とことん「本質追求」コラム第554話   普及学に習う「商品・サービス」が売れていく5つの法則

「今週のコラム”参入してはいけないブルーオーシャン市場の特性とは”」を読んで、進めていた新商品の企画は中止することにしました。良い気づきをありがとうございます」

コラムの読者さんから、嬉しいメールが届きました。
初動のミスに気づき、方針転換をすることは、埋没コストを回避することにも繋がります。
よほどの胆力ある経営者でない限り、バッサリと初動のミスを切り捨てることはできませんから、感想をくれた方は優れた経営者であるとお見受けしました。

普通の人はミスをカバーすべく様々な努力して、ドツボにハマっていくケースが残念ながら非常に多いのが現実。

ミスを認めずに、「諦めなければ必ず成功する!と、成功法則を履き違えてしまうためでしょうが…
後戻りができなくなってしまうと、ますますムダな出費と時間を垂れ流してしまうことになります。

このような手痛い失敗は、「自尊心の保護」や「自己防衛本能」が、根本的な原因。

弱い犬は、大きな犬が目の前に現れるとキャンキャン鳴き出します。
これも自己防衛本能。
端から見れば、無駄に吠えるよりも、サッサっと撤退した方が良いと思うはず。
しかし、本能が邪魔をして理性的かつ合理的な判断ができなくなってしまう。

飼い主に繋がれたお散歩中の犬なら良いですが、これが弱肉強食の厳しい野生の世界だったら確実に生存確率を落としてしまいます。

生き残るためには、巧妙さと勇気が必要です。
撤退するのも、勇気。

優秀な経営者は、自己の感情をコントロールし、現実を正しく捉え、的確な行動をする重要性を理解しています。
現実は、有限であり、常に変化をし、長期的に物事が繋がりることを知っているからです。

感情に左右されると、経営資源が有限であることを忘れ、変化に対応しにくく、短期的視点となりがち。

現実と揺るぎない法則を正しく捉え、自らの意思決定の中心軸におく必要性を改めて認識することが大事なのではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、読者さんから先週のコラムに書いた「普及学の5つの法則」をもう少し詳しく教えて欲しい…と要望をもらったので、実践的かつ具体的な解説を試みたいと思います。

復習します。
企業が、新たな価値を社会に浸透させたい!と願ったときには、以下の5つの法則を噛み締めることが大事です。

5つの法則とは…

1.比較優位性
2.単純性
3.試用可能性
4.可視性
5.両立性

です。

5の両立性は、前回のコラムで事例を挙げて解説したので、今回のコラムでは他の4つを解説したいと思います。

1.比較優位性は、その言葉の通「代替案と比較しての顧客メリット(効用、便益)」になります。

ポイントは、代替性という点です。
競合商品ではありません。

例えば、「きのこ」からβグルカンと食物繊維を抽出することに成功したから、サプリを販売しよう!と思い立ったとしましょう。
βグルカンと食物繊維は、脂質の吸収を抑制するので、ダイエットに効果的です。
さっそく知人・友人に試してもらったところ、効果テキメン!
これは売れる!と鼻息が荒くなって、製造に入り、ネーミングやパッケージをクリエイターに依頼し、パッケージを作ってしまう…。
よくある話です。

しかし、脂質を抑制するのは、キノコから抽出したβグルカンと食物繊維だけではありません。
食物繊維は、他の野菜などからも抽出できますし、青魚などから摂れるオメガ-3脂肪酸は、脂質の代謝を促進してくれます。
他の代替案と比較して、誰に対してどんなメリットを提供できるのか…
徹底的に突き詰めて、比較優位性(差別的優位性)を浮き彫りすることで、成功確率を高める
ことができます。あくまでも、消費者目線で…です。

2.単純性は、シンプルに説明をして理解できる方が、複雑な説明よりも人々に受け入れられやすい…という法則です。
思考節約の原理とも呼ばれ、人々は、あまり頭を使いたくない…という前提のもと、セールスメッセージを練り上げることが大事だという教えでもあります。

「うちのサプリは、βグルカンと食物繊維が豊富に含まれているから、ダイエットにも効果的だし、整腸効果もある。また、βグルカンは、様々な健康効果が報告されていて、炎症を引き起こすサイトカインの産生を抑制することや、食後の血糖値の上昇を抑制すること、また免疫系のバランスを整える効果や肝臓でのコレステロールの合成を抑制する効果や、さらには…
と説明すると、もはや誰のための何のための商品なのか理解ができなくなってしまいます。

商品を普及させるには、多くの市場を取り込もうと欲張らないことが大事。
説明を単純にするために、ターゲットを絞り込み、狭く、深く攻め込んだ後に、横展開させて波及させる方が、急がば回れ…圧倒的にスピード感を体感できるはずです。

3.試用可能性とは、要するに「お試しできる」ということ。
「スーパーの試食」「サプリの初回限定価格」「デモ機の貸し出し」「体験会」など、様々な販売テクニックに使われている概念です。

シンプルな概念なので、詳しくは説明しませんが、「商材」によって、どのように提案すべきか…を吟味するようにしてください。
闇雲に取り入れると、コストだけがかかり、回収できなくなる恐れもありますので。

4.可視性は、新商品が、他の人に利用されている度合いを見える化すると、安心して購入しやすくなる…という概念です。

波及営業は、この可視性に「顧客の成功体験を織り込むこと」などベネフィットを強調する作戦を好んで用いています。
また購入者だけでなく、「このサプリはお医者さんも認めた成分が含まれている!」などの『権威からの推奨』も、非常に有効な手段となります。

日本人は、特に「右へならえ」の行動習慣を強く持っています。
可視性を販売戦術に組み込むことは、極めて有効的なアプローチとなります。

以上、前回コラムで説明した5.両立性も含め、5つの要素を全て埋め込んだ販売戦略を実行すると、新しい切り口の新商品も、市場から受け入れ易くなり、営業コストを最小限に、販売量を最大化させることが可能となります。

これをやれば必ず成功する!という方法論はありません。
しかし、この法則を守らないと失敗する!という法則は、存在します。

前回と今回のコラムで述べた、普及学における「5つの法則」は、もれなく織り込まないと、販売効率は確実に下がり、ムダな営業コストが肥大化していくことは間違いありません。

御社は、営業戦略・戦術に、普及学の5つの法則を意識的に織り込んでいますか?