とことん「本質追求」コラム第487話 業績向上策を考える総点検責任者は社長である

「9月7日のコラム“第485話 営業マンが新規営業をやりたくなる仕掛けづくりとは”を読んで営業部隊に対しての向き合い方に問題があることを自覚しました。

営業マンのモチベーションが上がるためにどうすれば良いか…具体策を考えたいと思います」

コラム購読歴7年だとおっしゃる読者の方からメッセージを頂きました。

藤冨の経験上、「本質と常に向き合う」社長が率いる会社は、どんな経済状態であろうとも底堅い経営をされています。

もちろん、今回のようなコロナの影響により一時的な業績ダウンに見舞われることもありますが、それでも根強いファン(顧客)や士気の高い社員に支えられれば、成長発展のエネルギーは、時をみて必ず爆発します。

 しかし、本質と向き合うことから逃避した企業は残念ながら良くて伸び悩み、最悪は消滅へと向かっていくでしょう。

例えば、業績を上げるために、真っ先に社員を叱咤激励する方策に着手する社長や経営幹部が率いる企業…

例外なく、良くて伸び悩み、最悪は消滅へと向かっていっています。

リーダーとしての責務に目を瞑り、業績低迷を社員のせいにしているのですから、いつまで経っても成長しないのは当然といえば当然です。

ドラッカー の教えの通り、事業の目的を「顧客の創造」と定義するのであれば、組織のリーダーこそ率先して顧客と真剣に向き合わなくてはいけません。

 

つまり業績向上策を考えるのは、営業マンの働きだけではなく、顧客を起点にして、あらゆる「接点」を総点検する必要があるのです。

顧客との接点の中心軸は、「売りモノ」です。
どんなにスキルの低い営業マンでも、「売れる物」なら簡単に売上を伸ばすことができます。

言ってしまえば当たり前のことですが、この「売り物」をどう磨くか? という企業努力を行なっているケースは、意外にも多くはありません。

・既存顧客に向けての新商品開発
・時代に合わせた既存商品の改良

など「顧客の立場」から自社の事業を見つめ直すことを定期的に行なっていますでしょうか?

定期的に行わないまでも、コロナをトリガーとした「次なる時代への突入」に向けて、未来顧客の立場に立って、自社の商品を見つめ直していますでしょうか?

新商品開発の必要性がない企業でもあっても、次なる時代の未来顧客にとって、既存商品の改良をし続けなければ、時代に取り残され売上は低減していきます。

物理的な改良をしないまでも、商品を見せる「切り口」を変えて、時代に適合させることも、顧客と向き合うことになります。

例えば「省力化システム」を販売している場合、好景気で人材を積極的に採用している企業が多い時代には「新入社員の即戦力化」を切り口にする。

逆に不況下で人員を抑制したい企業が多い時代には、「生産性向上による人員抑制」を切り口にするなど、時代に合わせた切り口でPRすることで、同じ商品(システム)であっても、市場の受け止め方は変わっていきます。

営業を叱咤激励する前に、会社として「いま市場が求めていること。自社の事業で市場の要求に答えられること」を俯瞰することからスタートした方が、結果的に見ても効率的です。

そして、その次に「売り方」→「売るための道具」→「 売る人の訓練」と優先順位をつけて対策を講じる必要があります。

順を追って簡単に解説していきます。 


「売り方」
伝統的な販売方法である「飛び込み営業」は、女性の社会進出による在宅率低下と連動して、営業効率が下がっていきました。

同様に「テレアポ」も、携帯電話の普及や振り込め詐欺、個人情報保護などの影響を受け、130年の歴史を持つ「電話帳(ハローページ)」が廃止され、事実上「白地のリスト」が営業マンの手元に入らなくなりました。

これは、法人営業も同様で、個人情報保護により、営業リストの入手が極めて困難に…。

まだまだ「やり方」によっては活路は見出せるものの、全体感としては「伝統的な営業方法」は極めて非効率的な見込客発掘アプローチとなりました。

DMも電子メールの台頭により、一件あたりの到達コストが相対的に上昇。

多くの事業者が電子メールをこぞって採用することで、受け手の消費者は「即ゴミ箱」に放り込み、効果が薄まっていきました。

そして、グーグルやヤフーの「検索広告(リスティング広告)」も2008年にFacebookが上陸してから、SNSが社会に浸透。

企業の売り文句よりも、消費者目線の発信に信用の軍配が上がり、今やSNS広告に企業の投資が移行しています。

時代と共に、消費者の接点(メデイア)は変わります。
そして、その接点(メデイア)の特性によって、PRの仕方が変わっていきます。
もちろん、業界によって、メディアとの相性もあります。

我が社の顧客(ターゲット)は誰か?
そのターゲットに到達しやすいメデイアは何?
メディアの特性上、PRはどうすべきか?

 

もはや営業部門の範疇を超えた「事業戦略」無くして、会社としてのセールスは仕掛けられません。

 

「売るための道具」
顧客の接点が変化すると共に、売るための道具も変わっていきます。
例えば「伝統的な営業手法」を見てみましょう。

  • テレアポ →道具→  トークスクリプト

  ↓

  • 商談   →道具→ アプローチブックや提案書、パンフレット

このように営業アクション毎に必要な道具があります。

 

次にSNS広告の一般的なモデルを紹介していきましょう。

  • SNS広告 →道具→  バナー画像

  ↓

  • 商品説明 →道具→ ホームページorLP、または動画

  ↓

  • 問い合わせ→道具→ チャットボットor郵送DMorステップメール 

  ↓

  • 受注活動 →道具→ 買い物かごまたはヒューマンタッチの営業に必要な注文書等

など、入り口が異なると、受注活動までの「導線」毎に必要な道具があり、その道具それぞれに「見込客のハートを掴んでいくコツ」が存在しています。

これも営業部門の範疇をはるかに超えていることがわかります。

 

そして、最後に「 売る人の訓練」がきます。

・どのような顧客欲求を充足させるための商品なのか?
・具体的などのような機能や性能を持って、顧客の欲求を満たすか?
・市場が我が社の商品に気付いてもらうための「接点」はどう作っているのか?
・興味関心を抱いた顧客に、どのようにして「購買」の必要性を感じてもらうか?
・その時の道具は、何か?

このお膳立てがあってこそ、初めて営業マンが動けるようになるのです。

そんなお膳立てが必要なのですか? それは営業マンの仕事ではないのですか?
という質問をされることもありますが、逆に伺うようにしています。

 

・営業マンに商品開発の権限を付与しているのですか?
・広告宣伝費の予算を与えているのですか?
・ホームページの企画制作権限、予算は与えていますか?
・チラシやパンフレットの企画制作権限や予算も与えているのですか?

と。
 

まず、与えている企業はありません。

 

業績向上策の最高責任者は、社長です。
全ての権限を持っているのも、社長です。
業績向上策を考える総点検責任者も社長です。
 

御社は、その本質から目を逸らしていませんか?