とことん「本質追求」コラム第647話 SFAを有効活用する3大ポイント

「営業支援システム(SFA)を入れているのですが…効果を実感できません。使いこなし方を教えてください」

年末も差し迫り、来年からの計画を立てている企業からのご相談です。
コンサルティング現場でも、よく課題として挙がるSFAの有効活用法です。
押しなべて見ると、効果的な運用をしている企業は少数派であることが明らかです。

それでも、有効活用し、泥臭い中でもシステマチックに営業活動を行っている企業もあります。

SFAは、あくまでも道具です。
道具が良ければ、目的が達成できるとは限りません。
名工が作ったノコギリを使っても、立派な家が建てられないのと同じです。

ノコギリを買う前に、まずどんな家を建てたいのか?
そこでどんな暮らしをしたいのか?
今と未来の家族構成、ライフスタイル、家族との日常の関わり方、そして、友人・知人や近所との交流など、さまざまな前提条件を考慮した上で、家のあり方が決まるはずです。
その答えが、鉄筋コンクリートの重厚な邸宅だったらノコギリは必要ありません。

遠回しな言い方になりましたが、SFAも同じです。

目的からの逆算…つまりゴールである受注(=売上)から、道具(SFA)の必要性と使い方を考える必要があります。

SFAは本当に必要なのか。
利用して本当に使いこなせるのか。
他に代替案はないのか?
などを自社の前提条件を鑑みた上で、結論を出す必要があります。

少数派にはなりますが、SFAを有効活用している企業は、この前提条件を突き詰めて考え抜いています
では、道具としてのSFAを有効活用する上で、どのような視点から前提条件を突き詰めていけば良いのか?

整理してお伝えします。

1つ目は、逆算思考による業務設計
2つ目は、商談マネジメントの有無
3つ目は、部門横断体制の有無です。

一つずつ順を追って解説します。

1. 逆算思考による業務設計

多くの企業では、営業活動が日々の目先のタスクに追われる形で進められています。
しかし、効果的にSFAを活用する企業は、「最終的なゴール」から逆算して業務プロセスを設計しています。
たとえば、「売上目標を達成するためには、何件のリードが必要か」「そのリードを生み出すためには、どのような活動が求められるか」といった形で、具体的なアクションに分解しています。
このプロセスをSFAに反映させることで、ただタスクを管理するツールではなく、戦略を具現化するための道具として機能させることができます。

ところが、このロジックを精査せずに、闇雲に「営業活動の可視化すれば、マネジメントできるだろう…」的な漠然とした理想だけで導入すると失敗してしまいます。

そもそも、売上目標を達成するためには「逆算思考」が必要です。
当たり前のことですが、売上は「商談獲得件数×顧客単価」で決定されます。
顧客単価は、販売商品が決まっていれば、自ずと決定しますので、商談獲得件数を定める必要があります。
ここまでは、多くの企業で実施していることです。

ところが、商談獲得件数をどうやって持ってくるか?
この仮説(前提条件)を突き詰めていないと、マネジメントはできません。

マネジメントは、仮説と実績の差を検証することが基本です。

・ターゲット市場の営業アタックリスト(白地リスト)は、何件あるのか?
・どのように商談を掘り起こすのか?
・対象市場にリーチする広告活動と想定コンバージョンから商談は何件くらい掘り起こせるのか?

このような仮説と実績の差を検証し、営業活動を適宜修正し続けるための道具がSFAです。
逆算思考による業務設計…つまり仮説なきビジネスプロセスでは、SFAを有効活用することはできないということになります。


2. 商談マネジメントの有無

SFAが真に効果を発揮するには、商談の進捗管理が徹底されていることが鍵となります。

SFAを効果的に運用できている企業では、単に商談の件数を追うだけではなく、営業担当者が抱えている商談の確度や課題を具体的に把握し、マネージャーが次なるアクションを明確に指導しています。
例えば、「このステージの商談が停滞しているのは何故か」「次のステップに進むためにはどのようなフォローが必要か」を定期的にチェックし、管理者や担当者と一緒になって改善に取り組んでいます。

また、商談データをSFAに登録するだけで終わらせず、管理者やチーム全体でデータを活用する仕組みが整っているのも特徴です。

一方で、活用方法が明確になっていない残念なケースもあります。
例えば、ある受注実績を分析すると、その業界に共通する問題解決している商材があるのに、横展開がされていない…。
非常に勿体無いことです。


というのも、後々調べてみると、その業界の事業者数は、2万件以上もあったのです。
シェア10%を向こう3年の目標とすれば、2000件が獲得目標となります。
単価100万円の商材なら、20億円の受注が可能です。
業界が抱えた課題が克服できる商材ならば、十分に実現可能な数字です。

SFAを有用活用するならば、このシェア目標を達成するためには、業界が抱えた課題が本当に共通しているのか?という仮説を商談単位で記録し、検証する道具として利用していきます。

こういった戦略的な活動をサポートしてくれるのが、SFAの存在意義であるはずです。

商談単位でマネジメントできる専門的スキルがなければ、SFAを有効活用することはできません。
まして、現場で数字に追われているプレイングマネージャーが、そこまで目を配れるのか…
こうした前提条件の確認が非常に重要
になります。

3. 部門横断体制の有無

営業活動は営業部門だけで完結するものではありません。
マーケティング、カスタマーサポート、製品開発など、他部門との連携が重要です。SFAを有効に活用している企業は、営業部門だけでなく他部門も巻き込んだ「部門横断体制」を整えています。

例えば、マーケティング部門から提供されるリード情報をSFAで共有し、営業と連携する仕組みや、顧客からのフィードバックをサポート部門が共有することで営業活動を最適化するといった事例が挙げられます。

このように、SFAを「全社の情報ハブ」として活用することで、営業プロセス全体の精度とスピードが格段に向上します。

これら3つの視点を見てきたように、SFAの有効活用には、単にツールを導入するだけではなく、「ゴールから逆算した設計」「商談管理の徹底」「部門を超えた連携体制」という経営的な視点が欠かせません。

こうした視点を持つことで、SFAは単なる管理ツールではなく、企業の成長を加速させる「戦略実行ツール」としての役割を果たすようになるからです。

御社は、「営業マネジメントのあるべき姿」を探求し、SFAを「戦略実行ツール」として有効活用されていますか?