先日の定期的に訪問している会社の社長さんから「同業他社と同じ価格帯にしないと売れない…」と現場から突かれている。値下げ販売すべきかどうか…とご相談を受けました。
そこでスグに営業部長を呼んで頂き、同業他者と同じようにやったら、確実に売れるのですか? このタイミングで価格を下げるという事は会社の姿勢を崩すことになります。
二度と後戻りはできませんが、覚悟が出来ていての発言ですか?と詰め寄りました。
ライバル会社と同じような戦術を採用するということは「特徴」がなくなる…という事です。
同業他者との差がなくなることは、埋もれてしまうことを意味します。
埋もれてしまうと、買い手から見た時に「その商品を買う理由がなくなる」事も意味します。
商品力で「買う理由」がなくなれば、営業マンは腕力勝負で「買う理由」を作らなくてはなりません。 (これが営業マンの成績格差の根源になります)
なるべく角が立たないように…と真意を伝えるべくトツトツと説明していくと、ようやく事の重大さに気がついてくれたようです。
その場で「価格競争」への突入宣言を撤回して「では高いままどうヤレば売れるのか?」という前向きな議論が始まりました。
価格が高いのも、ある条件が満たせれば「強み」に変換できます。
- 価格が高い事で富裕層に対してステイタスを刺激できるかも知れない…。
- 別の市場に持って行ったら、間接競合の商品よりもお買い得感があるかも知れない…
- 顧客の注意が一瞬で引きつけられる為、こだわり層にしっかりと魅力を伝達できるか も知れない…。
高い価格設定ができるということは、それだけの価値があると言うこと。
価値がトガッていればいるほど「可能性」を見出すキッカケが掴めます。
営業の現場というのは、自分たちが売りやすい環境に持って行きがちです。
もちろん数字責任を背負っているから、アタリマエと言えばアタリマエです。
しかし、営業予算が短期思考であるがゆえに、その売りやすい環境というのも「近視眼的」になりがちです。
短期的な視点を無視しろ!という事ではなりません。
中長期的な視点を入れて「可能性とリスク」を計算しない事に問題があるのです。
では、一体どうやって計算するのか?
それには、モノゴトを構造で捉えることがポイントとなります。
構造を理解しようと論理的に営業戦略を組み立てて行く中で、漏れや抜け、はたまた補強する箇所が見えてくるためです。
高価格帯の商品を鮮明に打ち出す→顧客は何故高いのか気になる→こだわりの原材料、製造工程、アフターフォローなどセールスポイントを魅力的に伝える→購買意欲が喚起される→妥協のない商品だから”買ってよかった!”と好評価を得る→リピートや口コミが発生しやすくなる…
このように構造をしっかりと言語化することで…
- アッパラインの価格層をもう一ランク足してみようか? とか。
- 価格で引きつけた後、どのようなキャッチコピーや営業の第一声で引きこむか?
とか。
- こだわりを魅力的に伝えるにはどうすれば良いか? とか。
- 使用時の満足度をより高める工夫はないか? とか。
- リピートを促す仕組みは構築できないか? とか。
- 口コミを意図的に発生させるようなツールは制作できないか?…
などと、具体的なアイディアを打ち出していく「ベース」が出来上がってきます。
この1つ1つが、顧客にとっての価値となります。
そして、ライバル会社に見えなくすることで参入障壁ともなり得るのです。
この一件で、社長は元々持っていたポリシーが堅持できたので、ホッと胸をなでおろしていましたが、企業はピンチに立たされた時の対応で、その会社の未来が決定されていきます。
丹田(腹)に力を入れて、ポリシーを貫くか。
それとも惰性に流されるか…。
運命の分かれ道に立った時には、直感で決めるのも構いませんが、成長するシナリオの構造を見抜く視点を入れると成功確率がグッと上がることは間違いありません。