
「決まる!と確信をもっていた商談がまさかの失注になるとは…思いもよりませんでした。顧客視点の重要性を今更ながら感じてしまいました」
先日、クライアント企業さんから残念な報告が上がってきました。
決まると思っていた商談が決まらず、他社に取られてしまったとのこと。
しかも、予想をしていなかった相手(間接競合)に商談を奪われ、呆然となってしまったそうです。
詳細は、今後の戦略にも影響するので触れることはできませんが、今日は「想定外の意思決定」が行われた「間接競合」に対して、どのような対策が取れるのかを掘り下げてみたいと思います。
間接競合とは、自社の商品・サービスと直接的には競合していないけど、顧客のニーズを別の代替案で満たしてしまうことを言います。
最近、よく耳にする「オルタナティブ」という概念です。
競争社会が成熟し、売り手が買い手の「満足」に焦点を当て始めると、必然的に「手段の多様化」が進みます。
この手段の多様化が、買い手に対して多様なオルタナティブ(選択肢)を提供しているのです。
例えば、オフィス向けの高性能コーヒーメーカーを売り込んでいた営業現場で、顧客が最終的に選んだのは「オフィスにバリスタを定期派遣するサービス」だった—
これも間接競合です。
顧客は「おいしいコーヒーを社員に提供したい」というニーズを満たせれば、機械である必要はありません。
私たちが、お客様の「実現したい世界観」に目を向けられなければ…予期せぬ代替案(オルタナティブ)に、お客様が奪われてしまうことになる…これがオルタナティブ競争なのです。
これは決して新しい競争社会ではありません。
昔からも存在していました。
ただ、これまでは情報の非対称性や選択肢の少なさゆえに、顧客自身が“他の選択肢”に気づかないことも多かったのです。
しかし今は、ネット検索やSNS、生成AIの普及によって、顧客自身が「他にもっといい方法はないか?」と探し出せるようになっています。
この傾向は、今後ますます進化していきます。
つまり、“オルタナティブ競争”は以前も存在していたけど、今後はさらに加速化・顕在化していくようになるのです。
このような時代においては、「自社の商品がどれだけ優れているか」を語るだけでは不十分です。
顧客が何を求めているのか、どんな価値観で意思決定をしているのか、その“選定軸”そのものを理解し、共鳴しなければ、商談テーブルにすら乗らなくなってしまう危険性があります。
仮に、間接競合が侵食しそうもない「市場」で商売していても、「お客様が置かれた環境」をしっかりと見定め、その上でどのようなニーズが発生しそうか、どんな満足を求めるようになるのかを、顧客の立場に立って思考することが求められる時代になってきています。
優れた商品なのに、業績が思うように振るわないケースを分析すると、例外なく、「顧客の立場にたっていない状態」で商売しているのです。
顧客は「商品を買いたい」のではなく、「自らが享受できるベネフィットがほしい」だけなのです。
・お客様の置かれた状況
・その状況から生じている問題点
・その問題は、お客様にどのような影響を与えているのか…
お客様に寄り添った姿勢に徹した企業が、オルタナティブ競争社会での勝者になることは間違いありません。
そのために、私たちに求められるのは、「ヒアリング力」です。
今回の失注は、まさにそれを教えてくれた出来事でした。
直接競合よりは、圧倒的に優っていたために、商談相手の置かれた状況を深ぼって探っていなかったことが原因です。
もしも、深ぼって状況把握ができていたらオルタナティブの存在が視界に入り、競合排除の対策が打てていたかも知れません。
たらればを言っても仕方ありませんので、この苦い教訓は次に活かさなければなりません。
マーケティング思考の会社が増えれば増えるほど、オルタナティブ競争は激化していきます。
オルタナティブ競争に求められるのは「競合他社との差別化」ではなく、「そもそも顧客が何を実現したいのか」という“上位概念の理解”です。
視座を高める必要があるのです。
顧客が求める世界は、さまざまなオルタナティブ(代替案)によって実現され、今後売り手である私たちの予想のつかないレベルまで進化していく可能性が高まってきています。
余談になりますが、20〜30代の間で「AI」対「リアル異性」という対抗軸が存在しているのをご存じでしょうか。
博報堂DYホールディングスの調査によると、恋人はAIで十分だと考えている人と実際に恋人がいる割合が、ほぼ変わらないところまで来ているとの結果が出たそうす。(共に20〜30%)
リアルな恋人であれば、不仲になったり、裏切られたりするのに対して、AIはそのリスクがないから…というのが理由だそうです。
マイクロソフトが行った研究でも、精神的に寄り添うことに特化したAIに、テストユーザーがあまりにも依存してしまった為に、開発を一時的に停止したというケースもあったそうです。
AI対リアル… これもまさにオルタナティブ競争社会の一端です。
この話を聞いて、50代以降の私たちには違和感のある世界に感じると思います
しかし、デジタルネイティブ世代にとっては、ごく自然に理解できる世界観に映るのではないでしょうか。
世代間ギャップの話だけではなく、テレビや新聞など限られた情報によって感化されてきた画一的な社会から、NetflixやSNSなどを通じて価値観が多様化する社会では、必然的に「買い手の選択肢」が広がっていきます。
商品という「手段」に固執すると、生き残りすら難しくなる世界に突入しています。
お客様は、商品という手段ではなく、ベネフィットという目的を求めているからです。
御社の商品開発部門やマーケティング・営業部門は、オルタナティブ競争を意識した思考で日々の業務にあたっていますでしょうか?