とことん「本質追求」コラム第128話 「営業マンの誇り」が新規事業の成功のカギ

「本当に社員の顔つきが変わってきました! 営業の士気も上がっています!!」

半年前にセミナーにご参加頂いた社長さんより、新規事業が一向に立ち上がらない…と、ご相談頂き2ヶ月間事業の方向づけのお手伝いを行いました。

商品を完成させ、市場投入の準備ができたら、後半ステージの拡販作戦を開始することになっていたのですが −−−スタート前から営業部隊は士気が高揚しているようです。

「準備が出来たので、そろそろお願いします」と、社長さんから頂いた電話で「やっぱり売り急ぐとダメですね」と、過去をしんみりと振り返っておられました。

私がお手伝いする前も、全社的な売上は逓増している状態でした。
しかし、価格競争が激しくなって粗利益率は、二桁近くまで下がってきている状態。

「このままではジリ貧になるから」と、新商品を発売したものの、営業は新商品を積極的に販売せず、新規事業は微動だにせず。

既存商品だけが売れ続け、危機感は募るばかり…という状況でした。

 

なぜ、新商品が売れないのか。

社長が営業に問いつめても、その回答に釈然とせず「真意はどこにあるのか…」と困り果てて、セミナーにご参加されたのです。

セミナー終了後に、改めてお話をきくと、

・  毎週月曜日に営業会議をするものの、新商品は見込すら上がってこない

・  理由を聞いても、コストが高い、効用が不明瞭…と説明が行き届いてないのでは…と思う程、短絡的な断り文句ばかり。

・  業界雑誌に広告を出稿するのもの、反応はゼロ。

・  販売代理店を募ってみたものの、その先からが、まったく売れない…。

 

社長としては、今の状況に危機感を覚えてはいるからこその「新商品」販売です。
しかし、営業現場には、その危機感が伝わっていません。

売上は微増ですが予算は達成しています。
だから「俺たちはやることはやっている!」と胸を張ってしまうのも、ある意味仕方のないことでした。

 

これは、他の会社で時々見られる現象ですが、管理職をはじめ営業マンの多くは「売上目標」しか掲げていないと、「今」しか見られなくなり、「未来」に対して盲目的になってしまいます。

とくに今回のような状況は厄介です。

社長としては、会社の未来を築くタネ銭(利益)が思うように稼げなくなっているのですから、「市場に翻弄され負けている…」という感覚が芽生えていました。

しかし、社員は日々、目一杯働き地を這うような営業活動の中から受注を獲得しているので「競争には勝っている!」という感覚に陥っているのです。

コンペに勝たなきゃ売上はゼロ。
勝てば利益はスズメの涙でも多少は入る。
だから、俺たちはやるべきことはやっている!という訳です。

どちらも、当事者から見ると、至極当然の心理に陥っているわけです。

これを正すには、「経営として道筋」をしっかりと共有するしかありません。
説得ではなく、納得してもらわないと、新商品は売れないからです。

 

ところが、議論を尽くしてみても、一向に営業部長の主張は変わりません。

どう転んでも売れないものは売れない……というわけです。

「新商品は、売れません。私のお客さんにテストで使ってもらいましたが、●●と商品と比較すると根本的に存在価値がないんですよ」

と、現場の反応をストレートにブツけてくれたのです。

これまで何度も言おうともったそうですが、社長に悪いから…と敢えて言わなかったようです。
そこで、既存商品と新商品という枠を一旦取っ払い、お客さんの「あるべき姿」と「現状」を洗いざらい議論することにしました。

 

煮詰まったときには、「そもそも論」でディスカッションする方がブレイクスルーしやすいからです。
すると、新商品である必要性がなく、既存商品をリニューアルした方がマーケットのニーズを掘り起こせるのでは? と社長も部長も気づき始めたのです。

 

営業部長は、すぐさま部下の営業マンを会議室に呼び出し、新しい切り口について説明し出すと、10名ちかい営業マンの皆さんが「あーそれならイケそうですね!」と前のめりになってきたのです。

既存商品が停滞したことがキッカケとなり「新商品」で稼ごうとしていたときは、営業マンの皆さんは、明らかにシラケていたそうです。

ところが、我々が本来提供すべき「価値」は何なのか…と議論を尽くしたあとは、営業マンの皆さんから明らかに「誇り」が芽生えてきたのです。

もともと、売れる営業組織です。

誇りを取り戻し、やる気が芽生えれば、数字は自然とついていきます。

実際、リニューアル商品のテスト版が出来上がり、既存の主要顧客に使ってみてもらったところ評価も上々。

「これなら欲しい」と無償テストのはずが、受注に結びついたケースが早速数件も現れたそうです。

 

商品を売る ーーー という行動に対して士気があがる営業マンは、成熟社会では息をひそめるのが自然の摂理です。

しかし、顧客から評価される ーーー という状態に対して、士気の上がらない営業マンはいません。

 

営業の本質は商品を売るのではなく、価値を売る事です。

価値を伝えるロジックさえ営業マンが理解し、それを熱く語ることができれば…
売上は必ず上がっていきます。

売り急いでも、なかなか成果はあがりません。
まずは、営業マンが「売りたくなる心理」をつくることが大切です。

御社も、成果を出そうと売り急いでいませんか?