に対する責任をあたえることが大切です。

 

企業によっては「営業企画部」「営業推進部」「マーケティング部」など様々な呼び方をされていると思います。この営業部以外の部署にも数値目標を与えるのです。

 

目標がなければ、成果が出ても出なくても、当の本人は責任を感じません。

とくにホームページの更新など、コストのかからない作業であればあるほど、責任意識は希薄化していきます。

 

今の時代は、営業マン以外の媒介である間接的営業アプローチに売上は大きな影響を受けています。

となれば、この営業プロセス全体を最適化させる環境づくりが、業績飛躍のキモを握っているといっても過言ではありません。

 

御社では、営業部以外の部署が「売上」に影響を与えていませんでしょうか?

影響を与えている場合、そこに「目標」はセットされていますでしょうか?