とことん「本質追求」コラム第442話 見込客の要求に対する正しい判断基準とは

 

 

「受注確度の高い見込客から商品の改良要求がきました。しかし追加投資が必要になるのでどうしたものかと…。こんな内容なのですが、どう思われますか?」 

 

先日、新商品を上市したばかりの社長から相談メールが舞い込みました。 

 

金型から作り直す必要があるので、追加投資が重たい割に、他の見込客にも通用する改良要求なのか想定がつかずに考えあぐねている様子でした。 

 

藤冨もIT企業のサラリーマン時代に営業管理職をしていたので、様々な顧客からの要求を受けてきました。 

 

受け入れるべきか、それとも交渉して諦めてもらうのか…。 

諦めてもらう交渉をした際、失注したらどうしようか…。 

失注して、部下が可哀想だな…。 

などなど、頭を抱えていました。 

 

しかし、ある時からブレない判断基準を設けて社内に説明できるようになってから、社内外に的確な方針を打ち出せるようになったのです。 

 

その判断基準は、「上方展開」という思考法で、「顧客の効用に変換できるか否か」を追求していくものです。

自社のターゲット層全般に通ずる利益、メリット、効用があれば受け入れる。

他のお客様の効用にはなりにくいな…と判断したら、受け入れないという判断軸を持つのです。 

 

上方展開とは「それは何のために?」と問いていくものです。 

例えば、「この色は気に入らない。黄色にしてほしい」という見込客がいたとしましょう。 

 

「黄色に変えたい」それは何のために?と問うわけです。 

 

「黄色にすることで注意を促したい」 

それは何のために? 

「注意を促して怪我を防止したい」 

 

なるほど、怪我防止のために、目立つ色にして黄色にしたいのか…。

それなら他の見込客のメリットにもつながるな…と判断できるわけです。 

 

しかし、「黄色に変えたい」という要求が、「黄色が好きだから」と見込客が言ったのなら、それは単なる個人の嗜好でしかありません。 

 

よほどの大口取引であれば、検討の余地はあるかも知れませんが、個人の嗜好に振り回されるのは良い判断とは言えません。 

もっと、普遍的なニーズに対応できるよう商品改良に心血をそそぐ方が、多くの顧客を満足させることができるからです。 

 

よく営業マンが自分の成績をあげたいばかりに、見込客から言われたことそのまま会社に持ち帰ってくることがあろうかと思います。 

 

もちろん、成績を上げたい!という気持ちは大事ですし、意欲的な活動は歓迎すべきことです。 

ただ、だからと言って、議論する価値のないテーマを持ち込んで、開発や製造部隊の時間をムダに浪費させてしまうことは、歓迎できません。 

 

しかも、対見込客にも悪影響があります。

見込客の要求をそのまま鵜呑みにするということは、厳しい言い方をすると怠慢な態度であり、顧客軽視にもつながるのです。

 

営業マンは、見込客から見れば会社の代表者です。 

その営業マンの対応が、会社の評価につながるのです。 

 

だからこそ、見込客の要求をそのまま鵜呑みにせず、真摯に課題に向き合う必要があります。 

 

「黄色にしたい」 

「はい、わかりました!会社に持ち帰って、検討します」 

 

では、頂けません。 

 

お客様の要求を理解しようとする姿勢が必要なのです。 

 

それは何のために?と、上方展開するためには、ヒアリングが欠かせません。 

 

お客様が要求する「背景」は何なのか? 

その要求の「目的」は何か? 

その要求が満たされた際、どのような利益やメリットが生まれるのか?

 

何のために?を追求することで、見込客の要求を受け入れるべきか、断るべきかの判断が明確になります。

 

それだけでなく、顧客の要求に寄り添う姿勢が相手にも伝われば、承認欲求が満たされ、受注確度も必然的に上がります。

 

目の前の商談の受注確度も上がり、未来顧客に貢献できる「商品ブラッシュアップ」も実現できる。

 

一石二鳥です。

  

誰のための、何のための商品なのか。

誰のための、何のための機能なのか。

  

自社が貢献すべき顧客の利益、メリット、効用を真摯に突き詰める姿勢が社員にも浸透すれば、自然と社外にも広がってきます。

必然的に会社の評判も上がり、紹介商談も増え、自然と売上も上がっていくでしょう。

 

御社でも、見込客や顧客からの要求に対して、明確なガイドラインを持って営業活動をしてみませんか?