とことん「本質追求」コラム第493話 差別化とは希少価値をつくることにある

 

「差別的優位性を高めて!って、ずっと指摘されていた意味がようやく腑に落ちました」

 

現在プロジェクト進行中のクライアント企業の社長さんから突然電話がかかってきました。

2回目のコンサルティングが終了し、なかなか前進しない状況だったのですが…

核心を掴んでもらえたようです。

 

わかったようでわからないまま進むよりも、スロースターターでも本質を掴んで走り出した方が急がば回れ…結果的に成果に結びつくスピードは早かった…そんなケースは幾度も経験してきました。

 

同社社長は、差別的優位性の本質を「希少性の創造」だと結論づけました。

 

まさにおっしゃる通りです。

 

伺えば、たまたまテレビニュースを見ていたときに、「景気が悪いし、経済成長もしていないのに、なぜ株が上がっているのか、その本質は。通貨の価値が下がっているからだ」という報道にビビッと感じたそうです。

 

株価が上がっているのは、コロナ感染が顕在化した昨年3月から、日銀が上場投資信託(ETF)の購入目標額を6兆円から12兆円に倍増させたのが大きな要因だと感じますが、通貨の価値が下がっているのも間違いのない事実。

 

原油が上がったとか、食料品が上がったとか、マスコミは報道していますが、物価が上がるというは、イコール「通貨の価値」が下がったためです。

 

日銀は、30年前のバブル崩壊から、金利を押し下げ、通貨発行量を増やし続けています。

お金がたくさん増えたわけですから、価値が下がる…。

希少性があるから、モノの価値が上がり、希少性がなくなれば、価値が下がるのは、至極当然の原理です。

 

お金もモノもシンプルに捉えれば、構造は全く同じです。

 

大量に同じようなモノが市中に出回れば、希少価値がなくなり、価値が下がります。

 

例えば、全く同じような機能の電子レンジであれば、どれを買っても一緒。

だったら、安い方が良い…と価格競争に陥ってしまいます。

 

しかし、明らかに違うモノだ!差別的優位性を打ち出せば、価格競争に陥ることなく、顧客から選んでもらえる存在になります。

 

例えば、普通の電子レンジは、食品に含まれる水分子をマイクロ波で振動させることで加熱しています。

従って、加熱をしすぎると、水分が蒸発して食品が硬くなってしまいます。

 

これは、電子レンジの構造です。

電子レンジの常識でもあります。

 

しかし、この常識を突破した商品があります。

 

シャープが開発した「ヘルシオ」です。

ヘルシオは、食品の中の水分を振動させることなく、300度以上に加熱した過熱水蒸気で食品を温めます。

中からではなく、外からのアプローチになります。

シャープは、これを「水で焼く」と表現しています。

 

この技術によって、顧客は、ぱさつかず、しっとり仕上がる料理を美味しく食べることができるようになりました。

 

さらに、加熱水蒸気で温めることで、食品内部の脂が落ちて減塩ができるというメリットも享受できます。

 

これまでの常識を覆して、新しい常識を創造した、秀逸な「差別的優位性」の誕生です。

 

 

これは、「新商品開発」で差別的優位性を打ち出したケースですが、「既存商品」でも「差別的優位性を明確に打ち出して売れ行きを伸ばす」こともできます。

 

例えば、陶器のダッチオーブンを作っている企業があります。

 

Staub、バーミキュラ、ル・クルーゼなどの鉄合金製(鋳鉄)と異なり「土」を主原料とした「無水調理鍋」です。

 

効用は、鋳鉄と比較して、遠赤外線が大量(95%以上)に出るため、食材の内部から温めることができ、美味しく仕上がるのが「差別的な優位性」とのこと。

 

しかし、差別的優位性は、見込客に「差」として認知され、興味を抱いてもらわなければ、優位性が確立されません。

 

そこで、Staub、バーミキュラ、ル・クルーゼなどの競合はどの程度遠赤外線が出ているのか、尋ねると70%程度は出ているとのこと。

それが95%に増えたことで、消費者は「違い」を知覚できるのか?

 

そもそも、食材が美味しく調理できる、という「美味しさ」は抽象的であり、個人差もあります。

 

Staub、バーミキュラ、ル・クルーゼなどよりも、美味しく仕上がりますよ、とセールスしたところで、見込客となる買い手は「本当かな?」「さほど変わらんだろう」「いや、今のままで十分だよ」

と、わざわざ名も知らぬメーカーの商品を手に取るようなことはしない人が大半です。

 

では、他に特徴はないか? と掘り下げてみると…

 

・陶器なので、焦げ付いたときに金タワシでゴシゴシ洗える

・シーズニング不要 (洗った後に乾燥させて油を塗って保管すること)

・空焚きOKなので、焼き芋や焼きとうもろこしが簡単にできる

 

などなど、他にも差別的優位性が出てきたのです。

 

繰り返しますが、差別的優位性とは希少性です。

 

「選ばれる無水調理鍋」として、何を打ち出せば、希少性を感じてもらえるか?

その希少性は、誰にとって一番メリットを感じ取れるのか?

そのメリットに気づくために、どのようなアプローチするのがベストか?

 

このブレイクスルーができて、初めて差別的優位性が確立され、営業や販売がスムーズにいき始めます。

 

御社は自社商品やサービスを販売する際、差別的優位性を極限まで突き詰めていますでしょうか?