「新商品の営業戦略は、とても参考になりました。他に、新規事業の成否に影響する要素を教えてください」
先週のコラム「第624話 新商品の営業戦略は、イノベーターを狙う!」を読んだ読者さんからのご質問です。この場を持ってご回答させていただきます。
新規事業の成否に影響を与える要素は、顧客の立場から眺めてみると、クリアに浮き彫りにすることができます。
とことん本質追求コラムでは何度もご説明している要素もありますが、『新規事業の成否を決定する要素』として整理し直してみたいと思います。
顧客から見て、売り手の新規事業を採用しない理由は大きく分けて3つあります。
・そもそも”その新規事業の存在”を知らない
・あえて、その商品を購入するメリットが理解できない
・気になっているが、購入に踏み切れない
上述の顧客心理を購買心理の3つのプロセスに分けると「認知」「興味」「行動」に課題があることがわかります。
そう考えると、新規事業の成否を分けるポイントは、次の3つに集約されます。
✔︎ まずは、存在を知ってもらうこと。
✔︎ 次に、興味・関心を抱いてもらうこと。
✔︎ 最後に、行動に移してもらうこと。
この3つの施策を顧客の立場から、魅力的にプランニングすることが、新規事業の明暗を分けることになるのです。
具体的に、どのようにプランニングしていけば良いのか?
本日のコラムは、その具体的なポイントをご提示してみたいと思います。
まず、1. 認知は、顧客が新規事業の存在を知ることが不可欠です。
先週のコラムでは、この認知を得るために、少ないリソースで最大限の効果を発揮させるための「アプローチ」について解説しました。ポイントは、ターゲットを絞ることで、宣伝広告などのマーケティングコストが下がることです。
例えば「ビジネスマン向けの商品」とターゲット層を広く設定した場合を想定してみてください。ビジネスマンから広く認知を得たいので、「日経新聞」の朝刊に広告を出稿しよう!と考えたとしましょう。この場合の広告費は、1面(15段)だと、2000万円程度、必要となります。
一方、工業に従事するビジネスマンにターゲットを絞った場合はどうでしょう?
工業に従事する人なので、日刊工業新聞に広告の出稿を検討することができます。この場合の広告費は、1面でも、320万円程度です。
上記の例にとれば、ターゲットを熟考しないと、6倍以上のコスト負担を強いられることになります。
これは、新聞広告に限った話ではありません。雑誌でも、SNS広告でも、ターゲットを絞れば、それだけ広告コストが下がります。
ターゲット以外の人に、知ってもらう努力なんて全く無意味なことです。
同額のコストをかけるなら、一か八かの1回の広告よりも、ターゲットを絞って何度も刷り込んだ方が、反響は確実に取れます。
我々の新規事業は、誰にとって有益なのか?
どのような人(会社)が、我々の新規事業を待ち望んでいるのか?
このシンプルな問いが「的確な認知」を得るための最大のポイントとなります。
次に、2. 興味は、顧客が興味を持つための施策になります。
製品やサービスに興味を持ってもらうためには、その価値を理解してもらうことが重要です。
上述の通り、誰にとってどんな価値があるのか?という問いは、興味を引くためのカギとなります。
ポイントは、絞り込んだターゲットをよりクリアにイメージすることです。
・Aさんにとって、こんな課題解決が提案できる。
・A社にとって、こんなメリットを提案できる。
など、我々の提案を示した場合、どんな人(会社)が喜び、驚き、感動するのか…を鮮明に描き出すことがポイントになります。
もし、このイメージを鮮明に描くことができれば、実際に我々の仮説を確認することができます。
「こんな課題を抱えていると思いますが、実際はどうです?」
「その課題は、こんな解決手段があったら、採用したいと思いますか?」と、購買意欲を直に確認することができます。
このヒアリングで、「課題の深刻度」「課題解決の代替案」「直接競合の存在」など、マーケティング&営業戦略を組む上での、重要な指針を得ることが可能になるわけです。
我々が提供しようとしている価値提案は、顧客にとって歓迎されるのか?
この問いの解像度をどこまで高めることができるか。
これが新規事業の成否を分ける2つ目の要素となります。
最後に、3. 行動を促す施策のプランニング…つまり購入のハードルを下げる施策が必要となります。
消耗品など価格の安い商品であれば、サンプリングをして「まずは使ってみてもらうこと」施策を検討してみたり…高額商品であっても、モニター制やデモ機の貸し出しなど、利用体験をしてもらうことで、購入のハードルを下げるのです。
他にも購入のハードルを下げる施策はあります。
✔︎ 早期割引
✔︎ 特典の提供
✔︎ 顧客の利用体験レポート
✔︎ 利用場面の動画提供
などなど、興味・関心を持ってくれた人(会社)に、「価値の妄想」から「価値の実感」へと、購買心理プロセスの遷移(せんい)させることで、行動を促すのです。
行動を促す施策は、1案だけでなく、複数案を組み合わせることも検討してください。
この企画力が、新規事業の成否を分ける3つ目の要素となるのです。
以上、新規事業は、顧客の購買心理プロセスに寄り添う配慮の有無で、その成否を占うことができます。
御社では、新規事業の成否を決定する3つの要素を顧客の立場から見て、適切なマーケティング&営業戦略の立案を熟考していますでしょうか?