とことん「本質追求」コラム第512話 製販一体の3つの運営ポイント

 

先週のコラム「第511話 「営業部門」と「製造部門」の共有会議で業績アップ」

https://www.j-ioc.com/wp2024/column/12303/の続編を本日はお届けします。

 

 

✔︎ 製販一体のスキームを緩やかに入れる感じですか?

✔︎ うちは製造と営業の仲が悪くて、共有会議は”やぶ蛇”になりそうです(汗)

 

など、先週のコラムを読んだ読者さんからの質問、感想が寄せられていました。

コメントや感想をくださる方、いつも励みになっています。有り難うございます。

 

ご質問や感想に対するコメントは、まさに今日のテーマでもあります。

前回のコラムでは、限られた需要、見えない買い手、境界線のない過酷な競争環境では、製販一体の組織づくりが重要視される…と

問題を提起し、その運営においては3つのポイントがあると言うところで、次回への続き…と締めくくりました。

 

3つのポイントは、

 

1. 顧客視点が脊髄に浸透しているリーダーの存在(または参謀の採用)

2. 営業のフィードバックの品質管理(売れない言い訳を発言する場にしない)

3. 迅速かつ効率的かつ的確な「ものづくり体制」の構築(テストセールス体制など製販一体運営)

 

でした。

 

順番に解説していきましょう。

 

1. 顧客視点が脊髄に浸透しているリーダーの存在(または参謀の採用)

 

製造と営業は、役割は異なるものの、経営という視点に立てば、目的は一緒です。

経営の目的は、買い手が欲しがるものを、自社製品で実現することに他なりません。

ドラッカー流に言うと「顧客の創造」です。

いまいち理解しにくい「顧客の創造」という概念ですが、要するに、

 

 

✔︎ 誰かが困ったことを自社の技術や商品を通じて解決すること

または

✔︎ 誰かが満たされていないことを、自社の技術や商品を通じて解決すること

 

という事です。

これが、「買い手が欲しがるもの」と藤冨は定義しています。

 

 

製造現場の役割は「価値をつくること」です。

営業現場の役割は「価値を伝えること(気づかせる事)」です。

 

そして、藤冨が提案する「共有会議」の役割は、「価値を創造すること」です。

 

 

「買い手のお困り事」「満たされていない何か」は、営業現場が最も温度感を感じています。

事実も大事ですが、温度感が重要です。

その温度感が「開発の優先順位」を決定するからです。

 

もちろん、早くやるべきだ!と全員が思っても、「どうやって開発を実現するか?」という課題が必ずと言って良いほど出てきます。

 

営業の現場は「それが実現できれば、絶対に売れる!いつ出来る?早くして欲しい!」とせっつき…

製造現場は、「技術的な課題や製造方法で思い悩む」

 

ここでお互いの立場を優先すると、どうしても軋轢が生じてしまうので、強いリーダーシップが必要になります。

しかし、お互いの調整役だけで終始するリーダーシップでは、「共有会議」の意味は成り立ちません。

「顧客視点がぶれない”価値づくり”が出来るリーダー」でなければ、最終的に「買い手の欲しがるものを創造」することはできないのです。

 

私も、サラリーマン時代に、この「共有会議」を実施していましたが、新しい課題が出るたびに、必ずと言って良いほど「製造(開発)」と「営業」の軋轢が生じていました。

それこそ、朝の9時から始まって、食事も弁当を買って会議室で食べながら討論する。時には、机をガンガン叩きながら(笑)

 

パワハラ なんて言葉が生まれてきたために、仕事がやりにくい世の中になってきた感はありますが、この軋轢をポジティブに変換するには「顧客視点がぶれないリーダーの存在」がどうしても必要になります。

社内にいなければ、社外から調達すべき重要なファクターになります。

 

ソフトバンクの孫社長が、ユニクロの柳井会長、日本電産の永守重信会長、以前には日本マクドナルドの故、藤田田氏やオリックスの宮内氏などを社外取締役に招き入れましたが、客観的視点(顧客視点が主軸)の重要性を認識しているからでしょう。

 

意思決定は、顧客視点をブラさないこと。

これを死守するリーダーの存在が、共有会議には絶対に必要となります。

 

 

 

2. 営業のフィードバックの品質管理(売れない言い訳を発言する場にしない)

 

会議での発言の起点は「営業」になることが多くなるはずです。

顧客起点ですから、それは必然となるでしょう。

 

ただ、気をつけなくてはならないのは、営業のミッションは「1件でも多く受注を取ること」です。

しかし、ここに焦点が当たり過ぎてしまうと、目の前の受注をとるための「開発要求」をしてしまいがちになります。

 

その議題を開発が受け取ると、もう面倒くさくて仕方ない。

「だから営業は…」と悪口が始まってしまいます。

 

会議では、自由な発言が大事ですが、ベクトルの違う発言は、収束させていく必要があります。

否定をせずに、「その顧客要求にある背景って何?」と、コンテンツ(内容)ではなく、コンテキスト(文脈)に翻訳するのです。

 

すると、営業、製造が同じ目線で、同じ方向性を考える場が出来上がっていきます。

 

やはり、ここでもリーダーの役割が必要。

営業のフィードバックの品質管理は、共有会議の「存在意義」に関わっていますから、売れる、売れないといった視野狭窄な会議に陥ることのないように、注意して運営することがポイントとなります。

 

 

3. 迅速かつ効率的かつ的確な「ものづくり体制」の構築(テストセールス体制など製販一体運営)

 

顧客の課題を解決する「モノレベルでのアイディア」には、何通りものアプローチがあるはずです。

 

その中で開発・製造が選択した「誰かが困ったことを自社の技術や商品を通じて解決すること」の回答が、世の中に受け入れられるか否かは、構想段階でもテストすることができます。

 

私のクライアントの中には、開発前にあたかも製品があるかのごとく「チラシ」を作って、営業に行っています。

「半年後に完成予定なんです。今なら、柔軟に御社のニーズも吸収できるかも知れませんので、事前注文もらえませんか?」と。

 

これで売れるか売れないのかの感覚を、それこそ共有しながら、営業と製造が一体となって進めていく。

 

・売れる商品の企画精度が高いので、ビジネス創造が的確になり、かつスピードが格段に早いこと

・製造での出戻りが少ないので、開発、製造、営業の動きが結果的に効率が良くなること

 

などの恩恵を受けることが出来ています。

 

 

以上、3つのファクターを守った「共有会議」は、時代を超えた企業の存在価値が生まれるので、社員の士気も必然的に上がっていきます。

 

御社は、製版一体の組織づくりに着目していますか?