とことん「本質追求」コラム第637話 マーケティングを学ぶな!

「スキルを知っていても、中身が伴っていなければ、成果は出せませんね。中身を磨くように頑張ります」

先週のコラム「第636話 業績を伸ばすプレゼン・スキルの習得法」の感想メールを複数いただきました。

プレゼンには「話し方」や「美しいスライドの作り方」などの手法やスキルを学ぶことも大事ですが、手段だけでは、目的を達成できません。
目的にフォーカスした「スキルの習得」に着眼する必要があります。


例えば、次のような目的を持つ場合を考えてみましょう。

  • 問い合わせを増やしたい
  • 契約を勝ち取りたい
  • ロイヤリティを高めて継続購入を促したい

このように、聴衆に何かしらの行動を期待するプレゼンをしたいのであれば、まずは聴衆のことを知らなければなりません。

これは、セールスやマーケティングなどで利用されている「すべてのスキルや手法」にも当てはまります。

「SWOT分析を用いてマーケティング戦略を確立したい」
「コンテンツマーケティングを活用したインサイドセールスを確立したい」
「ペルソナを設定して広告をつくりたい」

など、世の中にはさまざまな「手法やスキル」が溢れています。

どれも「中身」が伴えば成果につながりますが、残念ながら成果につながっていないケースが大半です。

なぜなら、プレゼンなら聴衆、マーケティングなら想定顧客を深く理解するプロセスが欠けているからです。

釣りを題材して、理解を深めてみましょう。

釣りをするためには、「竿」と「テグス(糸)」と「エサ」が必要です。
そして、コツ、コツと当たりが来たら注意を払い、グッと引き込んだら、一気に竿をしならせながら力強く引き上げる。

これは、釣りの未経験者や初心者でも知っている知識です。
熟練者との知識差はほとんどないでしょう。

しかし、初心者と熟練者では「釣果」に歴然とした差が生まれます。

初心者と熟練者との「釣果」の差は、どこにあるのでしょうか?

とことん本質追求コラムの読者さんなら、もうお分かりだと思います。
熟練者は、「魚の行動習性」や「魚の置かれた環境」を熟知いて、初心者は、その理解が足りないから釣果に差が出てしまうのです。

魚と一口にいっても、川の魚と海の魚では行動習性が全く異なります。
同じ海の魚でも、イワシとマグロとでは行動習性がまったく異なります。

イワシを釣る達人が、マグロを釣れるかと言ったら、決してそうとは限りません。
釣りの経験値が深くても「狙う魚の理解」が足りなければ、釣果にはつながらないのです。

これは、セールスやマーケティングの世界でも同じです。

例えば、BtoCマーケティングの天才と呼ばれる人が、工業系の企業のマーケティングで成果を出せるかと言ったら、決してそうではありません。

さらに言えば、専門分野が少し異なるだけで、途端に成果を出せなくなる人もいます。

例えば、ファッション業界で著名な成果を挙げた人は、ファッションに興味のある人の気持ちや行動習性は理解できていても、レジャーに行く人たちの気持ちや行動特性を理解できるかというと、決してそうではなかったりするものなのです。

ファッション業界で成果を上げた著名なマーケッターが、レジャー産業の仕事を引き受けても、まったく歯が立たなかったケースなどの類似例は、死屍累々と転がっています。

商売は、顧客となり得る人(会社)のすべてを理解することで、成果を引き寄せることができるのです。

知識ではなく、顧客との対話の経験が必要なのです。

藤冨がクライアント企業の顧客や想定見込客と直接面談して対話することを重視している理由はここにあります。

イワシという生物の知識を得たいのではなく、イワシの行動習性を知りたいのです。

手法は二の次です。
イワシの行動習性を理解したあとに、どうやって釣るかという手法を考えればいいのです。

行動習性を理解するためには、対象者のファクトを捉える必要があります。

  • 想定顧客の現状
  • 想定顧客のの置かれた環境
  • 問題
  • 課題認識
  • 課題を解消するための現状の工夫

など、さまざまなファクトをテーブルに並べて、「我々なら、想定顧客にこのような貢献ができる!」というソリューションテーマの仮説を導き出すのです。

その仮説を小規模な広告展開やセールスを通じて検証します。

成果がでなければ、またファクトを見直し、行動習性を深掘りし、仮説をつくって実践していくのです。この顧客や市場との対話の繰り返しの経験値があって初めて、手法やスキルが生きてくるのです。

手法やスキルを学ぶ、優先順位を下げてください。
まず先、顧客を学ぶのです。

顧客を学んだら、その後で適切な手法やスキルを使えばよいのです。

仕事で成果を出すためには、知識ではなく、体得することが大切です。
体得するには、訓練と鍛錬が必要です。

御社では、顧客を学ぶための訓練や鍛錬を実施する「場づくり」を意識的につくりあげていますでしょうか?