「はじめての展示会でしたが、3日間を通じて「とても面白い」「取り扱いしたい」等のたくさんの声をいただくことができました!予想以上の反響に少し驚いています。そもそもこの商品を出品することを想定していなかったところから、見せ方などの助言を多数いただき、おかげさまで良い出展ができました。ここからクロージングをかけていき、結果を出したいと思います。まずはお礼まで。ありがとうございます。』
先週開催された展示会の出展支援をした社長さんから嬉しいメッセージが、届きました。
少人数で全国展開をするような販路開拓は、展示会はとても効果的。
多額な投資がかかるだけ躊躇してしまう企業が多いのですが、成功者は「生き金」となる投資を惜しみません。
反面、事業が思うように伸びない場合、多くの場合は「死に金」に投資をしています。
この差は、「自分のやりたいことを優先する新規事業」と「マーケットの心理に寄り添える新規事業」に分かれていると、ここ最近痛切に感じるようになりました。
藤冨が企業支援をする中で、成功できるパターンと、思うように伸びなかったプロジェクトの差を分析したところ、行き着く先が、この「差」だったのです。
誤解を恐れずに端的にいうと、そもそも起業とは「自己表現」の一種だと捉えることが出来ます。
もっと、平たく言うと「コンプレックスの克服ツール」とも言えるかも知れません。
コンプレックスが芽生える原因は、自尊心の低下です。
自己の存在意義に自信が持てず、社会から孤立する恐怖心が芽生えてしまう。
その結果、「過度な承認欲求」が働き、もっと認められたい!もっと社会的に称賛されたい!と願うようになり、事業活動を通じて、それを実現しようとする…。
これは経営者に限らず、ビジネスマンとして活躍する人も、同じような心理的作用が働いていることを、なんとなく皆さんも気づいていると思います。
これは決して悪いことではありません。
人間心理と社会が成り立ってきた歴史を考察すると、それが現実だから、揺るぎない本質と捉えるべきです。
しかし、この心理的作用によって「事業が思うように伸びない場合」は、自己を内省し、克服する必要性があります。
もっと認められたい!もっと社会的に称賛されたい!と願うばかり、人はどうしても自分のやりたいことを押し通してしまいがち。
・こんな新商品があったら、みんな喜ぶに違いない!
・こんな売り方をしたら、お客様は魅了されるに違いない!
自分が立てた「企画」が成功すれば、「承認欲求」が満たされ、社会的な孤立からの恐怖心が克服される。
恐怖心を克服するとアドレナリンが分泌され、脳は快楽を感じます。
つまり、事業活動は、ある種の麻薬的な作用をもっているのです。
ところが、自分の立てた企画が常に当たり続けるとは限りません。
起業当初は、ビギナーズラックで、たまたま消費者のニーズとマッチし、事業があたっただけかも知れません。
そこを勘違いして、自分の企画が当たる=承認欲求が満たされる という麻薬的な快楽から抜け出せず、手痛い失敗をしてしまう。
これが、事業が思うように伸びない根源的な原因となっているケースが、数多くあることに気づく必要があるのです。
いわゆる「過去の成功体験に溺れる」という現象も、これに属します。
もし、本当に新規事業を成功させたいのなら、マーケット(将来の顧客になり得る人たち)に寄り添うことが必要です。
・この商品の特性、技術、ノウハウは、誰にとって、どんなメリットをもたらすのだろうか。
・そのメリットは、他の代替案と比較して、差別的に優位性を持っているのだろうか。
・その差別的優位性は、的確に市場に伝達できるだろうか。(ネーミングや価格も含めて)
自己満足に陥ることなく、他社(顧客)目線を取り入れることで、お客様から評価され、従業員はやりがいを感じ、仕入先も取引量が増えて、全員がハッピーになります。
そのように考えると、他者(顧客)目線を取り入れることこそ、本質的なコンプレックスの解消に繋がることが分かります。
コンプレックスの恐怖の根源は、社会的な孤立だからです。
「人類にとって理想的な生活形態を研究する上で、企業が新たな実験室となりうる」として、「完全ある経営」を書き上げた心理学者のマズロー 氏は、自己実現について、こう語っています。
自己実現とは、利己と利他の二分法が解消された姿をいう…と。
話が長くなりましたが、冒頭の「嬉しいお便り」は、まさに自己実現を体験した理想的な事業活動の結果だと捉えることが出来ます。
・売りたいものでなく、今の消費者が欲しい!と思うものを提供すること
・リスクが高くても、最も自社商品が売れる「場所(展示会)」で勝負を挑んだこと
・伝えたいことではなく、顧客が知りたい情報を前面に打ち出したこと
これが、成功要因です。
整理すると、成功する新規事業は、相手目線で新規事業を企て、地獄をみる新規事業は、自分視点から抜け出せていない…ということになります。
御社は、マーケット(将来の顧客になり得る人たち)に寄り添った事業活動をしていますか?
追伸
「完全ある経営」では、自己実現という概念を様々な切り口から追求していますが、本コラムでは趣旨に一貫性を持たせるため、定義を絞りました。
自己実現の定義をあらゆる観点から知りたい方は、ぜひ「完全なる経営」の読破をお勧めします。