とことん「本質追求」コラム第636話 業績を伸ばすプレゼン・スキルの習得法

「営業マン500人の商社と無事契約できました!」

先日、東京都中小企業振興公社で実施された『営業力強化研修』内でのオープンコンサルティングに参加した参加者から、研修翌日に嬉しい報告メールが届きました。

「明日とても重要なプレゼンテーションがあります。今日中にまとめたいのでアドバイス下さい」と、24名の参加者の中でも、一際真剣に取り組まれていたベンチャー経営者のTさんからでした。

手前味噌ですが、Tさんは、とても良い選択をしたと思います。
最適なタイミングで、最適な選択をしたからです。

というのも、プレゼンと一言で言っても、学ぶべきテクニックはいくつかあります。
身につけるテクニックを間違えてしまえば、当然ながら結果はでません。
Tさんは、翌日重要なプレゼンを控え、しかもその商談をまとめるためのプレゼンを習得しにきていたので、まさにドンピシャなタイミングで、最適な選択をされていたのです。

プレゼンには大きくわけて、3つの切り口でタイプ分けされたテクニックがあります。

タイプ1は、マナー&話し方系です。
講師は、アナウンサーやCAの出身者が多いのが特徴で、話し手の好感度を上げることを教えるプロとして位置付けられています。
スピーチや社内プレゼンと上達を目的とする場合は、このタイプの講師から指導を仰ぐことは有効です。
しかしながら、セールスでの結果を出すことを目的としたプレゼンの場合、話し手の好感度と成約率に相関関係はほぼありません。
そもそもTさんの話し方は非常に優秀です。結果を出したいのに、好感度をあげるだけのタイプ1のセミナーに間違ってきてしまったら、絶望をしていたことは火をみるより明らかです。

タイプ2は、デザイナー系です。
美しく分かりやすいスライドの作り方が学べるので、見た目のセンスを問われる業種の方は、一度は学ぶべきテーマだと思います。
しかし、商談をまとめることと、綺麗なスライドにも相関関係はありません。
この手のセミナーに来てしまっていたら、同じように絶望していたはずです。

タイプ3は、セールス系です。
受注や契約の合意、または見込客の教育を目的にしたプレゼンテクニックを習得したい方には、このセールス系のプレゼン技術を学ぶ必要があります。

『御社と取引したいです』
そう思ってもらうためには、セールスのノウハウが切ってもきれないからです。

しかしながら、セールスといっても、営業の経験しかしていない生粋のセールス出身者のプレゼンテクニックだけでは、大勢の対象者を巻き込むことは困難です。

セールスの感性に加え、マーケティングの感性も必要となります。

セールスは、特定の相手との折衝技術が成約のキーファクターとなります。
一方、マーケティングは、お客様たちの最大公約数を導き出し、市場と対話する技術が、キーファクターになります。

また、セールスは1対1の会話形式ですが、プレゼンは1対n の一方通行になります。

従ってセールスは、個別具体的な折衝技術が必要となり、プレゼンは集団との対話力の技能を身につける必要があるのです。

この概念を咀嚼すると、セールスは顧客との対話力、マーケティングは市場との対話力が求められていることがわかります。

では、市場との対話力につながるセールスプレゼン・スキルをあげるためには、どのようなポイントを抑えれば良いのでしょうか?

大きく捉えて3つのポイントがあります。

1つ目は、痛点または欲望の仮説設定力を磨くことです。

営業は、商談相手との対話の中から痛点や欲望を引き出していきます。
しかし、プレゼンではそれが出来ません。
想定客を束ねた『顧客層』に共通する痛点や欲望を知る必要があるのです。

2つ目は、痛点や欲望の「コンテキスト(文脈)」の掌握です。
なぜ、そのような不満(痛点)が生まれているのか。
今は、どのような対策をしているのか。
どの程度の痛みの強さなのだろうか…
こういった文脈からお客様の実態をかき集めて、共通項を見出していくのです。

3つ目は、対象者に響く言葉づくりです。
営業であれば、対話の中で響く言葉を探ることができますが、プレゼンは一発勝負です。
対象者共通の痛点または欲望のコンテキストに寄り添い、それに対応する商品・サービスを用意していることを伝えることで、聴取の心を動かすのが、セールスを目的とした特有のプレゼン・スキルです。

冒頭のベンチャー経営者から許可を頂いたので、具体的な事例をお示し致します。

同社は、ADL評価をピクトグラムで実施するアプリを開発していました。
ADL評価とは、日常生活において、本人が実際にしている日常生活動作をはかる方法で、介護施設などが入所者の自立度を評価するために使用されています。

1年に2回、国に報告書を提出すると介護報酬が施設に授与されます。

しかし、介護施設は他産業と同等、いえそれ以上に人材が逼迫しています。
未経験者に頼らざる得ない状況が多く、外国人労働者も増加傾向にあります。

介護報酬を受け取るためのADL評価をしたくても、日本語かつ専門用語で書かれた評価シートを作成するのは、多くの現場で負担を強いています。

この顧客ファクトを整理して、プレゼンのポイントに置き換えてみましょう。

痛点は、介護報酬を受け取ることができないことです。

痛点の背景となるコンテキストは、未経験者、外国人労働者の増加です。

これに対応した解決商品(アプリ)を、対象者に響かせる言葉づくりが必要です。

ベンチャー経営者と一緒に紡ぎ出した掴みを紹介しましょう。

「私たちは、人種、経験を問わず、誰でも簡単にADL評価ができるシステムの開発に成功しました。
一人当たり30分かかっていたレポート作成時間が、たったの3分で作成出来ます。
結論となる仕組みについてご紹介します。
世界共通の非言語コミュニケーション『ピクトグラム』による入力インターフェースの開発によって、ADL評価の簡易性を実現させました。
それでは、早速システムの概要からご紹介させてください」

とプレゼンの冒頭で聴衆の心を掴みにいったのです。

結果は、冒頭の通り大成功!
来年正式に上市するアプリの先行予約(契約)を勝ち取ることができたそうです!

Amazonでプレゼンの本を検索すると1万冊以上の書籍が出版されていることがわかります。
ところが、セールス&マーケティングのスキルを下敷きにした書籍は、見たことがありません。
1万冊すべてに目を通したわけではないので、断言は出来ませんが、あっても極少数だと思います。

このセールスプレゼン・スキルは、プレゼンの場だけでなく、チラシや提案書、ホームページやランディングページでも威力を発揮します。

なぜなら、マーケティング思考で積み上げている顧客の心を鷲掴みにするテクニックを用いているためです。

御社は、営業の生産性を際限なく引き上げる「プレゼンスキル」「マーケティングスキル」を身につけていますか?

追伸
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