とことん「本質追求」コラム第444話 組織に「真の情熱」を灯すには

「この間のコラム”売れる企画を絞り出す為には時間と情熱を注げ”は、グサッときました。やはり、情熱がないと、新規事業って立ち上がらないですよね」

先週、クライアント企業の社長とランチをご一緒した時に、2年ほど前に失敗した新規事業を振り返って、同時の出来事のお話を聞かせてもらいました。

イケると思っていた新規事業だったようですが、売上が思うように伸びず途中で断念。
それなりの投資をしたのですが、このままズルズル延命する方が手痛いことになる…と感じ撤退したとのことでした。

昨年の秋に、いわゆる損切りをしたわけですが…

コロナを機に、本業が行き詰まり、明るい未来を描きにくくなった今、改めて仕切り直そう!と覚悟を決めたそうです。

藤冨を伴走者として選んで頂いたので、当時の話を詳しく伺いました。
社長ご自身が既に失敗の主因を自覚されていらっしゃいましたが、要するに「情熱」が出なかった!との一言に尽きた結果だったのです。

これは致し方ありません。
情熱が湧き出ない事業が成功するなんて、極めて稀なこと。
情熱こそが、事業推進の原動力となるからです。

最高速度490kmを叩き出した世界一早い車と言われる「ブガッティ シロン スーパースポーツ 300+」であっても、ガソリンがないとピクリとも動き出しません。
どんなに優れたスポーツカーでもエネルギー源である「ガソリン」は必要不可欠。

事業も一緒です。
どんなに優れたビジネスプランであっても、エネルギー(情熱)がなければ、成功に向けて走り出すことはできないからです。

この事業を推進するエネルギーとなる「情熱」は、ガソリンのように買うことができません。
つまり外部からの調達は困難であるということ。

情熱は、内部から湧き起こります。

使命感であったり、大義であったり…
自らが描く理想郷と現実との落差に憤りを感じ、「私が変えねば!」と沸沸と内面から出るエネルギーが、情熱の源泉になります。

心理学で「内発的動機付け」と言われるものです。

この内発的動機付けから、生み出された「事業の卵」は、使命感や大義に燃えれば燃えるほど、事業推進力は強化されていきます。

しかし、もともと使命感や大義がなかったり、薄かったりすれば、比例して事業推進力は弱体化していきます。
結果、販売不振に陥り、頓挫することにつながっていくのです。

損切りできれば、損切りしても良いでしょう。
でも、窮地に立たされ、何としてでもその事業を立ち上げないといけない場合は、撤退さえ許されません。

そんな時は、強制的に「情熱」に火をつける方法があります。

「情熱の源泉」が湧き出る環境を整えるのです。
どうやってやるか?
私が思いつくのはただ一つ。

仲間や伴走者を見つけて「目標」を共有し、その目標達成に向けて盛り上がていくことです。

主体となる人の「使命感」や「大義」が薄くとも、「ビジョンや目標」を伝えた仲間や伴走者も共感してくれば、主体者の使命感や大義も強化されていきます。

盛り上がれば盛り上がるほど、主体者と仲間や伴走者がシンクロし始め、情熱の火種が大きくなっていきます。

ただ、この段階では、まだまだ「偽の情熱」です。

真の情熱を駆り立てるためには、火種を着火させる必要があります。

着火させるには、3つのプロセスがあると私は考えます。

一つ目は、未来への階段を見つけること。
二つ目は、走り出す勇気を持つこと。
三つ目は、実際に全力で走り出すことです。

順を追って、説明します。

一つ目は、未来への階段を見つけること。

事業には、達成すべき目標があります。
その目標は、顧客からの評価であったり、結果としての売上高であったり、シェアであったりします。

その目標をいかに達成するか。
その道筋がクリアに見えてこないと、暗中模索しながら事業を推進していかなくてはなりません。
暗闇で壁にぶつかり、なかなか未来への兆しが見えてこないと、少しづつ力が奪われていきます。
力が奪われると、情熱の源泉を疑い始めます。
「あの情熱は、勘違いだったかな?」と。

せっかく情熱の火種ができても、水を差されてしまっては一貫の終わり。
情熱が発動する前に頓挫してしまいます。

したがって、暗中模索しながら目標に向かうのではなく、目標に向う階段を見つけることが大切。
ゴールから逆算して「なすべき仕事」を列挙し、一つ一つこなしていくのです。
その一つ一つをこなしていく過程で、小さな成功体験を作り出し「出来る!」という自信を強化させていくのです。

私が伴走者としてご一緒する時、まず初めに「使命感や大義が生まれるような目標」を共有します。
そして、そのゴールから逆算して「なすべき仕事」を列挙し、目標を達成するための「階段」を明確にしていくのです。

クライアントさんは、この「階段」が見えてくると、突然「やる気」がわき起こってきます。
中には居てもたっても居られなくなり、早く「階段」を登り始めたくて仕方なくなります。

しかし、組織活動で事業を推進していく際、ここで焦りは禁物です。
社長だけが先走って「階段」を登り始めると、社員は唖然としてついてこれなくなってしまうからです。

社員と一緒に階段を登らないと、結果的にまた情熱の火種は消えてしまいます。
しっかりと社員の認識の状態を観察して、階段を登れる状態になっているかの把握をしてから「階段」…つまりなすべき仕事を一つ、一つこなしていくことが大切です。

二つ目は、走り出す勇気を持つこと。

特に「社員」と一緒に階段を登る際には、登り続ける「勇気」を持たせることが大切です。
そのためには、「なすべき仕事」一つ一つに対して「私にも出来るかも!」と思ってもらう必要があります。

そのためには、具体的な青写真を描くことです。
抽象的ではいけません。
具体的に仕事に落とし込む必要があります。

「営業リストを取りましょう」ではダメ。

「我が社のターゲットは、●●業界。銀座に業界団体の事務所がある。そこに行って我々の事業計画を提出して、会員一覧の入手を試みよう。そして会員一覧が入手できたら、オンライン事業説明会のYouTubeを見てもらおう」

「そのためには、まずオンライン事業説明会の撮影だな」
「次に、その説明会を見てもらうための”案内状”を作成しよう」
「リストの入手と、DMラベルの発行も同時並行で進めよう」

と一つ、一つの階段を明示して「その階段なら登れる!!!」と一歩踏み出す勇気を持ってもらうことが大切です。

そして、最後の三つ目は、実際に全力で走り出すこと。

登れる!とわかったら、がむしゃらに動き出す必要があります。

経験上強く感じることは、そもそも「情熱」ってものは、動き出さないと燃えてこないものだと思うのです。
動く前の情熱は「偽りの情熱」

そして、動き出して、目標達成の階段を登っていけばいくほど、情熱は燃えたり「真の情熱」に昇華していくのです。

「御社は、真の情熱の火を灯すために、神経を行き届かせていますでしょうか?』