
「これまでの経営計画は“絵に描いた餅”でした。社員との対話も不十分で、計画と現場のギャップを埋める発想がなかったことが、未達の原因だったのですね…。」
同じ過ちを犯す企業が減りますように…と、コンサルティングでの気づきを本コラムで公開することを許可してくれた社長さんがいらっしゃいます。
具体的な企業名や商品は公開できませんが、たとえ話を引用しながら、実際に起きていたこと、そして改善策のポイントを本コラムで共有したいと思います。
同社は、ある研修機関で「経営計画書」の作り方を学び、出来上がった「経営計画」を社員だけでなく、取引先や金融機関の前で数年前から発表していたそうです。
しかし、毎年未達で終わるため、もうやめようかと思っていた頭を抱えていました。
そこで藤冨が関与させて頂くことになったのですが、社長と営業部門それぞれにヒアリングをすると、1時間もかからず「あるべきものが欠けている」ことに気づきました。
さらに掘り下げていくと「問題の根っこ」も見えてきたので、いったんヒアリングをやめて、「状況整理」と「問題の定義」をまとめ、社長に報告しました。
その内容を具体的に、お伝えしたいと思います。
最初に「あるべきものが欠けている」と気づいたのは、「計画」を達成するための「戦略」が描けていないことでした。
営業部門は、「日常業務が忙しく、これ以上はできない!」と嘆いていましたが、実際は計画を達成するための道筋を描くことができないだけだったのです。
社長が営業部長「どうすれば達成できるか考えてほしい」と伝えても「頑張っているけど、人が足りないのです…」の一点張り。
ニワトリが先か、タマゴが先か…と社長も打ち手を失っている状態だったのです。
さらに、営業現場のグチを聞いているうちに「問題の根っこ」も明らかになってきました。
自社の商品よりも、値段が安く、かつカユイところに手が届いている競合商品が現れ、既存顧客を侵食されていたのです。
営業部門は、開発部に改良品を出すように!と口酸っぱく言っていたようですが、なかなか具体策が上がってきません。
営業部門は、仕方なく、ゴマすり営業をせざるを得ず「既存顧客を奪われないように必死にご機嫌をとるような訪問活動」に終始していたのです。
もはや、経営計画が達成できないうんぬんの話ではありませんでした。
このままいけば、時間経過とともに企業体力は削られていきます。
だからと言って、営業部門の進言を聞き、競合商品に追随した性能・機能を開発すれば、成果につながるのでしょうか?
答えは、NOです。
競合と同じレースを走り、値段を下げたとしても、消耗戦に陥るだけだからです。
これでは、現状打破はできません。
では、どうすれば良いのか?
もう一度、状況を整理すると…
・競合の出現により「商品力」が奪われていること
・営業は、打開策がないまま、ゴマすり営業しか手立てがなくなっていること
・開発は、現場の声に耳を傾けず、顧客ニーズとのズレが放置されていること
・社長は、「売上が上がらない真の理由」を現場から吸い上げられずにいたこと
・結果として、部門ごとに孤立し、誰も「全体最適」を考えられない組織になっていたこと
このように組織全体が“分断された状態”にあり、誰も「戦略」を立てようとしていなかったことが、最大の原因です。
そもそも、なぜ戦略が必要なのでしょうか?
それは、人が働く動機づけに強く紐づいています。
戦略は、ある目的を達成するために策定するものです。
その目的達成に向けて、自分も参画してみたい。
その目的を達成した景色を見てみたい。
自分の成長にもつながりそう!
そう感じた時に人は能動的、積極的に仕事に立ち向かうからです。
ただ、立ち向かったとしても、その目標を達成できるか否かは、別の話です。
次に大切なのは、戦略ストーリーを明確にすることです。
「売上を伸ばしたい」
「新規事業を立ち上げたい」
「既存事業の立て直しを行いたい」
と悩む企業のお手伝いに入ると、多くは、「どこからどうやって手をつければ良いのか」が見えなくなっているケースが大半です。
ところが、停滞しているプロジェクトや組織であっても、勝ち目の見える明快な戦略ストーリーを描くと、急に熱気が帯びてきます。
「今の業務に忙しい…」とやる気を見せなかった営業部門でさえ、イケるかも!という絵が描けると「ちょっとやってみようかな」という雰囲気になってきます。
そうです。
現場は「動けない」ではなく「動き方を決められない」だけなのです。
自分たちで考えてやってみろ!と思われるかもしれませんが、自ら考え、行動して、撃沈したときの「人事評価ダダ下がりのリスク」を考えると、営業部門が萎縮する気持ちも分からなくもありません。
・人々が動きたくなる「動機づけ」を醸成すること
・勝てる戦略ストーリーを明瞭に描き、勝てるかも!という空気をつくること
この2つの環境整備が、組織が動き出す転換点になるのを、藤冨は幾度となく経験してきました。
しかし、勝てる空気を醸成するだけでは、残念ながら結果に繋がりません。
最後のポイントは、戦場で戦う人たちに強力な武器を提供すること…しかも集中投資を行うことが大切です。
売上目標の達成から業務プロセスを逆算・分解すると「受注」→「商談」→「集客」→「商品企画」4つの業務に分解できます。
乱暴に言ってしまえば、「集客」を成功させ、営業部門に「有効な商談」をトスアップできれば、必然的に売上高は上がります。
「集客」を成功させるには、広告、DM、展示会などなど、投資が必要です。
この投資の精度を高め、さらに投資額を増やすことで、結果として営業成果を高めることにつながるのです。
御社では、経営計画を達成するための営業戦略を、ストーリーとして明快に描き、積極的に集中投資をしていますでしょうか?