「どうせなら、何か面白いことをやりたいですよね! いろいろとアイデアがあるので、ちょっと聞いてもらえませんかね?」
先週のコラム「第522話 お先真っ暗に見える事業環境に光を差す方法」を読んだクライアント企業から連絡がありました。
3年前ほど前にプロジェクトが完了し、順調に業績を伸ばしていた様ですが、ここに来て足踏み。
コロナとかの影響ではなく、どうやら強的なライバルが出現して市場環境が一変した様です。
しかし、アイデアマンの社長は、意気消沈するわけでもなく、こう切り出してきました。
『この様な「大変」な時期は、「大きく変わる時」ですよ。メルマガを見て刺激を受けました。何かゼロから事業を興そうかと! 本音を言いますと、これまでやってきた事業は、飽きちゃいましてね』 と笑いながら、話を続けてきました。
そして、その事業構想のアイデアを聞いた瞬間…
「それはイケる!」と、お金の匂いがプンプンしてきたのです。
これからの事業なので、詳細を明かすことはできませんが、その事業アイデアから金の匂いがした理由を改めて振り返ると、3つのポイントがあることに気づかされました。
普段から、手を変え、品を変えて、お伝えしていることですが、こんな時代だからこそ、意識を強く持っておきたい「新規事業を創案する際の3大ポイント」を整理しておきましょう。
1つ目は「ルール」を変える…です。
新商品・サービスを小資本かつスピーディーに「認知」させる活動で大切なことは、今まで違う!と言う「気づきの開発」をすることです。
その「気づき」を引き出す要素として、買い手がアタリマエと思っていた常識を覆すことは、強力な「惹き付け」が成功する確率が高まり、事業を大成功に導く要素となり得ます。
例えば、これまで顧客が高い買い物をしてきたものを「無料化」して、本業と新規事業の合算損益で、利益を出すなどのビジネスが、その典型例です。
具体的な例で言うと、飲食業向けのPOSレジスター業界があります。
高額のPOSレジスターで儲けていた業界に「無料」で新規参入してきたリクルート社。
NECや東芝などのPOSレジスター・メーカーは、これまで安くても50〜60万円。店員がオーダーを取る端末を導入すると軽く400〜500万円もの見積もりを飲食業界に出していました。
そこに機器の製造ノウハウもないリクルートが、「無料アプリ」で新規参入。
お持ちのiPadを使えば、レジが無料になります! と約10年前に業界に殴り込みをかけてきたのです。
リクルートの狙いは、あくまでも本業である「ホットペッパー(広告)」の囲い込み。
本業で儲けるための「サブメニュー」だから、広告と合わせて損益計算すれば、良いだけ。
単体で損益計算をしなくてはならない企業と比べると、それこそ勝ち目はありません。
高額のPOSシステムが「無料」だって?
これほど、インパクトのなる「気づき」の開発はありませんが、別に無料化だけが成功要因ではありません。
これまでの常識をいかに覆すか? そこに焦点を当てる「気づき開発」が、事業成功のポイントになります。
2つ目は、顧客の欲望を刺激していること。
ビジネスは、買い手の「欲しい・買いたい」が出発点となりますから、顧客の欲望を刺激することは当然と言えてば当然なのですが…
簡単な様で、意外に間違いやすいのが、顧客への欲望をいかに刺激するか?と言うアプローチです。
例えば、雨の日の靴は、長靴が定番ですが、長靴では蒸れるし、そもそもビジネスにはカッコ悪くて履いていけない。
だからと言って、革靴ではビショビショになって気持ち悪い。
そこで、ゴアテックス (GORE-TEX)と言う、防水性を持ちながら、靴の中の湿度を外に逃す「透湿」と言う機能を持たせた商品が生まれるわけですが…
この時に「機能」だけで説明しても、買い手は誰も気付いてくれません。
ゴアテックス は、透湿性と防水性、防風性を兼ね備えた素材です。
と、メーカーは、よくありがちな表現(特徴の説明)をしてしまいがちですが…
ゴアテックス は、高い防水性を持ちながら、足の蒸れを防ぐ「呼吸する素材」です。
と表現した方が、確実に売上を伸ばすことができます。
(注:ゴアテックス は、靴だけでなくウエアなど多岐な商品が展開しています)
実際、米国において「商談の成約率」を研究したエビデンスがありますが、「特徴」の説明は、商談の成約率にはほとんど影響していませんでした。
最も成約に影響していたのは、顧客にとっての「利益の説明」だったのです。
ただし、米国では「利益」の提示で、買い手に購買行動に移してくれますが、日本では、+αの要素が必要。
+αの要素とは、顧客が受け取る利益の「証明」です。
日本人は、購買行動にも「横並び主義」が見られますから、この証明は必須。
新規事業の場合は、お客様の声で証明することができません。
従って、1. 研究機関による証明(エビデンス) や 2. テストユーザーの評価のいずれかを獲得することで、顧客が受け取る利益を担保することが大事。
営業政策を事業構想段階から組み込むことで、事業の成功確率は着実に向上しますから、外してはならないポイントとなります。
最後の3つ目は「自社の強み」に基づく事業構想であることです。
自画自賛的な「強み」ではなく、あくまでも「顧客から評価をされている”強み”」であることが大事。
何を持って、お客様から支持をされているのか?
この客観的な「強み」から、滲み出た「新規事業」であることが大事です。
ドレッシングが美味しいと評判の飲食店が、ドレッシングの製造業に進出するのは「強み」が活かされていると評価できますが…
DIYが好きで、自分で店舗の内装をやった経験をもとに、店舗内装業に進出したところで、成功確度は決して高くはありません。
ドレッシングを作っている「頻度」(=熟練度)は、高く、それが顧客から支持されていることは間違いありませんが、内装のセンスの良さで顧客が来店しているわけでもなく、DIYの頻度も低いためです。
自画自賛になっていないか…客観視することが大事です。
・買い手の「欲しい」を刺激する「気づき開発」
・買い手が「買いたい」と渇望する「欲望の刺激」
・競争に負けないための「自社の強み」に基づく事業構想
この3つのポイントが満たされてと、プレゼンを聞いているだけで「売れる匂い」がしてきます。
気づきの開発段階で、これまでの常識を覆す商品であり、さらにその商品によって顧客が得られる利益が大きければ大きいほど、事業の成功確度は高まっていきます。
時代が大きく変わる中では、さまざまな「常識」がオセロの様にひっくり返っていきます。
つまり「気づき」を開発できるチャンスが広がっているわけです。
御社も新しい時代に適応させた「新規事業」を立ち上げてみませんか?