商品の差別化や販売手法の差別化は、私がコンサルティング活動をする中で絶対に避けては通らない道です。
差別化できていない企業は、顧客の立場から見たときに「選ぶ価値」がわからないので、たまたま買いたいタイミングにたまたま営業マンが来ないと購買行動には移してもらえません。
そんな偶然を狙っていては、安定した業績を上げ続けることなど出来るハズもないのです。
また、差別化が出来ていないと、営業マンは腕力勝負になりがちです。
決して、悪いことではありませんが、注意は必要です。
「動あれば、反動あり」
世の中の原理原則に当てはめると、「買わせた商品は、いずれ買いたくなくなる」という現実を直視すべきなのです。
本来あるべき営業戦略は「その商品を本当に求める市場に狙いを定めて、情報発信や提案活動を行い”それが欲しかった”と気づかせ、欲求を増幅させ、購買行動にスムーズに移してもらうための一連の活動を整備していくこと」です。
顧客の立場にたったとき、「その商品を私に売ってくれるのは御社しかないですね…」と感じてもらうことが、大切なのです。
だからこそ、競合他社との差別化が必須条件になるのですが…
これを単なる「アイディア出し」と勘違いしていると、大きく道を誤ります。
先週のコラムで「事業を成功させる3つのポイント…【三着】とは?」という記事を読んだ方から、「こんな着想をしたのですが売れると思いますか?」とご質問を頂きました。
残念ながら、お答え出来ませんでした。
なぜなら「着想」というは、いわゆる根っこの部分であり、決してそのまま「商品の売れる企画」(幹や枝葉)にはなりえないからです。
差別化に焦点を当てて考えていらっしゃったようなので、面白いアイディアだとは思いましたが、「奇をてらったアイディア」と言うのは、「正攻法」のフィルターにかけてみないと評価のしようがないのが実情なのです。
正攻法あっての奇策であり、奇策だけでは「競争」に打ち勝つことは出来ません。
もちろん自由な発想を否定する環境をつくっては絶対に行けませんので、アイディア出しはどんどんと行うことは大事です。
「それは、以前やったことがある…」
「それは、他社が失敗したアイディアだ」
「それは、ウチではムリだ」
「それは、そもそも成功するハズがない」
「それは…」
「それは、それは病」にかかると、将来成功するであろう「ブレイクスルーポイント」の芽を摘みとってしまう事になりますから。
従って…
- 正攻法であろうが、奇策であろうが、まずは自由な着想が生まれるような環境をつくる。
- 有効なアイディアが出たら「正攻法」で売るための道筋を作る。
- 「奇策」で競合に打ち勝つ戦略を打ち出す
という思考手順を踏むことが重要なのです。
具体的には、自由な発想から出たアイディアを正攻法に根ざしたフィルターでふるいに掛けていきます。
- 顧客の”要求”ではなく”欲求に根ざしているか?
- 競争相手との明確な差別化軸はあるか?
- 流通経路の環境変化を戦略に組み込めないか?
- 啓蒙コストを抑える手立ては確立されているか?
- どこの市場から、どのような策で、顧客をスイッチさせていくのか?
などなど、競争せずに利益を稼ぎだす戦略を企てる上で外してはいけない「質問」を投げかけ、アイディア(着想)を営業戦略、事業戦略へと昇華させていきます。
アイディアを評価してほしい! とのご相談にお答えしない理由は、ここにあります。
正攻法に根ざした活動をするための手順を踏まないと評価したくでも、できないのが現実なのです。
今後同じようなご質問を頂くことがあろうかと思い、本コラムでは私の仕事上での「アイディア」と「企画」の相違点を明確化しました。
決して意地悪や勿体つけているわけではないことをご理解頂きたいと思います。