「見込客が、欲しいかも…って思ったその瞬間に背中を押すことが大事…まさにタイミング イズ マネーですね」
クライアント企業の社長と一献傾けた時に、先週のコラムが、酒の肴となり盛り上がりました。
同社で最も優秀な営業マンは、会社のルールをあまり守らず、ちょっとだけ問題児扱いされているそうです。
朝は平気で遅刻するし、交通費精算も2か月まとめて出すなど、周りの人に少々迷惑をかけているとのこと。
しかし、営業出身の社長は寛大な目で見ています。
「彼はね、クロージングになると、夜中であろうと、土日であろうと訪問するんですよ。翌日会社に遅刻するくらい多めに見てやりたいのですが、他の社員の目が気になって…まぁ、今はあえて何も指摘しないようにしていますけどね、笑」と大笑いしていました。
会社のルールを守ることよりも、成果に忠実な営業マン。
会社の規模や業界によってはアウトでしょうが、ベンチャーや成長真っ盛りの企業なら、逆に彼のような人材がいなければ、会社は伸びていきません。
フレックスを導入するなど制度を変えてでも、そのマインドを評価すべきではないでしょうか。
と言うのも、近年日本の労働者全般に言えることですが、「仕事に対する姿勢が、利己的になっている」ように感じて仕方ありません。
・成果が上がらないのを、上司や他部署の責任だと罵ったり(もちろん、それが原因だったりすることもありますが)
・もう少しで成果に繋がるのに、長時間労働を嫌がるばかり、それ以上働こうとしなかったり
・より良い仕事をするために他部署に対して、協力を働きかけなかったり
仕事<自分 の構図がハッキリしているようです。
これは、おそらく40代、50代以降の経営者や管理職を中心に、痛切に感じていることではないでしょうか?
今日のコラムは、その利己的な考えが、お客様、会社、そして巡り巡って自分に対してどう影響するのか…
掘り下げてみたいと思います。
先週のコラム「人の心を読むことが経営の要である」https://www.j-ioc.com/wp2024/column/12342/の続きとして、オンラインサイトを擬人化しながら、お伝えしてまいりましょう。
前回、オンラインショップで「在庫がない場合」は、品切れではなく「予約受付中」にすれば、サイト訪問者をガッカリさせないし、自社にとっても売上見込みが立つ。
さらに、生産途中に「需要」がわかるため、生産量の微調整も可能になる。と一石三鳥だという話をお伝えしました。
少しイメージを膨らませてみましょう。
「こんにちはー、雑誌でみたこの商品ありますか?」と来店したお客に、「売り切れだよ」と素っ気ない返事をされたA店。
「残念。もう売り切れちゃったけど、明後日には入荷するから入り次第、お届けしますよ。ここに名前と電話番号を…」と予約を受け付けてくれるB店の店主。
どちらの店の「ファン」になりますかね?
予約を取るのは、面倒かも知れませんが、親切に予約しますか?と聞いた方が、会社もお客様も嬉しいはずです。
オンラインショップであろうと、対面販売であろうと、これは全く一緒。
一手間をかけることで、確実に「業績」は向上します。
また、前回説明ができなかった〈「商品名」を検索した際に、上位表示されているページ以外のページに廉価版の商品が購入できる状態になっているとのこと…〉というのも、厳しい言い方をすると「手抜き仕事」となります。
なぜなら、せっかく来てくれたサイト来訪者へちゃんと案内ができていないからです。
もう一度、イメージを膨らませてみましょう。
疲れた体を癒すために、訪れた温泉旅館で、気持ち良い対応を受けたら、嬉しい気持ちになりませんか?
・露天風呂はどこにあるのか
・入浴時間は何時までか
・近隣の見所はどこか
懇切丁寧にわかりやすく教えてくれる旅館と、リーフレットに書いてあるから読んでおいてくださいね、と投げやりの旅館…。
どちらが繁盛するか、火を見るより明らかではないでしょうか。
これは、オンラインショップでの場合も全く一緒。
商品名を入力して、上位に表示されたページから、すぐに購入できればそれに越したことはありません。
しかし、ニュースリリースのサイトや社員が書いたブログが検索上位に表示され、そこから「誘導のリンク」がなかったり、あっても分かりにくいリンクだったら…
サイト訪問者は、どこにいったら、詳しい説明が読めるのか。どこにいったら購入できるのか? 立ち往生するはずです。
人間の対応も、オンラインショップの対応も、概念的には全く同じ。
親切に対応する方が、確実に売上が伸びていくものなのです。
書いてあるから、わかるでしょ?
というスタンスは、厳しいですが「利己的な姿勢」だと言わざるを得ません。
お客様が喜び、会社も儲かって、自分の居場所が豊かになれば嬉しいでしょう。
逆にお客様が離れ、会社が儲からなくなれば、自分の居場所が居心地悪くなります。
利己的な姿勢は、いずれ自分の首を絞めていきます。
逆に、利他的な配慮ができれば、巡り巡って自分のところに恩恵として帰ってきます。
二宮尊徳が皆に伝えた「たらいの理論」は、藤冨もこの年代に「なるほど、本当だなー」と、確信を持つようになりました。
こっちにこい、こっちにこいと、〈たらい〉の中で水を引き寄せると、水はヘリをつたって、あっちにいってしまう。
しかし、あっちにイケ!と水を向こうにやると、水がこっちに戻ってくる。
日本ならではの教えでしょうが、日本人のDNAを持つ以上、このような生き方の方が日本人は、しっくりくるのでは?と感じます。
ますます社会は、利己的な方向に向かっていっていますが、我々はビジネスを通じて、利己と利他の二分法が解消されるような生き方で、成果を上げていきたいものです。
心理学者のマズロー は、このような生き方を「自己実現」と定義しました。
コロナによる世界経済への打撃、ロシア発の戦争勃発による世界の分断などを考えると、これからの時代は、経済合理性だけでなく、成果をあげるための「姿勢」が重要視されてくるのでは? と感じています。
もちろん、金銭的な報酬も大事です。ただ同時に「仕事を通じて、人としての成長ができる!」という報酬は、これからの日本にとって最重要視されてくるかも知れません。
御社は、自己実現を目指す企業体質になっていますでしょうか?