とことん「本質追求」コラム第630話 社員教育は、ビジョンと訓練を公式に組み込む

「自ら考え、行動する社員を育成するのは、現実的には難しいですよね。教育しても根本的解決になりませんし、仕組みを導入しても、目に見える結果に繋がらない…。どのようにすれば良いのでしょうか」

クライアント企業の社長さんと四方山話の延長線上で出た話題です。
これは非常に悩ましい問題です。

これまで幾度も「とことん本質追求コラム」では取り上げているテーマですが、改めて原点に立ち返って、そもそも論で考えてみたいと思います。


なぜ、教育では人は変わらないのか?
なぜ、仕組みを導入しても結果につながらないのか?


難しい問題を、シンプルに。
シンプルなものを深掘りして考えてみたいと思います。


まず、教育です。
これまでたくさんの経営者や管理職から「社員教育の限界」を見聞きしてきました。

なぜ多くの社員教育は「無駄骨」に終わるのか?
根本的な問題は、社員が学びたいと思っていないからです。

では、なぜ学びたいと思っていないのでしょうか?
深く考えるまでもなく、学びの先に見える未来に希望を抱いていないからではないでしょうか。

未来が不鮮明な場合もあるでしょう。
もしかしたら、会社が示す未来像に共感できていない…それどころか反発しているかも知れません。

成長した自分の未来に希望を持つ事が出来なければ、人は継続的な努力をすることはありません。


そもそも、たった1回の教育では、人は変わることは出来ません。
筋肉を増強するトレーニング方法や食事法を知っていても、何も変わらないのと一緒です。
肉体を変化させるには、正しい知識と共に継続的な筋トレが必要です。
継続的な「努力」によってのみ、人は成長するのは、周知の事実です。

この努力を組織的に行うのが「訓練」です。

ただし、訓練も形式的に行うだけでは効果がありません。
前述した通り、訓練した先の未来に、希望を抱けるようなビジョンが見えることが大事なのです。

学びを受ける個人個人が、心から「そうなりたい!」というビジョンです。

力強く成長している組織は、この「そうなりたい!という共感」が求心力となって成長しています。
つまり、個人が成し遂げたい夢や希望と、会社が示す夢や希望が一致するよう制度設計を行っているのです。

今年度は、君たちの部署で10億達成しなさい!という目標では、今の人達の夢や希望と一致できません。
それができたのは、戦後の貧しさから脱却するために必死になっていた昭和世代の人だけです。

今の人達は、「自分たちの利益だけでなく、お客さんに喜んでもらえる環境に優しい製品を届けよう!」とか、「誰も気づいていない不合理を見つけて、改善策を講じ、皆んなをあっと驚かせよう!」など、使命感やワクワク感のある夢や希望を求めています。

夢や希望に向かって生きるためには、必要な実力を必然的に身につけようとします。
専門的には「内発的動機づけ」と呼んでいますが、この内発的動機づけこそが成長の出発点になります。

教育=成長という公式が通じる時代は、終わりました。
ビジョン×教育×訓練=成長という公式の時代です。

ちなみに「訓練」の重要性は、AIの世界でも良く言われているテーマです。
研究者や技術者は、データを食わせる…という表現をよく使いますが、驚くべき研究が進んでいます。

バーチャル空間でAIを訓練させ、2万回も世代交代させた「叡智」を物理的なロボットにインストールする技術(異世界転生)です。

解剖学者の養老孟司さんも、昆虫の世界における「進化」は、世代交代にあることを結論づけています。

「変わる」ということは、変化を察知し、適応するために何が必要なのか?という「学習」を経て、目的を達成しようとするわけです。

「変わり続ける環境↔︎適応策」の繰り返しが、進化の本質です。

千葉工業大学では、4096台もの仮想ロボットを同時に訓練させ、さらに2万回も世代交代させる「進化」をたった5時間で実現させる技術を発明していました。

しかも、知能ではなく、運動神経を学習させているというのですから、驚きです。

YouTubeで見ることができるので、後ほど紹介しますが、ここでの重要な気づきは「進化」の本質から学ぶという姿勢です。

たった1回の教育では、「知っている」という状態を作り出すのが関の山です。
「知っている」を「できる」にするためには、訓練しかありません。

様々な状況があることを学習し、その対応策を試行錯誤させ、あらゆる状況下でも適切な思考・行動ができるようにする訓練です。

これは、営業やマーケティング活動でも一緒です。

営業の環境は、大きく変化してきました。
藤冨が、営業の世界に初めて入った30年前までは、営業が見込客を発掘するのがアタリマエの世界でした。
もちろん、展示会等で商談をリードすることもありましたが、あくまでも補完的存在でした。

テレアポや飛び込みで商談を作ってこそ営業マンだ!
まさに、昭和の営業スタイルです。

今の時代、9割以上の会社ではこのスタイルでは事業活動を続けることは不可能になってきました。

テレアポをしても「ホームページのお問い合わせから要件を入れてください」と言われ、飛び込みも「受付ブロック」されるケースが大半です。

一方、ホームページからの問い合わせによって「商談」をリードする世界が主流になりつつあります。

いわゆるWEBマーケティングの世界です。
この世界も「検索エンジン」対策だけの世界から、「SNSマーケティング」が台頭し、いまAI対策の時代にシフトし始めようとしています。

WEBマーケティングも激しく変化しているのです。

しかし、購買行動の本質は不変です。
特に、BtoB業界における購買行動の本質は、未来永劫変わることはありません。

この原点をしっかりと押さえ「変わりゆく環境」に「適応する術」を訓練することが、いま最も重要なテーマだと、痛感しています。

もちろん、なぜ変わる必要があるのか?と疑問を抱く人たちには、ビジョンで答えることが前提にあっての「訓練」です。

長くなってしまったので、仕組みについての解説は、来週のコラムでお示ししたいと思います。

最後に、千葉工業大学で行っている運動神経を訓練する最先端のAI技術を紹介しているYouTubeをお知らせします。
タイトル通り、AIやAIロボットが本当に人間の仕事を奪う段階に近づいているように感じます。

脅威の真実を、ご覧ください。

【ホリエモン】※2025年、みんな消えていくかもしれません。