とことん「本質追求」コラム第627話 顧客ファクトの掌握は、組織営業力の土台となる

『なぜ、顧客ファクトにそこまでこだわるのか…ようやく理解できました』

クライアント企業のマーケティング担当の方から嬉しいコメントを頂きました。

顧客ファクトとは、顧客の置かれた状況、問題、その問題が何を示唆しているのか…といった事実情報になります。

売上を向上させる戦略を考える際、このファクト情報から全てを逆算することが、営業の生産性を高める重要な要素となります。

営業の生産性を向上させるには、2つの壁を意識する必要があります。

第一の壁は、濃い見込客の集客です。
第二の壁は、商談推進力の向上です。

よく営業の生産性を高めるために、営業マンの活動を効率化することに固執してしまっているケースがあります。

「訪問件数・商談件数を増やせ!」
「営業活動の見せる化をしろ!」
など、活動量を増やせば、受注が増えると思い込んでしまうのは、その典型例です。

こういった活動を新しく導入する企業を観察すると、9割以上が「頓挫」してしまっています。

その原因は極めてシンプルです。
営業スタッフが、消耗してしまうからです。

営業活動を増やしても、それを管理しようと「活動の見える化」しても、負け戦が続けば営業マンのモチベーションは日に日に低下するだけです。

報告は形式的になり、訪問・商談件数が増えても、マネージャーも手応えを感じず、何をどうマネジメントすれば良くなるか、わからなくなり頭を抱えてしまいます。
現場は、二枚舌報告をしているのか?と疑い始めると事態はさらに悪化します。
「それなら、自分が売ってみろ!」と、反抗的な気持ちが芽生えてきてしまいます。

訪問件数や商談件数を増やすのは、大事です。
営業活動の見える化も大事です。
でも、成果につながらない…その原因を一言で言うならば、「手段の目的化」しているためです。

・訪問件数を増やす目的は何でしょうか?
・商談件数を増やす目的は何でしょうか?
・営業活動の見える化をする目的は何でしょうか?

目的意識が希薄な状態で、いくら手段を実行しても、成果につながるはずがありません。

訪問活動を増やす目的は、提案したい商品を認知してもらい、興味を持ってもらうためのはずです

商談件数を増やす目的は、商談相手と、相手先の課題や問題を共有し、提案商品で解決できることの合意を取り付けるためのはずです。

営業活動を見える化する目的は、営業現場の課題を発見して、活動を修正をしていくマネジメントを適宜適切なタイミングで助言するためのはずです。

さて、ここで問題です。
提案商品は、誰にとって何の役に立つ商品なのか? 
この解像度が低いまま訪問件数を増やして、興味関心を持ってくれる確率は高まるのでしょうか?
答えは、誰がどう考えても「NO」のはずです。

商談件数も同じことです。
営業活動を見える化しても、営業マネージャーや経営層が、営業現場に対して適宜適切なタイミングで「具体的な助言」ができなければ、単なる監視ツールに成り下がってしまいます。

これでは、現場から反発や事なかれ主義を誘うだけになってしまうだけです。
これを回避する対策が、「顧客ファクト」に詰まっているのです。

顧客ファクトの明確化することは、セールスアプローチする「対象顧客層」と「採用メリット」の解像度を高めることに繋がります。

抽象的なメッセージよりも、具体的なメッセージの方が、対象顧客には「響く」ので、濃い見込客の発掘が可能になります。

例えば、「健康に良いサプリ」とPRするより、「睡眠効率を高めて、身体の回復力を向上させるサプリ」の方が具体性が高まります。

さらに、40〜50代で飲酒習慣があり睡眠効率の悪い人が50%近くもいる、というファクトを掴んでいたら…

「アルコールの解毒性を促進し、深い睡眠へと誘導するサプリ」と、アプローチした方が、対象顧客から強い興味関心を誘うことが可能になります。

つまり、ムダな訪問が減り、効率的な商談が促されるわけです。

対象顧客と採用メリットが明確になっていれば、営業活動の見える化をする意義も見えてきます。
・対象顧客にリーチしているか?
・顧客の問題認識を引き出せているか?
・問題を解消したいというニーズを引き出せているか?
・解決する経済メリットを共有できているか?

など、あるべき商談の進め方と現状のギャップを把握することができるようになります

顧客ファクトを明確にすることは、濃い見込客を集客し、かつ効率的に商談を進める「土台」となるのです。

・広告やDM、展示会などで、誰に対して情報を発信すべきか?
・どのように、興味・関心を惹きつけ、見込客を発掘するか?
・営業は、商談相手から、どのような事実情報を引き出せば、自身の問題を認識してくれるか?
・問題を課題として捉えてもらうためには、どうすればいいのか。
・どのように提案したら、自社商品を最良の問題解決アプローチとして認識してもらえるか?

など、すべての営業プロセスに顧客ファクトのエッセンスは強く関連しているのです。

御社は、顧客ファクトを収集・蓄積・分析する組織体制を整えていますでしょうか?