前回のコラムでは、「口中清涼剤」の市場において、市場シェア80.1%の「ブルスケア」と戦わずに、新市場を如何に開拓するか・・・
という課題を残して終わりました。
その課題解決の最大のポイントは【強者の見えないところで”勢力”を拡大させていく】作戦の遂行です。
そのためには、最終顧客(消費者)の【行動モデル】と流通経路の【欲望】の両方からアプローチする必要があります。
今日はココから具体的に突っ込んで見て参りましょう!
ブルスケアのような「口中清涼剤」が欲しくなる、または「ある特定の時に提案されたら使ってみたい!」と言うような生活シーンは、どんな時でしょうか?
- デートの前に。
- 電車やバスなどの密閉空間に入る前に。
- 商談など社外の人との打ち合わせの前に。
などの生活シーンのときに
- にんにく料理を食べたあとの消臭効果
- 缶コーヒーを飲んだときの消臭効果
を期待して「口中清涼剤」を購入するわけです。
しかし、この生活シーンに焦点を合わせてみると、どうでしょう?
「商談前のランチで焼肉を食べたいのに、口臭が気になり食べられない・・・」
「取引先訪問の前に缶コーヒーが飲みたくなっても口臭が気になり飲めない・・・」
などなど、「口中清涼剤」を最も欲しくなる行動をしているときに、その場で売っておらず、「食べたい、飲みたいもの」を我慢してしまうことがあります。
近所にコンビ二があるから、わざわざ焼肉屋さんに置かなくてもイイのでは?
と、思ってしまうのは、売り手の勝手な思い込みです。
消費者から見れば、欲しい時に売っていないと、我慢したまま忘れてしまいます。
また、流通経路の欲望にも視点を当てると『本来は入店していたかも知れない顧客が”取引先と会う前だから・・・”という理由で来店していないかも・・・』というチャンスロスも浮き彫りになっています。
消費者は欲しい時に欲しい分量だけ売っていれば、購入に結びつきます。
流通経路は、その商品を取り扱う事で売上が伸びれば、メーカーの提案に前のめりになります。
しかし、その両者の欲求が噛み合っていないと、市場は形成すらされません。
コンビ二の市場規模が頭打ちになった時、メディアはこぞって「コンビ二飽和状態」と打ち出しましたが、セブンイレブンは「飽和したのではなく、顧客が欲しいものが売っていないからだ・・・」と改めて市場の変化を見直しました。
すると、総人口は減る一方でも単身世帯数は逆に増え、女性の就業比率も増加傾向にあることがわかりました。
そこで、欲しい商品が欲しい分だけ購入できるように・・・と少量パックの惣菜を充実させたところ、それまで男性客が主要顧客層だったコンビニが、女性客も増加し、既存店売上高は、増加に転じたのです。
欲しい商品が、欲しい分量だけ売っていれば、購入には結びつくのです。
そう考えると「口中清涼剤」も、1回分づつの梱包にするか、液体タイプで即効性の高い商品が「焼肉屋」のレジ脇に売っていれば、顧客は手に取る可能性が大ということになります。
焼肉屋にとっても、にんにくを気にせず食べられることが店頭認知させることができれば、売上も伸びます。
消費者と流通経路の欲求を同時に満たすことができれば、マーケティングと営業センス次第で、市場は一気に広がります。
例えば、既存商品のパッケージのように、箱に入った500円の口中清涼剤が、仮にレジ脇に置いてあっても、多くの消費者は、商品を手に取りません。
しかし、10円でも30円でも50円でもイイのですが『使い切り商品』だったら、その場でスグに「口臭を消したい」というニーズは満たされるので、充分に購買には結びつきます。
消費者にも喜ばれる。 流通経路も集客につながる。
しかも、メーカー側も、小分販売すると、総売上が上がる可能性も充分にありえます。
広告でも集合広告の方が、総売上は高いですし、土地の販売でも、そのまま売るより、区画分けをして、小さな住宅を複数販売する方が、儲かります。
つまり、3社両得・・・というわけです。
市場は焼肉屋だけでなく、焼肉屋、ラーメン屋、パスタ屋など、にんにく料理を提供する飲食店は、全て営業対象です。
ライバルが想定外の販路を開拓できれば、一気に市場を開拓し、先行者利益を獲得することが出来ます。
無競争状態の販路を探す『市場創造戦略』は、波及営業の最も得意とするところ。
次回のコラムは、街中で見つけた「香料メーカー」が仕掛ける【無競争販路の開拓】をテーマにしてみたいと思います。