「おい、新商品の反応はどうだった?」
「あっ、スミマセン、説明してくるのを忘れていました…」
どうして、ウチの営業はこうも不器用なんだ。
既存商品を売りながらでも、雑談の時とか、契約をもらった後に新商品の説明をすれば、効率的に販売できるのに…。
何かいい方法はないですかね?
ここ最近、経営陣の方からよく受ける相談の内容です。
新商品や新規事業の立ち上げの際、既存の体制のまま離陸させようとしてしまうケースですが、正直いって、上手く言っている会社は見受けられません。
適当に売れればいいや…的な商品であれば「ついで販売」でも構わないのですが、これが社運をかけた商品とあれば、別の話です。
どのような商品にも必ず寿命があります。
既存商品や既存の事業が、いつ利益を稼げなくなるか分かりません。
市場はいきものです。
需要が旺盛になった市場には、ハイエナのごとくライバル企業が登場し、苛烈な競争を強いられます。
商売は「差」で成り立ちますから、最初は「商品差別化競争」に突入しますが、知恵が尽きると、価格で「差」をつける事業者が現れてきます。
「価格競争」に突入した市場では利幅は着実に減少していく…
今の時代、多くの業界で見受けられる光景です。
そのような中、会社の屋台骨を支える「次なる事業の柱」をつくるべく新商品や新規事業を立ち上げるわけですが、新規事業の成功確率は、一般的に「センミツ」と言われ、1,000個の商品やサービスを出しても成功するのは3つくらい…と言った厳しい現実に晒されています。
しかし、本当でしょうか?
本当に新商品や新規事業の成功確率は、そんなに低確率なのでしょうか?
少なくても、本気で勝負を賭けた…、社運を賭けて勝負をした商品で、センミツと言う悲惨な結果が出るはずもありません。
センミツという状況を生みだす原因は、「売れない恐怖」から「保険」を賭け、まだまだ本気度が足りないからに過ぎない…と感じるケースが多々あるのも事実です。
決して、根性論を言っているのではありません。
事業を成長軌道に乗せるための正しい道筋のお話をしているのです。
そもそも社運を賭けて次なる事業の柱を育てようとするとき、他社のモノマネ商品であるはずがありません。
自社の柱となるような商品は、常に独創的な商品やサービスである事が大前提です。
独創的であるがゆえに、市場も新しく作り出して行かなければなりません。
社運を賭けた商品を「どのようなメッセージで訴えかければ需要が喚起できるか…」
「どの媒体が適切なのか」
「どのようなメッセージを発信すれば良いのか」
「どのような活動をすれば我が社の提供する価値を最も理解してくれる市場にリーチできるのか…」
あらゆるアイディアを出しながら、テストを重ねて、最も反応する「成功ポイント」を探しだす必要があるのです。
何度もテストが出来るように「お金をかけない方法論」を編み出し、「迅速に答えを導き出せる手法」のみに特化して、成功するであろう仮説を市場に何度もぶつけていくことが、突破口をこじ開ける最大のポイントとなるのです。
これには尋常でないほどの「集中力」が要求されます。
成功するまで思考を止めない「諦めない力」も要求されます。
冒頭に書いた「新商品の説明を忘れてしまった営業マン」は、怠慢でも能力不足でもありません。
逆です。今この商品を売ることに「集中」しているから、新商品の説明を忘れてしまうのです。
これまで多くのトップセールスマンを見てきましたが、売れる人ほど一つの商談で一つの商品を売ることに集中しています。
決して、あれもこれも売り込もうとはしません。
自分もお客さんも「思考が分散すること」を知っているためです。
「これを売るぞ!」と覚悟を決めたら、保険をかけないことが大事です。
- 専任営業マンと専門部署を独立させて背水の陣をひく。
- 大幅に権限を与えて、自由にテスト出来る環境を整備する。
- 遊びの要素を取り込み、発想の幅を意図的に拡げていく。
集中できる環境を整え、「水の一滴 岩をも砕く」の精神で、事に当たれば1,000に3つなんて悲惨な成功確率であるはずがありません。
クライアントの社長さんで「人生で一度も諦めた事がない」という熟練経営者の方がいます。
何年も思い通りに立ち上がらずご苦労された事業の立ち上げをお手伝いしたのですが、成功に焦点を当てた集中力は尋常ではありませんでした。
その社長に「なぜ私をコンサルタントとしてプロジェクトに入れたのですか?」と聞いたら、「しつこそうだから…」と答えが返ってきました。
「社長ほどではありませんが…」とお答えすると、社内が爆笑の渦に包まれましたが…
事業を成功させるには「集中力」と「諦めない力」そして…ちょっとのセンスが必要であることは間違いありません。
保険を賭けずに、一点突破。
まずは、その環境づくりが成功の第一歩となります。