「先週のコラムは衝撃的な内容でした。今まで当たり前だと思っていた「民主主義」ですが、コラムを読んで初めて自分の頭でちゃんと考えないと…と反省させられました」
2年ほど前、当社主催のセミナーにご参加いただいた社長から、先週のコラム「第507話 中小企業は、民主主義を排除せよ(https://www.j-ioc.com/wp2024/column/12263/)」を読んだ感想が送られてきました。
メールの中には、「新規事業の顧客開拓は、営業部に自ら方針を決めてほしい」と、指示を出していたものの、2年間鳴かず飛ばずの状態が続いている…と現状報告があり、藤冨が当時心配していた懸念が、現実となっていることが告白されていました。
当時、同社には、営業でかなりの実績を持った中途採用者が、鳴り物入りで営業部長として入社されたタイミングでした。
しかし、蓋を開けてみりゃ、成果はボロボロ。
「どうすれば、もっと新規開拓が進むのか…」
報告を求めても、なんだかんだと理由をつけて新規開拓ができない言い訳ばかりを延々としている…ことでした。
「なるほど、新規事業の新規顧客開拓は、民主主義でやっても進みはしない。私が営業方針と実施プランを明確に決定しなければいけませんね。その方針策定と実施プランの企画を、改めて藤冨先生にお手伝い頂きたい」と、同メールに綴れられていました。
間に合ってよかったです。
おそらく、この気づきを起点にして、同社の新規事業は成長軌道に向かっていきます。
同社の新規事業は、「ターゲット」と「顧客利益」そしてその利益を享受する「場面」が見事にクリアにされていました。
さらに、イノベーション普及学(ロジャーズ,E.M.【著】 産業能率大学出版部)で定義された新規事業が成功(商品が普及)するための5つの条件である①比較優位性 ②単純性 ③両立性 ④試用可能性 ⑤可視性全てがクリアされていました。
「商品の魅力」×「攻め込む市場」×「売り方」のチャンネルをしっかりと合わせて行けば、間違いなく「成功する商品」です。
逆にいうと、いくら成功する商品でも、3つのチャンネルが一つでもずれていると、残念ながら営業活動は不毛に終わりますので、一つ一つ丁寧に営業戦略を設計していかなくてはもったいないです。
今でも思い出しますが、イケる!と思った同社の新規事業ですが、2年前は嫌な予感を覚えました。
社長は、藤冨を招き入れて「新規事業の販路開拓を進めたい」と言っていましたが、営業部長がそれを拒否。
私との面談日の2週間後に、社長と一緒に「北海道にキャラバン営業に行く予定」だったのですが、その実行プランに藤冨がチャチャを入れたのが気に入らなかったようです。
チャチャ…と言っても、藤冨にとっては「アタリマエの指摘」でした。
と言うのも、ビックリすることに、その営業部長は「ノープラン」だったのです(汗)
まずは、北海道に行って、飛び込み営業をして「その反応を見て考えよう!」と言うものでした。
ん? 飛び込み?
ちょっと不思議に思って、聞きました。
「アポは取るのですか?」と。
すると、ビックリ回答をいけしゃあしゃあと言うのです。
「いえ、アポなんか取ったって意味ないですよ。まずは行って、その反応を見て、営業に何が必要かをその場その場で考えていくしかありません」と(汗)
同社の商材ターゲットから想定すると営業先は、1件1件の距離が離れています。
ましてや、北海道。
えらい移動時間がかかるのは、明白です。
しかも、決済権者がいる確率は、未知数です。
めちゃくちゃ無駄な営業活動をしようとしていたので、今すぐにエリア別に営業リストを作成して、電話でアポを取るべきです。
1日、2件でもアポが取れたら、アポ先の近隣を飛び込みすればいいじゃないですか?と…。
営業の超初歩的な考え方をベースに波及営業のエッセンスの取り入れ方をレクチャーしたのですが、彼は聞き入れず。
無策にも1週間ほどの飛び込み営業を敢行しに行ったようです。
「まぁ旅行がしたかったのでしょうね。公費で」と、思い、それ以上首を突っ込むのは辞めた経緯がありました。
それから2年。
嫌な予感は的中していました。
先週のコラムは「民主主義は民度に依存する」「言葉は悪いが、国民の頭が悪いと、間違った判断が下される」という宮台真司教授(社会学者/都立大学教授)の主張をベースに、専制主義のススメを展開しましたが、まさに冒頭の社長のお気づき通り。
宮台教授の言葉を借りて言葉は悪いのですが…
「営業企画力のない人間がいくら新規事業を推進しようと思っても、足踏み状態になるのは、目に見えているのです」
新規事業の立ち上げには、ものすごいエネルギーを使います。
最初から「チンタラと営業しているような姿勢」ではとてもじゃないですが、先行きは望めません。
自動車の走行で、最もエネルギーを使うのは、走り出した瞬間です。
スピードにのってしまえば、さほどアクセルを踏み込まなくても、高速を出し続けることができます。
新規事業も一緒です。
新規事業は、誰も走ったことがない悪路を走行するのです。
坂道かもしれないし、泥濘に入ってしまうかも知れません。
様々な不測事象に遭遇するわけです。
そこから抜け出す知恵とパワーそして、迅速な判断が必要なのです。
強いリーダーシップのもと、とにかく事業をスピードアップさせることが大事。
そこから、高速安定させるのは、社員の皆さんにお任せすれば良いのです。
彼らは、性質的にそれが得意なのですから、得意に集中させてあげるべきなのです。
御社は、新規事業のリーダーシップ選定を誤っていませんか?