「営業マンの意識改革をしたいのですが…」
多くの企業が抱える悩みであり、実現が極めて難しいテーマ。
それが「意識改革」です。
人の意識なんて、そうそう簡単には変わりません。
そもそも心理学の世界では「他人と過去は変えられない」という格言があるほど。
研修をやったところで、効果があるのは数ヶ月。
よくても1年もつかどうか…。
経営者自らが厳しい研修に出て、意識が変わった経験があると「社員にも同じ体験をさせれば変わるかも」と思ってしまいがちです。
でも、社長と社員では、そもそも論としてスタートの意識レベルが違います。
一歩間違えば、無一文になったうえ失敗者というレッテルを貼られるリスクを抱えながら仕事ができる人種と、毎月決まった日にお給料が入らないと不安で、不安で仕方ない人種とでは、意識のステージがそもそも異なります。
では、「意識改革」は実現不可能なのか? と言うと、決してそうではありません。
現実的に、意識改革のお手伝いをして成功したケースはあります。
私がお手伝いする際、コンサルティング内容は同じであっても、進め方には2種類のスタイルがあります。
一つは、プロジェクトチームを作って、新規事業を立ち上げたり、既存商品の活性化を行うスタイル。
社員研修は、一般論になってしまい「わかっちゃいるけど出来ないんだよ…」という不満が起こりがちです。
でも、プロジェクト型の課題解決コンサルティングは、実務にそって課題をやっつけていくので、収益と連動させながら教育も行うことが出来ます。
「ウチの社員は本当に考えないんだよ…」という社長がいますが、現実には、考えないのではなく、考え方の手順がわからなかったり、分かっていても言えない空気が存在しているだけだったりします。
だから、一定の法則に従って「考える手順」を教えたり、発言できる空気を意図的につくることが大切なのです。
しかし、これで「意識改革」が成功するまでには至りません。
既存業務の延長線上では、インパクトが弱すぎるのです。
もし、ゴール設定を「意識改革」におくのであれば、社長自らが陣頭指揮を取るスタイルを採用するほうが得策です。
前回号の「営業部隊に高いモチベーションを持続させる方法」でもお伝えした通り、人を変えるのではなく環境を変えることに着目する他ありません。
人は自らが「変わりたい…」というタイミングでない限り、変化を拒む習性があります。
だからこそ、変化を起こしてしまって「変わらなければ…」という環境を作ってしまう方が、がぜん成功率が高いのです。
サラリーマン時代に私はこんな経験をしました。
今まで販売していた商品を廃盤にして、新商品1本で勝負に出たときの事です。
当時、自分は営業センスがないのでは…と落ち込むほど全く売れず、苦しい日々を過ごしていました。
それは私だけでなく、全営業マンすべてが同じ苦境に立たされました。
創業以来初の大赤字。
このままだと間違いなく潰れるのでは…と強い危機感を覚えました。
しかし、80名ほどいる社員を見渡しても、その多くは現実を楽観的に捉えていたとしか思えない言動を繰り返す状況。
同じ意識をもつ仲間と「このままではマズイ。変わらなければ!」と会議室で吠え、居酒屋でネゴシエーションしても、結局は、元の木阿弥(もくあみ)。
現状を打破できないジレンマに苦しんでいました。
ところが、新しい商品をパッケージそのままで売る手法を改め、顧客の要望を取り入れながら商品を作り込むスタイルに変え、顧客層をワンランク上に設定したところ、変化が現れはじめました。
現場に空気を読む必要性のなかった開発部隊が現場を見ざる得ない環境になり、ワンランク上の顧客層が、自らの仕事の意識を変えていったのです。
社員の意識が変わった…というより、変わらざるを得ない状況になったのです。
これにより業績はグンと回復しました。
「人」を変えるのではなく、「環境」を変えること。
環境を変える手順さえ間違えなければ、「社員の意識改革」に成功する最も確実な方法と言えるでしょう。