とことん「本質追求」コラム第638話 売れないのは営業だけの責任なのか?

『組織的に営業で成果を生み出す仕組みを構築したいので、お手伝い頂けませんか?』

昨年11月16日に『部門横断チームで稼ぐ組織を育成する』を発売してから、冒頭の課題を抱える企業からお声掛けを頂き、複数社お手伝いをしています。

お手伝いしている企業は、いずれも技術力・商品力が社会から広く認められている優良企業ばかり。
組織の体制も仕組みづくりも、確立されており、社会的な評価も受けている中堅企業です。

一見、なんの問題もなさそうな企業ばかりですが…
同時並行で複数社のコンサルティングを進める中で、ある「問題」が頭をもたげ始めました。

「営業部門が機能していない」

いえ、この説明だけだと誤解を与えてしまいそうです。

「営業部門だけでは、売上をあげることができない時代になった」

こちらの方が、正確に現実を映し出しているかも知れません。

真意をお伝えし、同じような「時代の犠牲者」になっている企業さんにも気づきと課題解決アプローチをお示ししたいと思います。

時代の犠牲者とは、顧客の変化に気づかず「組織の役割、責任範囲」が、旧世代のまま更新されていない企業のことを、本文では指しています。

わかりやすく解説していきたいと思います。
以下の図をご覧ください。

インターネットが普及する以前の営業環境です。
ネットが普及する前は、見込客の発掘から受注まで、営業部門が全てを一貫して取り組んでいました。





それでは、ネット普及後のプロセスをご覧ください。
二つの部門別に跨って受注活動を行っています。



大多数の企業は、この販促部門に売上責任を持たせていません。
そのため、見込みの薄い商談が量産され、営業部隊が疲弊してしまっています。

なぜ今になって、このような問題が浮上したのでしょうか?

時代を考察し、顧客視点から問題を眺める必要があります。

まず、営業部門による「商談の発掘」が困難になったことが挙げられます。

ネット普及と同時期に、個人情報保護の観点からBtoBのセールスでは、担当者への直接的接触ができなくなりました。
飛び込み営業に寛容だった時代から、厳格に禁止する企業が増え、テレアポをしても「問い合わせフォームから送って!」と横並びの常套文句が返ってくるだけの世界観になりました。

営業部門による「商談の発掘」が困難になれば、他の作戦を実行するしかありません。
WEB戦略、DM、広告、SNSの活用など、さまざまな手法を駆使して、商談の発掘を行います。

本来、営業部門がこれらの責任を担えば良いのですが、デザイン力やコピーライティング力が要求されるので、営業部門はサジを投げ出してしまうケースが大半。

結果、デザインやコピー力に長けてはいるけど、営業経験のない担当者が、最も難しい「商談の発掘」という仕事を担うことになります。

販促部門の目標は、営業へのトスアップ数になります。

最初は、質を求めてクリエイティブする人が多いのですが、組織からは「数」を目標にされてしまいます

結果は、ご察しの通りです。
見込みの薄い商談でもかき集めるようになります。


このような問題は、販促部門ばかりではありません。
製造部門も見てみましょう。

ネット普及前は、顧客側の知識が脆弱でした。

営業マンの知識が商談成立の重要なファクターとなっていた時代です。

しかし、ネット普及後は、顧客側の知識がリッチになりました。
言い方は悪いのですが、情弱(情報弱者)の商談相手には「営業マンの説得」だけでモノが売れていた時代だったのです。
顧客の知識がリッチになった時代では、他社では買えない魅力ある製品がなければ、見込客集客の難易度が高くなる時代になったです。


時代が変わったのです。
顧客の知識レベルが劇的に向上してしまったのです。

成果があがっていた時代と同じやり方をしていれば、当然のごとく成果はでなくなります。
今の時代にあったマインドと新しい取り組み方が必要な時代に移り変わったことに、そろそろ真剣に向き合う必要が出てきてしまったのです。

販促部門は、営業部門が成果を出しやすいトスアップ(決まりやすい商談)を上げる責任があります。
これは、商談決定率で測ることができます。

商談決定率は、もちろん営業の能力も影響していきます。
しかし、営業を全く変えずに、販促部門のクリエイティブを強化したら、商談決定率があがれば、販促部門のクリエイティブに問題があったと結論づけることができます。

また、開発•生産部門は、売りやすい商品を創案していく責任を持ちます。
・顧客の痛点を突く、新しい商品。
・満たされない顧客に最大の満足を提供する商品。
このような競争力のある商品が開発できれば、営業マンさえ不要かも知れません。

この開発力の有無は、新商品売上高比率で計測することができます。

新商品売上高比率は、業界やポジションによっても捉え方が変わりますが、一般的には、過去3年間に上市した新商品が、売上高の30%を占めていれば「持続的成長」が可能だと言われています。

企業が成長し続ける上で、見逃してはならないKPIです。

すべての部門が、顧客に対して姿勢を正して向き合っているのか?

売上責任は、本来「営業部門」だけに偏るのではなく、全部門が責任を負うべきなのです。
時代が大きく変わった今、組織はそれを「見える化」「仕組み化」する必要がでてきました。

✔︎ 部門間の共通言語をつくり、部門が一体なって顧客に向き合う仕組み。
✔︎ 各部門が顧客と向き合うプロセスを重視したKPIの設定など見える化。

AI時代の本格到来が予想され、さらなる変化が起きているなか、総点検すべき時期に来ているのではないでしょうか?

御社では、既に全部門が顧客に向き合う仕組みと見える化を整備していますでしょうか?