「購買の意思決定にストレスがかかる…という事実に興味を抱きました。つまり、ストレスのかからない営業をすれば良い…ということですよね?」
先日のコラムに記載した日経MJ新聞からの引用に、鋭い質問がメールで送られてきました。
答えから先にお伝えします。
ずばり、その通り。
買い手に意思決定ストレスを与えないセールスの仕組みを組み立てることは、売上を向上させる上で重要な着眼点となります。
消費者が、購入に際して「意思決定ストレスのかからないセールス」を仕組み化・形式化できれば、組織全体の成約率は必然的に向上するためです。
これは、リアル営業のみならず、ネット販売でも同じです。
今日のコラムでは、消費者が感じる「意思決定ストレス」の全体像を解明し、未然防止対策について、提示してみたいと思います。
まず初めに、なぜ消費者は、意思決定に際して、ストレスがかかるのか?を理解する必要があります。
ものすごく平たく言うと、支払う価格に見合った満足が得られるか…
この不安が、常につきまとっているためのです。
しかし、その情報収集自体がめんどくさい。
「情報収集にかける時間」を減らし、いかに「選択の失敗リスク」を軽減させられるか…
これが「購買意思決定におけるストレス」を取り除く、大切な視点になります。
では、具体的にどうやってストレスを軽減させることができるのか。
その具体的なアプローチについて、紹介したいと思います。
藤冨のセミナーやコンサルティングを受けた方は、耳にタコができていると思いますが、とても重要なことなので、改めて聞いてください。
この真理を脊髄まで浸透させることができれば、確実にセールス力は向上しますので!
では、始めます。
買い手が、商品を購入する!という意思決定に至るまでには、大きく分けて3つのプロセスがあります。
①認知
②興味・関心
③購入検討
の3つのステップです。
それぞれに分解して、対策を講じることが大切です。
いわゆる「見ない」「信じない」「行動しない」…3つの対策です。
1)見ない対策
そもそも、買い手は売り手の話を聞かない、チラシやホームページも見ない…という前提条件を持つ必要があります。
なぜ、テレアポや飛び込みが嫌われるのか?
なぜ、ホームページは10秒以内に離脱する人が9割以上もいるのか?
なぜ、広告やDMの反応率は、10%を切るのが普通なのか?
この事実を考察すると「見ない対策」の必要性が理解できます。
買い手は、自分の大事な時間を奪われたくないのです。
したがって、売り手は「これから話すことは、あなた(買い手)にとって、とても重要なことなのです」という強いメッセージを作り込む努力をする必要性があります。
この創意工夫が、買い手のストレスを軽減させる第一歩となります。
2)信じない対策
大切な時間を使って、見入ったり、聞き入ったりするためには、買い手にとって価値ある情報を提供する必要があります。
一言で言えば「この商品を買えば、あなたは満足します!」という夢を語ることで「興味・関心」を引き出すわけです。
ところが、魅力的に語れば語るほど、買い手は「それは本当か?」という不安を抱きます。
騙されるのではないか…と。
この不安を取り除くには3つのアプローチが有効です。
①他の買い手の満足度を紹介する…つまり「お客様の声」を公開すること
②権威から推奨
③公的機関によるエビデンスの提示
以上、3つのうちいずれかのコンテンツを提示することで、買い手の不安は和らぎます。
3)行動しない対策
買い手の心理は、興味関心を持って、売り手の話を信用したとしても、最後の最後で躊躇するものです。
「他により良い選択肢はないだろうか?」
「いまの私(当社)にとって、本当に今必要なのか」と。
そこでセールスを成功させるには「背中」を押す必要があります。
営業マンでも、テレビショッピングでも、インターネットでも、この背中を押すことで、制約率は劇的に向上します。
背中を押す方法は、「期間」を限定することが有効です。
期間の限定には、2つ切り口があります。
1つは、値引きです。
ただし、値引きには必ず理由をつける必要があります。
理由なき値引きは、会社の信頼性を損なうことにもつながりますので。
理由には、決算値引き、在庫処分などがよく利用されています。
2つめが、特典です。
テレビショッピングでよく見られる技ですが、今ご購入頂ければ、これも、あれもプレゼントします!というアレです。
以上、見ない、信じない、行動しない対策は、セールスを仕組み化する上では、欠かすことができない重要なアプローチとなります。
しかし、それでも現代はさらに大きな課題を抱えてしまっています。
YouTubeでもショート動画が流行し、小説も140文字小説が流行する現代は、情報処理力が極端に削がれています。
売り手が親切心を持って、購買意思決定ストレスを排除するために、情報を盛れば盛るほど、処理できなくなる…
この負のジレンマに陥らないための「情報短縮化」の技術も、今後の重要課題となるでしょう。
いかに、短く「見ない・信じない・行動しない対策」を講じるか…考え抜いた企業が、競争に打ち勝つことができるのは、間違いありません。
御社は、顧客へのコミュニケート方法を徹底的に考え抜き、実践に移していますでしょうか?