とことん「本質追求」コラム第63話 個人の能力に依存しない営業体制の出発点づくり

世の中には、売れる匂いがプンプンする商品と、死臭漂う商品があります。 
不思議な事に私がご相談を受ける商品は、そのどちらでもありません。

いえ厳密に言うと、最初はよくわからないけど、社長や幹部から話を聞き、ネットや専門書などで調査をすればするほど、売れる匂いがしてくるというのが正解です。

大多数の経営者や事業責任者は、私が競合相手の事を深く掘り下げて質問すると、意気揚々と自社の優位性について語りはじめます。

お手伝いしている企業は、業界内での有力企業であることが多いため、その差別化は徹底されています。

「スゴい!」と感嘆してしまうことも、しばしばあります。

ところが、何故かそれだけでは「売れる匂い」がしてきません。 
お手伝いしてきた会社は「鶏卵農家」「着物屋」から「IT企業」「素材メーカー」「機器製造業」など様々です。 
業界を知らないがゆえに「競争相手」の話を聞いてもよくわかりません。 
でも、それだけではないのです。

売れる匂いがしてこないのは、顧客のその商品を喜んで買う姿が見えてこないのです。

もちろん、皆さん「顧客の事」は分かっているつもりです。 
しかし勝とう!勝とう!という意識が強くなりすぎると、どうしても盲目的になるのが人間です。 
慣れている勝負事なら冷静さを身につけることができますが、新商品や新規事業の場合はこの傾向は強くなります。

そうなると、販売の現場ではどうなるか…。

説得販売に走ってしまうのです。

「これだけ競合とは差別化しています。いいでしょ。スゴいでしょ」と一生懸命説得し始めます。

稀に、営業する側とされる側の相性がバッチリ合って”商品云々の世界ではなく”受注が決まったりすることもあるでしょう。 
また、説得上手な営業マンであれば、ソコソコの数字をコンスタントに作ってくるかも知れません。

だけど残念ながら、組織的な販売には至らないため事業として育つ事はありません。

理由は単純。説得販売できる人材は、そうそうはいないからです。

 

カスタマー・コンペディター分析図その1

 

しかし、競合相手から発信されている情報を吟味し、社長や経営幹部が何故その商品を作ったのか…どのような価値を提供したかったのか…という「想い」が分かると、途端に「顧客の姿」がモヤモヤ…と浮き彫りになってきます。

これが「売れる匂い」の正体です。

そして「売れる匂い」から実際の「販売」へと具現化させて行くには、適切な顧客に、適切なメッセージを投げればなりません。

 

事業として、育っていない商品は、このモヤモヤ感から脱することが出来ず、的確な顧客がモヤモヤ…的確なメッセージもモヤモヤ…としている状態です。

これがクリアになれば、実際に売れ始めます。 
「顧客の欲求とマッチした商品であれば、当然ながら購買欲求が芽生えます。そして競合相手との明確な差別化がされていれば、さらにその欲求は高まります」

すると、納得して購買してくれるステージまでに引き上げられるので、さほど属人的要素の強いコミュニケーション能力に頼らなくても売れるようになります。

営業は、自社商品が提供しうる価値で、顧客の欲求を満たす事が出来る事を理解してもらうことが最大の関所となります。

カスタマー・コンペディター分析図その2

従って、営業マン全員が 
「お客さんが何故当社の商品を買うのか?」 
「競合他社よりも自信を持ってオススメ出来るポイントは何か?」 
この2つのポイントを抑えることが肝要なのです。

商品の差別化ポイントだけを理解するのではなく、顧客の欲求と重ねあわせて、 
「だからお客さんは買うのだ…」という、この1点を一人ひとりの営業マンに十二分に理解させてください。

すると、商品だけでなく、会社全体に「売れる匂い」が漂ってくるようになります。 
そうなったらシメたもの! 
事業は、ゴソッと音を立てて動き始めていくのです…。