とことん「本質追求」コラム第639話  顧客を科学する組織をつくる5つのステップ

「営業部門だけに売上責任があるのは、確かによく考えるとおかしいですね。もう少し詳しく聞きたいです」

先週のコラム「第638話 売れないのは営業だけの責任なのか?」をお読みいただいた読者さんから、「もう少し説明してほしい」とのご依頼をいただきました。

ご質問などのフィードバックはとても励みになります。
この場を借りて、感謝申し上げます。

ご要望にお応えして、今日は具体的にどのようなステップを踏むことで、組織全体が連携し、成果を最大化できるのかをお伝えします。

まず、部門間でシナジーを生み出すために欠かせないのは、各メンバーが「顧客視点」を持つことです。日常業務に追われると、部門や個人の目標達成に集中しがちですが、内向きではなく外向き、つまり顧客の理解に努め、市場の動向に目を向けて仕事をすることで、初めて部門間のシナジーが生まれます。

具体的にシナジーを創出するための5つのステップをお示ししながら、解説していきます。一つひとつ順を追って見ていきましょう。

1. 部門横断チームの創設

最初のステップは、部門の壁を越えたチームを作ることです。営業部門、開発・生産部門、販促部門といった異なる部門のメンバーが集まり、共通の課題に取り組む場を設けます。
これにより、情報やノウハウが部門を超えて共有され、自然とシナジーが発生します。

拙著「部門横断チームで稼ぐ組織を育成する」をお読み頂けば嬉しいのですが、概要がサクッと5分で理解できる無料レポートも公開していますので、最後にお知らせいたします。

2. 共通目標の設定

次に大切なのは、全員が共有できる目標を設定することです。
部門ごとの目標はもちろん重要ですが、組織全体が向かうべき方向性を一つにすることで、メンバー間の意識が揃い、協力体制が整いやすくなります。
この共通目標は、顧客満足度や売上増加など、組織全体にとって意味のあるものでなければなりません。具体的には、顧客が抱える問題や現状の不満を我々の製品・サービスでどのように解決するか、という目標です。
その結果が顧客満足につながるので、プロセスにおける目標を明確に定める必要があります。

営業、開発、販促部門が同じ視点で顧客を捉えることで、この目標を達成できるようになります。
そのためには、メンバーが共通言語で意思疎通を図ることが大切です。

3. 共通言語の確立

異なる部門が連携する際、最も大きな課題となるのは「共通言語」の欠如です。
例えば、営業部門と開発・生産部門では、同じことを話しているつもりでも、用語や解釈が異なることがあります。そこで、部門間で共通の「言語」を確立し、顧客情報やプロジェクトの進捗について、統一された理解を持つようにします。

日本アイ・オー・シーでは、この共通言語を『商品コンセプト』と『コンセプトピラミッド』という概念で捉えています。
成功するプロジェクトは、この商品コンセプトを定義しただけで、売れる匂いがしてきます。
営業、開発、販促のメンバーがウズウズしだす瞬間です。部門間のシナジーを醸成する上で、共通言語は強力な力を発揮します。

顧客の目線を部門間で正しく・ズレなく共有することで、的確な商品が開発され、的確なプロモーションが実行でき、的確な営業活動が推進されるのです。

4. 共通KPIの設定

目標が設定されたら、その進捗を測る共通のKPI(重要業績評価指標)を設けることが大切です。
前回のコラムで、販促部門は『商談決定率』、開発・生産部門は『新商品売上高比率』でKPIを設定することをオススメしました。

商談決定率は、アポの目的理解、商談相手の的確性、課題の顕在化などに要素分解できます。商談報告は、この要素分解した項目ごとに商談を評価し、部門間で共有することが大切です。

新商品売上高比率も同様に、ターゲット、ベネフィット、利用場面、競合との差別的優位性を明確化することで、新商品の成功確度を測ることができます。

組織全体で追いかける目標に対して、営業部門だけでなく、開発や生産部門も同じ基準で評価されることで、部門間の協力が促進されます。
KPIが共通であることにより、全員が同じゴールに向かって動く体制が整うのです。

5. PDCAナレッジの確立

最後のステップは、PDCAサイクルを通じて知識を蓄積し、改善を重ねていく仕組みを作ることです。
チーム全体で進捗を確認し、何がうまくいっているか、どこに改善の余地があるかを共有します。
粗探しをするのではありません。
顧客を科学するのです。
顧客を科学することで、組織的に顧客理解を深めていきます。

顧客を理解した上で、改善すべき課題が出た際には、メンバー間で「無理・無駄、前例がない」といったアイデアを潰す言葉を使わないことが重要です。

日本の外食産業で長年売上高NO.1を誇っていた日本マクドナルドでは、上記3つのネガティブワードを言わないことを徹底し、「アイデアキラーの撲滅」していたそうです。
改善目標に焦点を絞り、どうすればできるのかをメンバー間で共有することで、「考える組織」が育つことを理解していたからでしょう。

以上、5つのステップで組織の環境を整え、制度を作っていくのですが、評価制度や賃金など、メンバーの処遇に関する透明性を確保し、全員が公平に評価される体制を作ることも同時に進める必要があります。
このような公正な仕組みがあれば、メンバーは安心してシナジー創出に向けた行動を取ることができます。

経営者や幹部の仕事は、この環境を整えることに尽きます。

部門間での連携が深まり、シナジーが発揮されると、組織全体の売上や顧客満足度が向上します。
顧客のニーズに迅速に対応できることでリピート顧客が増え、新規顧客も獲得しやすくなります。

また、部門ごとの連携がスムーズになることで、無駄な業務が削減され、生産性も向上します。
結果として、組織全体の成長が加速するのです。

変化の激しい現代において、組織全体でシナジーを生み出すことは、成長に欠かせない重要な要素です。
5つのステップを意識し、部門を超えた協力体制を整えることで、シナジーは確実に実現できます。
そして、顧客視点を持つことで、組織全体が一丸となり、持続的な成長を達成することが可能になります。

御社では、顧客視点を組織一丸となって共有する仕組みを整えていますか?


追伸
拙著『部門横断チームで稼ぐ組織を育成する』の無料レポートをまだご覧になっていない方は、この機会にぜひご覧ください。
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