とことん「本質追求」コラム第477話 人口減少時代の成長戦略

 

「藤冨さん、知ってました?2020年の国家の税収が大幅に増加したみたいですよ」

 

先日、意外な事実を酒席で聞き、耳を疑いました。

すぐにGoogleで検索してみると、なんと昨年度の税収は、60兆円超えで過去最高。

 

目の前では、飲食業やホテル業界など苦境に立たされている業界もありますが、巣篭もり需要の活性化で当初落ち込むとされていた「法人税」は、前年の4375億円増で11兆2346億円と、予想より3兆円以上上ぶれしたようです。

 

もっと興味深いのが消費税です。前年度より2兆6187億円多い20兆9714億円で過去最高となり、税収全体の34・5%を占め、税の種類別で初めて所得税を抜いて最大となったそう。

 

何が起きているのか?

おそらく、税金をまともに納めない企業が整理され、供給先が絞られた結果、堅実経営で税金を払っている企業に売上が集中し、納税額が上がったのでは?と考えられますが、何れにせよ政府は「この状態をよし!」と判断していることは間違いありません。

 

度重なる緊急事態宣言で、逆境に立たされる飲食店のニュースが連日流れており、経済的な苦境に立たされる人々が多いように感じられますが、全体感で見れば経済的な打撃は限定的。

 

コロナ対策で失策を繰り返す政府を無能扱いする有識者が多いですが、政府から見れば、コロナ様様。

こんな美味しい棚ボタは滅多にないのですから、一見すると失策を繰り返しているように見える「対策」も、ある意味「意図的なのでは?」と感じざるを得ません。

 

税金を払わない赤字会社の整理…。

さらに、都市伝説的に言われている「人口削減計画」も、もしや本当なのかも…と感じてしまうくらい冷徹な政策が見え隠れしています。

 

ただでさえ2008年をピークに総人口が減少に転じています。

総務省は、2050年には日本の総人口は1億人を下回ると予測していますが、ビジネスの観点からすると、需要の減退に直結する現実なだけに、経営者の意識もチャンネルを切り替える必要があります。

 

もちろん、マクロ的な動きが中小企業に与える影響は限定的です。

しかし、社会の流れに歩調を合わせることは大事です。

運を味方につけるには、流れに乗ることが鉄則だからです。

 

では、人口減少によって、限られた需要の中で売り上げを最大限に引き上げるにはどのようなことに意識を向ければ良いのか。

 

その答えは「LTV(Life Time Value ライフタイムバリュー)」という概念にあります。

 

LTVとは、ある顧客から生涯に渡って得られる利益のことを言います。

日本語に訳すと「顧客生涯価値」と言われてますが、簡単にいうと「既存顧客との繋がり強化」を通じて顧客ロイヤルティ(ブランドや商品への愛着・信頼感)を向上させ、持続的な収益確保をはかる戦略のこと。

 

 

新規顧客を獲得したら、アップセル(上位機種への買い換え販売)やクロスセル(関連商品の販売)を行うのですが、この戦略を成功させるためには「誰のために、どのように貢献するのか?」を追求することが大切です。

 

日本アイ・オー・シーでも、社外報による固定客とのつながり強化策を推奨していますが、追加販売を促す下地づくりが大切だと考えているためです。

顧客は、商品を通じて何かしらを実現させたいわけですから、その世界観を共有することが必要です。

 

▼社外報制作サービス▼

http://www.branding-press.jp/

 

 

・売り手と買い手

・会社と顧客

という従来の関係性ではなく、世界観を共有する仲間と捉えることで、ぐんと商売がやりやすくなるでしょう。

 

 

その実現に向けての最初の一歩は「コンセプト思考」になること。

 

お客様は、我が社の商品やサービスを通じて、どのような「満足」を得ているのだろうか。

お客様は、我が社の商品やサービスを利用する際、何か満たされていないものはないだろうか?より良い満足の追求には何が必要だろうか。

 

とてもシンプルな「問い」ですが、これをどこまで追求できるか? 

この追求力が商売の強さに直結していきます。

 

具体的な事例を取り上げて「追求力」を体感してみましょう。

 

例えば、カップラーメンを作る製造業者をイメージしてください。

 

彼らの顧客は、カップラメーンを通じてどのような満足を得ていますか?

 

美味しいラーメンを食べる満足感?

 

それだけでは、何の追求にもなっていません。

 

他に、考えられますか?

あなたも、カップラーメンの「作り手」になったつもりで、考えてみてください。

 

「カップラーメンを通じてお客様はどのような満足を得ていますか?」

また

「カップラーメンでは満たされない何かを欲しているでしょうか?」

 

 

思考のコツは、「誰にとって」「どのような場面で」を考えることです。

 

学生やお金のない若手サラリーマンが昼食や夕食に食べるカップラーメンは、「安くてお腹いっぱいになって、調理の手間もいらない食事」に満足を得ているはずです。

 

経営者は、この「満足度の追求」をすることで上述のLTV(ライフタイムバリュー)を高めていくことができます。

 

既存顧客は、他の代替案(食事)よりも相対的に「コスパの良い食事」「調理の手間も時間もセーブできる食事」について満足感を得ているわけです。

 

場面は、おそらく「昼」と「夜」または「夜食」くらいでしょうか。

 

ここに「朝」という新しい場面設定を持ってくると、既存顧客の満たされていない欲求に気づかされるはずです。

 

朝にカップラーメン?と気持ち悪くなるかも知れませんが、そう感じられた方は、まだまだ思考回路が「商品思考」です。

 

コンセプト思考で考えれば、別に「ラーメン」でなくても良いわけです。

同じような「概念」で捉えられる「商品」に置き換えれば良いだけです。

 

例えば、カップラーメン各社が出している「春雨スープ」などの食事系スープ商品群は、まさに「朝」の場面にもぴったりです。

 

今回は誰でもイメージしやすい事例を取り上げましたが…

 

LTVは、一般的に「平均顧客単価 × 平均購買頻度 × 平均継続期間」の計算式で導き出されます。

 

つまり、一人の顧客に対して

 

どのように単価を引き上げるか(サブメニューや高単価ラインナップの開発など)

どれだけ購買頻度を上げるか(利用場面の拡大)

いかに取引を継続させるか(既存商品のブラッシュアップや、継続的なコミュニケーション)

 

を追求することで、LTVを引き上げることができます。

そして、誤解を恐れずに言えば、LTVを引き上げる政策を徹底することは、ブランディング活動そのものを行っているということになります。

 

御社は、LTVを意識した経営戦略を実践していますか?