とことん「本質追求」コラム第640話  部門横断チームに投入する適材タイプとは?

「部門横断チームをつくる意義はわかります。ただ、実際に機能させるのは困難が伴いますよね。理解はできますが、当社には当てはまらないように思えます」

まだお会いしたことのない読者の方から、こうした感想をいただきました。

たしかに組織によっては「この方法はうちには合わないだろう…」と感じることもあるでしょう。
しかし、その反応自体が組織の特性や課題を浮き彫りにする手がかりとなります。
また、その人の性格特性が影響している可能性もあります。

抽象的な原理や原則を理解し、それを日々の具体的な業務に落とし込むには、向き不向きがあるからです。

もちろん、向いていないからといって卑下する必要はありませんし、向いているからといって尊大になる必要もありません。
1ヶ月ほど前に書いたコラム「第634話 社内マーケティング担当者の適材を見抜く性格分析テストとは」でご紹介した「MBTI」では、4つの評価項目を二分法で性格分析しています。

たとえば、外向的と内向的な性格を二分法で分ける場合、どちらが良いかを判断すべきではないことは、皆様もご存じの通りです。
単に向き不向きがあるだけの話です。

様々な業務の性質がある中で、どのような性格も組織には必要であり、メンバー各人が補完し合うからこそ、組織をつくる意義があるのです。

したがって「意義はわかるけれど、うちには合わないのでは?」といった疑念が湧いた場合、同じ情報をメンバーで共有し、ディスカッションすることで組織的な理解を深めることが大切です。
組織内で活動するうえでは、個人の理解よりも組織の理解を重視すべきだからです。

組織の理解とは、自社の存続や成長に必要な情報共有を意味しています。

自社の存続や成長に必要な情報ですから、個人の判断で切り捨てることは避けなければなりません。
上述の性格分析テスト「MBTI」では、物事の捉え方や判断のクセに関する項目で、感情タイプ(F)が高い方は特に注意が必要です。

Fタイプの高い人は組織の和を重視する方であり、組織の調和を保つうえで必要不可欠な人材です。
しかし、和を重視するあまり、組織にとって耳の痛い話や苦難を伴う案件が目の前に現れると、感情的に排除してしまう傾向があることも知っておきましょう。

たとえば、商品別の粗利計算を厳密にするプロジェクトを立ち上げた際、その目的が「利益が出ない商品の撤退」だと察すると、Fタイプの人は「それよりも人事制度を見直すべきだ!」と問題をすり替え、プロジェクト自体を排除してしまうことがあります(実際に多く見られます)。
これでは、中長期的には企業力の低下を招く原因となりかねません。

一方で、反対の性格タイプである「思考タイプ(T)」の人は、複雑に絡み合う関係性を解きほぐし、論理的に判断するタイプです。
理屈っぽく判断するため「冷たい人」や「血も涙もない」と酷評されることもありますが、Tタイプの人のフィルターを通すことで、偏りのない判断ができるのです。
上述の例でいえば、「収益性の高い商品群で勝負すれば給与の上昇が見込める!どれだけの痛みが生じるのか、可能性がどの程度開けるのか分析してみよう!」と、困難な課題にも果敢に取り組むでしょう。

理想的には、思考のTタイプが企画を立て、感情のFタイプが組織に共有していく二人三脚ができるとベストです。

また、もうひとつ抑えておきたい性格傾向として、情報収集や思考のクセの項目があります。
この項目は「感覚タイプ(S)」と「直感タイプ(N)」に分かれます。

Sタイプの人は具体的な現実や事実に目を向け、営業部門で活躍するタイプです。
売上目標に対して、どの顧客にどの商品を売ればよいかという業務を得意としています。

一方、Nタイプの人は抽象的な概念を好み、物事の関連性を見出すことに向いています。

Sタイプの人は顧客が商品を求める理由を概念的に考えるのが苦手で、横展開営業にはあまり向いていない傾向があります。
しかし、具体的な提案/書が完成すれば「なるほど!」と動き出してくれるため、企画会議に参加してもらう意義は十分にあるのです。

各性格要素に触れましたが、部門横断チームには必ず「分析家」を入れて、企画の主要ポジションを担ってもらうとチームが効果的に動き始めます。

分析家には4タイプがあります。
INTJ(建築家)
INTP(論理学者)
ENTJ(指揮者)
ENTP(討論者)が該当します。
この4タイプの共通点は、抽象概念を好み、物事の本質を見通す「N(直感タイプ)」と、論理的に判断する「T(思考タイプ)」です。

部門横断チームを効果的に機能させるには、適材者である「分析家」を投入して的確な企画を打ち立て、現実に目を向けるSの感覚+組織の和を重視するFタイプを相反するメンバーを共存させることが効果的であることが、実証実験的に明らかになってきました。

せっかく組織が存在するのであれば、それを効果的に運営する方が得策です。

部門横断チームを取り入れる意義は、環境変化が激しい企業であれば、どの企業にも当てはまるはずです。
ぜひ、御社でも部門横断チームがどのように適応できるか試してみてはいかがでしょうか。