「マーケティングと営業は、両輪…言われてみるとその通りだと思いました。組織図を早急に見直したいのですが、マーケティング部門の下に営業をつける方が良いですか?それとも反対の方が良いでしょうか?」
先週のコラムを読まれた読者さんから質問のメールを頂きました。
お返事は次回のコラムにてご回答しますので、少々お待ちください…。とお伝えしていたので、上記の質問にご回答したいと思います。
結論から言いますと、どちらが上でどちらが下か… という発想自体を変えなくてはいけません。
前回のコラムでも提言した通り、大企業の消費材メーカーでは「マーケが上、営業が下」という空気感が醸成されている企業が多いと感じていましたが、その空気感は百害あって一利なしです。
最大の問題点は、「顧客に焦点が当たっていない」ということです。
・この商品を喜んで買ってくれる「ターゲット」の属性は?
・この商品をもっと「認知」させるには、何をなすべきか?
・興味・関心を引き込むのは、営業マンの役割か、それとも何かの媒体?
・商談での受注確率を上げるポイントは何か?
・失注時の「売れない要因」をどう取り扱うべきか?
などなど、顧客と向き合うと様々な課題が浮かび上がってくるはずです。
これを誰が、どう取り組むのかを考えることが大事なこと。
組織図ありきで、後から機能を当てはめようと「適材適所」ができずに、組織の潜在能力を活かしきることができなくなってしまいます。
やるべき仕事があって、それを誰が、どの部署で対応するのか。
これを起点に体制を考えることで、顧客に向き合った組織が出来上がっていきます。
カタチも大事ですが、一番大事なのは、中身です。
これまで様々な業界や規模の企業と関与してきて、業績を躍進させている企業の共通点は、大方針(ビジョン)を社長がしっかりと明示した上で、その軸を中心にして、社員が現場と商品(技術)の最適化を図っている企業です。
ちょっと話が大きくなりますが、先日ZOOMの創業者である「エリック・S・ユアン氏」の講演会を聞く機会に恵まれました。
元々、ユアン氏は米国の大手コンピュータネットワーク機器開発会社であるシスコに勤めていました。
そこで経営陣に対してスマートフォンで使いやすい新たなビデオ会議システムを提案したのですが、あえなく却下。
ユアン氏は退職し、投資家を集めて自らのアイデアを事業化することに決めたそうです。
その会社が「Zoomビデオコミュニケーションズ」です。
ユアン氏の頭の中には、常に今の人々が生活や仕事をする上でクールでない行動を”問題”として捉え、その問題解決をどのような技術で解決すべきか? という思考が張り巡らされていました。
聞いているだけでワクワクしてきます。
ZOOMは、言うまでもなく「コミュニケーション・ツール」です。
しかし、外国人とのコミュニケーションには、言語という壁が立ちはだかります。
また、コミュニケーションはそもそも言語だけでありません。
オンラインの最大の弊害である「非言語コミュニケーション」は今のところ、リアルでしか感じ取ることが出来ません。
コミュニケーション心理学である「交流分析」には「裏面交流」という概念があります。
裏面交流とは、簡単にいうと「心の声」のこと。
例えば、「あの仕事どうなった?」と上司が部下に聞く際、心の声で「まだだったら手伝うぜ!」と思っている時と、「遅せーよ(怒)」と思って言っているときでは、受け手は全く別の印象を感じる現象を言います。
人は、「あの仕事どうなった?」という表面上の言語だけではなく、心の中にある非言語を読み取る力があるのです。(感じとる力の強弱やリーディングミスもありますが…)
この裏面交流は、リアルと比較するとオンラインでは感じ取りにくくなります。
オンラインとリアル…
まだまだコミュニケーションの質としては見劣りすると言わざるを得ません。
当然のことながらユアン氏は、その問題をチャンスと捉えています。
すでに、同時翻訳の機能をZOOMに実装する技術は確立されたそうです。
これで、外国人とのコミュニケーションもZOOMでなら、スムーズに出来る世界観が実現されます。
そして、五感に関しても研究開発が進んでいるとのこと。
そうなると
・レストランのサイトで「料理の匂い」を嗅いでみる
・ペットショップの犬や猫を遠隔で「撫でてみる」
・バーチャル旅行で、匂いや風など空気感を感じとる
など、ARやAIそして、感覚器を刺激するデバイスの開発が進めば、実現可能なことばかり。
ユアン氏も、「距離を感じさせない世界をつくる」という壮大なるビジョンを掲げていました。
おそらく、五感や第六感で感じとる「裏面交流」も今よりも感じ取れるオンライン・コミュニケーションツールが開発されるのは、もはや時間の問題でしょう。
ZOOMのスタッフも、そのビジョンに共感し、「距離を感じない世界」をどうやったら実現できるのか…
それぞれがテーマを掲げて、自らの能力を振り絞っているからこそ、ZOOMが着目され、私たち一般消費者からも支持されているのでしょう。
今では「オンライン・コミュニケーションシステム」のスタンダードになりつつあるZOOM。
巨人である「Google」のビデオ会議システム「meet」が驚くほど認知度が低いように、企業のブランドバリューよりも、事業そのもののブランドバリューが支持される世界になりつつあります。
大方針(ビジョン)を社長がしっかりと明示した上で、その軸を中心にして、社員が現場と商品(技術)の最適化を図っている企業の強さは、例外なく「顧客」を中心に組織が形成されています。
マーケティングと営業のどちらが上位組織になるべきか…
それが、どれほど不毛な議論なのかを気づかなければなりません。
顧客にとって、売り手の組織がどうであろうと知ったこっちゃありません。
私にとって、最高の体験を提供してくれさえすれば良いのです。
御社では、顧客を中心にした「組織」が形成されていますでしょうか?