とことん「本質追求」コラム第71話 苛烈な価格競争からの脱却方法

競争が激しい市場で戦っていると、必然的に利益率が低下していきます。 
広告費への投入。営業部隊の強化コスト。値引き合戦…。

また全く新しい新商品であっても利益を稼ぐのはカンタンではありません。 
値引き合戦による粗利益の下落はないにせよ、広告や営業コストが高い状態になるのは免れないためです。

釈迦に説法ですが、会社は売上至上主義では必ず行き詰まります。 
利益があってこそ、新たな成長戦略が描けるのです。 

言い方を変えると、利益率の悪い状態を黙認する行為は、成長を断念している行為とさえ言えるのです。

従って、何が何でも、粗利の高い事業を育成する必要があります。

「そんな事は百も承知だ。こんなにモノが売りにくい状態で、一体どうやって利益率を高めれば良いのか?」

と言う声が聞こえてきそうなので、ズバリお応えしたいと思います。

粗利を高める売り方には、3つの方向性で考える事ができます。

一つ目は、売り先を変える。 
二つ目は、新商品を発売する。 
三つ目は、既存商品の売り方を変える。

この3つしかありません。

 

先日、お手伝いしている企業さんと雑談していた時の事です。 
以前、まったく取引した事がない業界から問い合わせがあり「こんな使い方はできないか?」と相談がありました。 
早速商談をしてみると全く問題なく運用できることがわかったので、購入してもらった事があったのです…と。 
私は、この話を聞き、思わず身を乗り出して、突っ込みました。

「導入前はどんな商品を使う前は、何を使っていたんでしょうか?」 
「何も使っていなかったとしたら、どんな工夫をしていたのでしょうか?」 
「なぜウチの商品を購入しようと考えたのでしょうか?」 
「購買に至る決定打は何だったのでしょうか?」 
…などなど、矢継ぎ早に質問しました。

しかし、担当者からは、的の得た返事は帰ってきませんでした。

「当社商品が売れている明確な理由」が分かれば、横展開させて売上の早期拡大が見込めるのに…

しかも、ファーストユーザーは、とある業界で売上高トップ(数兆円企業)を誇る企業。

このミラクルな受注に成功しているのに、これではもったいない。

そこで、取材と称してクライアントさんと共に、クライアントさんのクラアントの所に訪問し、その業界で「横展開できる材料」を探しにヒアリングをすることにしました。

するとなんと…。

その業界における「生産性向上のキモの部分」に同社の商品がズバリ貢献しており、かつ以前は、3倍~5倍も高い商品で運用していたとの事。

クライアントさんにとっては、定価販売しているのに、そのクライアントさんは、安いという。

利益がたっぷりと取れる市場なのに、顧客は定価で喜んで購入してくれていたのです。

価格とは、価値をお金に変換したものです。 
価値には、絶対的価値と相対的価値があります。

絶対的価値は、商品そのものから受け取る価値。 
相対的価値とは、代替商品や競合商品と比較して受け取る価値のことです。

クライアントさんが提供する商品の「絶対的価値」を認め、かつ代替商品や競合商品と比較した「相対的価値」にも軍配が上がれば、顧客は、その対価である「価格」を正当に評価してくれるものなのです。

同社の営業担当の方も、なんとなくは分かっていたのですが、その業界にどのように新規開拓を進めていけば良いのか…が分からぬまま、2年も放置されている状態でした。

 

同社の経営課題は、「競争まみれで価格競争になった市場からの脱却」です。 
つまり粗利の高い事業を創造するプロジェクトが進んでいました。

私がお手伝いしたのは「新商品のテコ入れ」だったのですが、粗利を高める王道戦略としての「売り先を変える」という選択肢にも、大きなチャンスが眠っていたのです。

 

よく「成長戦略の基本は既存顧客に新商品を販売することです」「顧客台帳は企業の資産です」などと、偏った主張やアドバイスを受けて、多額の開発費をかけて新商品を開発したり、既存顧客に押し売りして営業マンが疲弊しているケースを見受けますが、注意が必要です。

確かに「顧客台帳」は資産です。

しかし、「価値を提供することが商売の基本である」という大前提にたてば、一つの方向性だけで考えず、あらゆる選択肢を広げて「成長路線」を考える必要があります。

  • 自社の提供する価値をありがたく受け取ってくれる新しい市場はないのか? 
  • 既存商品に他のサービスを抱き合わせたり、価値の見方を変えて新しい売り方はできないのか?

今一度「プロジェクトの総コスト」と「立ち上がり期間」そして「見込める売上や利益」などを総合的に鑑みながら、本当に取り組むべき「成長戦略」を選択することが大切です。