『コロナ以降、営業マンの行動量が激減しています。業績も伸びていないのでフラストレーションが溜まってしまって…』
相次ぐ「緊急事態宣言」を受けて、せっかくホームページから問い合わせがきた見込み客からも「面会拒絶」をされるケースが多くなり、社長も営業マンもフラストレーションを抱えるケースを耳にすることが多くなってきました。
今週の金曜日から始まるオリンピックに合わせて、昨日から9月5日までの7週間を、官民挙げてテレワークに集中的に取り組む「テレワーク・デイズ」と定め、「出社自粛」を呼びかけていますから、さらに営業現場はやりにくい状況になるのは間違いありません。
オリンピックが終了しても、新型コロナ騒動が収束するかは分からず、月次の数字に追われる営業マンや経営者にとっては、胃がキリキリする思いでしょう。
せっかくの見込客が目の前にいるのに、得意の寝技ができない…
どうやったら面談にこぎ着けるだろうか…
悩みに悩んで出した答えは、「近所に行く用事があるので、会ってもらえませんか?」と言う無理くりアポイント作戦の徹底」なのですが…
どう思いますか?
と先日もご相談を受けたのですが、考えるまでもなく、即答しました。
「営業マンが、その視点で考えるのは真っ当です」
「しかし、経営者はもっと広い視座に立って現状を認識しないと、結果はでないでしょう」と。
例えば、腰が痛い時、患部にピップエレキバンなどの温熱治療具を貼るのは、間違ってはいませんし、やりたい気持ちも十分に分かります。
しかし、それはあくまでも対処療法にしか過ぎません。
その場しのぎであり、また翌日も、その翌日も「腰の痛み」に悩まされ続けなくてはならなくなります。
営業の課題もこれと一緒です。
現場の営業マンは、「面談できない=受注が取りにくい」だから、何とか面談にこぎ着けたい…。
そう対処療法的に「なんとか面談にこぎ着ける方法」を考えるのは、患部にピップエレキバンを貼るのと一緒の行為だと気づかなければなりません。
誤解しないで欲しいのですが、藤冨は、営業マンの思考を軽んじているわけではありません。
あくまでも「役割」のことを話しているだけです。
営業マンが限られた予算で、俯瞰的な視座を持って「売上を上げる」ことを考えられるはずがありません。
ホームページを改修して、見込客を発掘すれば良いのに… と営業マンが気づいても、それは自分の業務範囲外。
下手に口出ししても、自分の仕事が増えるだけか、却下されるかのいずれか…。
それが目に見えていれば、ダンマリを決め込むのが普通の神経の持ち主でしょう。
経営者からすれば「営業マンなのだから、もっと経営者感覚を持って欲しい」と思う気持ちもわからないでもありません。
しかし、そんな社員がいたら、間違いなくいずれは独立してしまいます。
一代で事業を築き上げた企業家なら、あなた自身もそうであったはずです。
経営者感覚を持っていたから、組織の中でも目立った成果を残して自信をつけ、独立したのではないでしょうか?
もし、優秀な社員がいて独立して欲しくないなら、それなりの高給を払って、役員に引き上げ運命共同体にするしかありません。
もちろん、ビジョンを共有し、心の絆を深めることが大前提です。
さすれば、社長の右腕として「俯瞰して売上を拡大する策」を考え、実行に移してくれるでしょう。
それができないのであれば、やはり社長が考える他ありません。
経営者の課題は、「どんな社会環境におかれようが、売上を獲得する仕組みを考えること」です。
営業マンと一緒に視野狭窄に陥ってしまえば、成果も限定的になってしまいます。
いつまで経っても、グルグルと同じ悩みに翻弄され、業績が上がらないのは「社員のせい」「社会のせい」と他責の念に陥ることでしょう。
何事も「根治思想」が大事です。
・コロナをキッカケに「移動の非生産性に気付いた人々」の増加
・働き方改革による「重要度の高い仕事への集中化」(不要不急の面談を嫌がる人達の増加)
・情報収集のネット依存度の高まり
などなど、見込み客が置かれた「環境」は変化しています。
「環境に変化」が起きれば、「意識や行動」に変化が出るのは当然です。
過去の成功体験に引きずられ、努力をすれば成果にはつながる!と考えるのは、言うまでもなくピントのずれた思考回路です。
もちろん、時代や人々の意識や行動様式が、急激に白から黒に変わることはありません。
「環境変化」によって、見込客の「意識や行動の変化」が起きるのは、グラデーションのように少しつづ変化をしていきます。
従って、これまでの努力は引き続き継続することも大事。
ただし、将来の変化を睨み、少しづつ「意識や行動の変化」に合わせた対策を打っていく必要があるのです。
今やインターネットでの見込客発掘は常識となっているのに、中小企業においては、まだまだ本気で取り組んでいるところは少数派です。
「そんなことはない!うちは力を入れている!」と力説する社長もいますが、藤冨は意地悪にもこう質問します。
「人件費、福利厚生費、交通費などの営業経費」と「インターネットで見込客を発掘するための経費」を比較すると、どちらが上ですか?と。
先端的で売り上げを急伸させている中小企業は、ほぼ「インターネットで見込客を発掘するための経費」が営業経費を上回っています。
クライアント企業さんの中には、営業部門の中にホームページ制作担当を配置した企業もありますが、その組織図を見るだけで「時代変化に適応させようとしている」本気度が伝わってきます。
ここまで書くと、藤冨は「営業部門」よりも「ネット対策」に力を入れるべき! と捉えられてしまうかも知れませんが、決してそうではありません。
「企業の資源や強み・弱み」「顧客の属性、思考、行動様式」「競争環境」「業界の慣行」などの前提が異なれば、根治の対策も当然ながら変わります。
藤冨がサラリーマンだった頃に仕えた社長は、典型的な朝令暮改タイプでした。
従業員たちは、いつも社長の指示命令に翻弄されるので、仕事が終わって酒場に行くと口々に陰口を叩いていました。
「社長って、言うことがコロコロ変わる。いい加減にして欲しい」と。
でも、私は、他の社員の陰口を聞いて、社長に代わってこう反論しました。
「前提が変われば、対策も変わるのは当然でしょ」と。
新しい前提条件が発見されたら、それに応じて、またゼロから思考する。
環境変化が激しい時代には、欠かせない思考回路です。
御社は、時代、人々の変化と、自社のとるべき対策を俯瞰的に捉えた上で、適切な意思決定が下されていますでしょうか?