「連日のニュースを見ると”世界大戦”が起こる可能性も否定できなくなってきましたね。成るようにしかなりませんが、今回のコラムで書かれていたビジネスの創造が的確かつスピーディーなる”共有会議”なるものは早急に実施してみますわ」
先日、クライアント企業の社長とランチミーティングした際、先週のコラムで提言した”共有会議のススメ”に共感され、企業文化に溶け込ませてみたいとの意欲を示されていました。
時代が急変する中、突如として主力製品が売れなくなったり…と何が起こるか分からない世の中。
企画から開発、製造、販売の連携を強化し、スピーディーに事業を立ち上げる力が企業に求められてくるのは、間違いありません。
これは、新しい流れ?
いえ、そんなことはありません。
ずっと前から、この流れの中で私たちはビジネスをしてきました。
コロナや戦争は、この流れを強化、急進させているに過ぎません。
日本セブンイレブンジャパンの創始者の鈴木敏文元会長は、現役時代に「顧客ニーズは多様化しているわけではない」と、多くの人々が抱く常識を真っ向から否定しました。
「ニーズは、逆に同質化している。ただ、そのニーズの変化のスピードが異常に速くなっている。つまり製品ライフサイクルが短くなっているということだ」
と言っていました。
書籍の出所を忘れてしまったので、正確な表現ではないかも知れませんが、こういった概念は強烈に記憶するタイプなので、主旨に間違いありません。
セブンイレブンは、2位のコンビニと比較して、日販差15万円以上と言われています。
年間にすると5500万円近くもライバルと売上差をつけています。
その背景は…
徹底した「顧客目線」にあります。
「店頭在庫量」と「販売数量」の相関関係に着目し、棚に並ぶ魅力的な品揃えが、売上に結びつく。
だからこそ、適正発注が重要であり、その「仮説」と「検証」を常に「顧客の立場で」行うことを徹底し続けている結果が、日販差に現れているのです。
テレビ会議ができる時代になっても、全国から1000人以上のOFC(スーパーバイザー)を週1回呼び集め、成功事例のケーススタディ
を共有し、最後に鈴木氏が講話で取りまとめるスタイルを30年以上も続けてきたとのこと。(鈴木氏退任後の頻度は不明です)
毎週1回ですよ。月4回。
年間で52回も全国のOFCを呼び寄せて、「顧客目線」を叩き込んでいるわけです。
顧客が今、何を求めているのか…を。
莫大なコストをかけて継続しているこの会議が、成果に結びついている理由は一つです。
鈴木敏文氏の信念である「顧客の立場」で、物事を考えることを徹底させているから…
・夏に「おでん」を売ったり
・赤飯を売るためだけに全国の工場に莫大な設備投資をして「蒸し器」を導入したり
・自社開発PB商品を「コンビニ(セブンイレブン)」「スーパー(ヨーカー堂)」「百貨店(西武)」業態を跨いで同一価格で販売したり
と、常識を逸脱した意思決定の理由と背景を全社員に説得するわけです。
鈴木敏文元会長は、「自らを否定的にとらえ直さないと、誰もが売り手サイドからの発想に流れてしまう」と説いています。
だからこそ「売り手目線に流されないために、莫大な費用をかけて毎週1回の全国会議を実施している」わけです。
「自惚れは、成長を阻害する」
「田の草は、あるじの心次第にて、米ともなれば、荒地とも成る」
二宮金次郎の名言を、凡事徹底させることを「企業文化」として浸透させたことが鈴木敏文元会長の凄さだと藤冨は感じています。
何が言いたいかというと、製版一体や共有会議が業績を飛躍させるということではない、ということです。
「カタチ」ではなく、「精神」が長期安定的に業績を向上させていることです。
✔︎ 変化する顧客を感じ取る「企業文化」
✔︎ 感じ取った変化を「売れる企画」に変換する想像力
✔︎ そして、その企画をPOSデータで瞬時に評価し、ブラッシュアップする継続力
これを週1回のFC会議で徹底しているのです。
大事な事なので、もう一度書きますが、製販一体や共有会議(FC会議)などの「カタチ」が大事なのではありません。
顧客目線に立ったリーダーの「精神」が大事なのです。
「衣ころもを染めんより心こころを染そめ」と仏道の世界では言います。
カタチに拘らず、精神を大事にしなさい、という意味です。
説教したいわけではありません。
精神に重きをおかないと、製販一体や共有会議などの「カタチ」だけ真似しても、結果に結びつかないことをお伝えしたいだけです。
それなら、やらない方が、まだマシです。
キーエンスも、この「顧客目線に立ったリーダー」の育成に力を入れています。
屈強な営業力で知られていますが、彼らは単なる精神論だけでは動いていません。
新製品の7割が、世界初、業界初と言われ、その発想の起点は営業マンの活動情報です。
彼らは、セールスマンというよりは、現場の課題や問題を解決するコンサルタントの役割をしています。
商談相手が抱える課題や問題を、商品を通じて解決する提案。
その解決策も、顧客の想像を超える「あるべき姿」を提案しているからこそ、競合よりも「高い受注単価」を精度高く獲得できているわけです。
具体的な営業推進力も手伝って、その結果は営業利益50%。
製造業平均の4%、日本の代表的製造業であるトヨタ自動車8%を遥かに凌ぐ高収益力です。
顧客の立場に立って企業活動を行う「強さ」を証明する代表的な企業ですね。
もうすぐ新入社員が入ってくる4月です。
御社は、トップから新入社員まで「顧客の立場に立った企業活動」を浸透させる仕組みを作っていますか?