「原材料費も高騰もあるし、今のままの粗利益では儲かりません。全社的に値上げをしたいと考えています。でも値上げすると売れなくなるかも…。その不安から決断ができない状況にいます」
先日、非公開のグループ・コンサルティングでの相談。
同社は、4年前にも参加し、その際も同じ悩みを抱えたままでした。
当時は、商品の魅せ方をガラッと変えて、新宿伊勢丹から「常設展」の受注を勝ち取った実績があったのに…
聞けば、自社の都合で引き揚げてしまったとのこと。
伊勢丹の担当者からは「また出来るようになったら、いつでもどうぞ」と言われているのに、ノンアクション。
「今なら、出来るのですが…どうも尻込みしてしまって…」と、覇気のないオーラに包まれてしまっていました。
そこでまずは、伊勢丹との取引再開に向けての具体的なアクションプランを提示した上で、具体的な戦略実行手順を提示しました。
ザクッと言えば、日本でダントツの「信用の移転効果」がある伊勢丹との取引実績を武器に拡販戦略を実施すること。
「波及営業」の最大のキモを抑えているのですから、拡販戦略は8割成功したも同様なのですが…全社的な値上げを成功させるというのは、別の話です。
全社的な値上げを成功させる最もわかりやすい方法は、高額商品(松)、売れ筋商品(竹)、トライアル商品(梅)に分類し、プライスラインの「松竹梅」を見込客に提示することです。
様々な購買心理の実証実験で明らかになっているので、皆さんもご存知だと思いますが、多くの人は中間価格である「竹」を選びます。
今後、格差社会が広がると価格選考基準が変化する可能性もありますが、今のところは有効な作戦です。
この時、高額商品の「松」をあり得ない金額に設定することで、竹の価格を引き上げることが効果的。
4年前に書いた「第305話 720mlのボトルティーを60万円で売る商売センス」https://www.j-ioc.com/wp2024/column/5361/ の事例に登場したロイヤルブルーティージャパン社のホームページを見ると、藤冨の言っている意味がストンと腑に落ちると思います。
(ちなみに、現在の最高額の商品は33万円でした)
ただ、言うは易し行うは難し。
超高額商品の設定なんて、どうやってやるの?
と思考を停止してしまう方がほとんどです。
そこで、超高額商品を生み出すアイデアの出し方を列挙してみたいと思います。
ビジネス研修でよく登場するKJ法やマンダラートなどはお伝えしません。
藤冨も若い頃には、様々なアイデア創出法をトライしてみましたが、売れる切り口を生み出すアイデア出しでは、使えた試しがないからです。
実践的に使え、藤冨が今でも利用しているアイデア出し3選をお伝えしたいと思います。
■売れる切り口を生み出すアイデア出し3選
・アナロジー・エクササイズ
・満足拡大アプローチ
・ネガティブ解消アプローチ
の3つです。
1. アナロジー・エクササイズ
手前味噌ですが、コンサルタントに伴走を依頼するメリットは、他業界の成功パターンを、自社の課題に置き換えて成功確率を高めるアプローチが出来ることです。
アナロジーとは「2つ以上の物事の間にある共通点に着目し、考えている課題に応用する思考法のこと」ですが、あらゆる課題解決実績が引き出しにある(実戦的な)コンサルタント は、このアナロジーが引き出しています。
例えば、「超高額商品」をどうやって作るか? というアイデアを出す際は、上述のロイヤルブルーティーのような事例が頭に入っていて、高額商品を支える機能的な価 値を別の商品に置き換えるとしたら…と類推していきます。
・ワインボトル1本で30万円もするお茶(ロイヤルブルーティー)
・高級ワイン、ボトル1本で800万円もするロマネコンティ
・100万円もする高級羽毛掛け布団。
他業界の高級商品が、高額商品であることを消費者から支持されている要素を抽出し、課題商品との間に共通点の仮説を見出していく。
これは、非常に有効なアプローチとなります。
2.満足拡大アプローチ
アナロジーと組み合わせて思考することがポイントです。
超高額商品が支持される要素…
つまり、顧客が高級品であることを「納得する要素」を抽出していきます。
・希少性の醸し出し方は?
・歴史・伝統の重みの表現は?
・手間暇かけた時間的価値の伝え方は?
・唯一無二の技術である説明の仕方は?
超高額商品は、作り手が全身全霊の魂をかけて作り出していることがほとんどです。
その命をかけて大切に扱った商品に、買い手は自己投影をしているのです。
プレゼントの場合も同じ。贈る方への自己重要感を満たすことを目的に買い手は高額商品を選定しているのです。
この心理を熟知した上で、自社商品なら何を謳えるか?
脳みそをかき混ぜるような苦痛を伴う思考となりますが、このポイントを突破できると、道がひらけてきます。
3.ネガティブ解消アプローチ
どちらかというと、フロント商品や売れ筋商品へのアプローチに有効ですが、不満、不自由、不便など既存商品を利用する際に生じている「不」を探求することで、新規 アイデアを生み出していくアプローチも有効です。
先日、西川ふとんの日本NO1代理店の社長と事業アイデアを考えていた際、思わぬところから多くの人たちが抱えている不満足がネット検索されていることを判明しました。
勘所の良い同社社長と二人で大盛り上がり。
その日のうちに、たたき台となるホームページ改修案を作ってしまいました。
またしても、伝説が生まれそうな気配ですが、ネットで検索されている消費者の不満に対応した商品・サービスがない場合は、支持されることは間違いありません。
上記3つのアプローチを実行する上で、マインドマップ を書いたり、ホワイトボードに向かって一人ブレストをしたりしますが、このようなテクニックを覚えるよりは、箇所書き(メモ書き)で良いので、徹底的に上述の3選からアイデアを書き出してみることが大事です。
アイデア出しに煮詰まったら、散歩にでて、くだらないことでも何か思いついたら、すぐさまスマホのボイスメモに登録。
これを繰り返していけば、きっと新しいアイデアが生まれてくるでしょう。
脳みそに汗をかくのは中々大変ですが…
今後ますます広がる格差社会に向けて、御社も超高額商品のナインナップに一度チャレンジしてみてはいかがですか?