とことん「本質追求」コラム第538話 変化の激しい時代でも「売れる組織体制」を考究する

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「今週のコラムは、何となく感じていたことをスバリ言語化してくれて…良い刺激になりました」

 

先週、長年のお付き合いのある社長さんが、営業マンは受注獲得だけでなく、売れる商品の企画まで首を突っ込むべきだ!という主張について、共感をしてくれました。

 

そして、付け加えて「つまり機能別組織から事業部制にした方が良いってことですか?」と質問されたので、藤冨はこう答えました。

 

そうですね!「事業部制」になるのでしょうが、なんかしっくりこない名前ですよね。

「マーケット・マネージャー制と言った方が、私が抱いているイメージになるのですが…」と伝えたら、社長は「面白いですね、それ!」と、盛り上がりました。

 

プロダクト・マネージャー制も良いとは思いますが、名前だけを見ると「製品を売り込むことが主眼となりやすい」感じがしてしまいます。

勘違いした社員が独善的営業スタイルに陥ってしまっては、本来の目的である「顧客の創造」からは、程遠い思考回路を生み出しやすい組織に成り下がる恐れもある…。

 

またプロジェクト・マネージャー制は、プロジェクトが終わったら、元の組織に戻ってしまうため、社員のプロ意識が育ちにくい。

時代の断片を切り取った課題解決に終始し、中長期的な成長戦略を描けない脳みそになってしまいそうです。

 

一方、勝手にネーミングした「マーケット・マネージャー制」は、市場との対話を重視し、柔軟かつスピーディーな新商品開発や商品改良を目指すイメージが湧いてきます。

 

なんだか言葉遊びのように感じるかも知れませんが…

組織名称は、働く社員のモチベーションにも影響するため、とても大事だと藤冨は考えます。

 

というのも、心理学者マズロー が書いた「完全なる経営」では、「何か重要なものの一員となる。これが自尊心を回復させる特効薬となる」と指摘しています。

 

価値ある仕事、重要な仕事と一体化した人間は、自己重要感が増していき、仕事力が向上していきます。

しかも、組織の名前は、仕事の役割や目的をも自然と定義する力を持っています。

 

働く人たちの心理面から考察しても、組織名称は、非常に重要であると考えます。

 

「営業は営業…」「生産は生産…」と、機能別に分けられた一般的な組織形態は、市場の要求が画一的な時には、非常に生産性が高く効率的だと思います。

インターネットがなく、皆が同じようなテレビ番組や雑誌を見て、画一的な価値観が形成されていた昭和世代には、最適化された組織だったはず。

 

しかし、インターネットが社会に浸透し、爆発的に広範囲のコンテンツが発信されているYouTube、好きな時に、好きな映画が見られるNetflixやAmazonプライムビデオなど、余暇時間にインプットされる情報が、多様化されると、求める商品やサービスも自然と多様化していきます。

 

多様化された要求が生まれやすくなる時代において「営業は営業…」「生産は生産…」と、組織間で対立が生じてしまうと、市場ニーズに迅速かつ的確に応えることはできないのは、火を見るより明らかです。

 

機能別組織は「専門性を高めやすい」「社内リソースに重複が生じにくい」「責任の所在が分かりやすく評価がしやすい」などのメリットは、それなりに存在します。

ただ、組織は「管理のしやすさ」「人員育成のやりやすさ」を基軸として運営すると、思考が内向きになってしまう懸念があります。

 

市場環境が激動する時代において、内向き思考の組織になってしまえば、そもそも論として、その組織は市場から見放されてしまう。

 

構造的に見ると、今多くの組織でこのような弊害に悩まされているのでは…と感じて仕方ありません。

 

そろそろ中小企業の経営者も、「営業は営業…」「生産は生産…」と、何の疑いもなしに決められた組織のあり方に疑問を持つ必要性があるのかも知れません。

 

もちろん、営業部に配属された人材が、市場のニーズを感じ取り、われわれの製品はこうあるべきだ!と感じたら、的確に企画を評価し、市場対応できる仕組みが動けば、機能別組織であっても問題はないと思います。

 

ただ残念ながら、そうした仕組みを持った企業は極々少数派です。

一見、セクショナリズムがないように見える組織でも、意外にも内面的には、組織間が対立しているケースがほとんど。

 

「ちょっとした改良なんだから、(生産部門は)すぐに対応しろよ」

「なぜ営業は新規開拓をしないのか?せっかく苦労して開発したのに…」

などの愚痴を、よくよくコンサルティング現場でも見聞きしています。

 

まさに機能別組織の弊害です。

 

こうやって、改めて組織のあり方から考えてみると、激動する時代に、企業も合わせて変化し生き残っていくためには、機能別組織は適していないように思えてなりません。

 

そもそも商品やサービスを市場に適合させていくには、現場からの発想が何よりも大事です。

 

以前、クライアント企業の社長さんに「営業トークから考える商品企画って、成功の確率が高いですよね!」と喜んでもらったことがありますが、まさにその通り。

 

つまり市場の欲求から捉え「売れる!」から逆算した組織活動をしやすい体制こそ、変化の激しい時代に適した組織と言えるのではないでしょうか。

そういった意味でも、市場との対話を重視した「マーケット・マネージャー制」の取り組みは、非常に有効だと感じます。

御社は、市場ニーズに迅速かつ的確に対応できる環境(組織や仕組み)に気を配っていますでしょうか?