「もう、生きた心地がしませんよ。政府、マスコミの煽りで、またお客さんが激減しています。もう飲食店は辞めて他の仕事で出直そうかなって思っています」
知人の飲食店オーナーさんからFacebookのメッセージが届きました。
4月16日に緊急事態宣言が出されてから、外食産業をはじめ、ホテル・旅館業、遊技場等は、大きな打撃を受けました。
サラリーマン時代は、外食産業専門のIT企業に勤めていましたし、今でも同社をお手伝いしていますので、外食産業の経営者と交流があるのですが…
本当に地獄のような環境に晒されて、こちらが居ても立ってもいられなくなるほどの状況に追い込まれている飲食店経営者がたくさん居ます。
中には「藤冨さん、うちのお店引き継がない? タダでいいよ」という方までいらっしゃいました。
売上が立たない中、固定費負担に耐えられず、内装費、備品にかけてきた投資も全てドブに捨てざるを得ないのは、同店だけではありません。
政府方針、マスコミによる連日の「コロナ報道」を鑑みると、もうこれは構造的な問題。
一過性の問題ではなく、構造的な問題であるがゆえに、大多数の飲食店、ホテル・旅館業、遊技場は、いま大きな選択を迫られています。
なぜ、一過性ではなく、構造的だと断定できるのか。
もはや、単なる疫病ではないからです。
疲弊した国民、事業主を救うために、政府が過去ありえないほどの財政出動をさせています。
当然日本だけではありません。
国際通貨基金(IMF)のオフィシャルサイトでは、「公的債務の対GDP比」が101.5%と第二次世界大戦後のピークよりも上回ったと発表されていました。
平たく言えば、公的債務つまり、各国政府の借金が「世界の人たちが生み出した”儲け”」より上回ってしまったということです。
大盤振る舞いの財政出動の後は、当然ながら「引き締め」がやってきます。
日本のバブル崩壊も、金をバンバン市中にバラマキ、不動産、株式などの資産が上昇した後、政府が引き締めの方向に舵を切り崩壊へと突き進みました。
不安を煽るつもりはありませんが、本当の危機はこれからです。
・破壊された雇用
・組織から切り離された労働者(テレワークを筆頭に…)
・戦後最大になるであろう国民所得の落ち込み
・公的債務と民間債務の肥大化(金利が上がったら…恐怖)
・人々の行動制限によるメンタルの落ち込み
活力ある経済を生み出す原動力の多くが奪われた状態にあることは、紛れもない事実です。
経営者は、悲観的な未来と楽観的な未来を同時に見る目が求められます。
悲観的な目算が立てられなければ、リスクヘッジが出来ません。
カウンターパンチを食らえば倒れてしまう可能性すら出てきます。
ボクシングやフルコンタクト空手の経験者ならわかりますが、1~2発効くパンチをもらっても、「くる!」とわかっていれば、耐えることが出来ます。
しかし、同じパンチ力でも、「予測していないパンチ」は、ダメージが強いのです。
事業も同じです。
悲観的な予測を立て、「こうなったら、こうする!」と予め有事の際の基本方針を決定しておくことで、耐え忍ぶことができるわけです。
経営管理の世界では「コンテンジェンシープラン」と呼ばれている考え方です。
さぁ、いま政府方針、マスコミのひどい煽りを受けている業種・業態は、どこまで悲観的にみれば良いでしょうか?
・2021年春までに、この売上状況が続いた場合はどうするか…
・疲弊した消費者が財布の紐を締め続けたら、2021年以降もどうなるのか?
・コロナ禍で莫大に借りた借金の金利が高騰し始めたら、どうなるのか?
今の業種・業態をそのまま続けることは出来るのか。
批判的なロジックで眺めた自社の状況を鑑みて、衝撃を予測し、対策を施すことが大切です。
もちろん「なんとかなるさ!」という楽観的な視点も大事です。
しかし、今は平時ではありません。
今回のような劇的な構造的な変化に対して、楽観論で立ち向かうのは危険です。
ビジネスの前提条件がガラッと変わるのですから、その前提条件をまずは正しく掌握する必要があります。
・国民所得は減る
・失業者も短中期的には増加し続ける
中間所得者層の「贅沢消費」は期待できないわけです。
これは日本のみならず世界的に言えることです。
インバウンド消費は、コロナが収束したとしても、こうした構造的な理由により少なくとも2〜3年、長ければ5〜6年は最盛期のようには戻らないでしょう。
外食産業、ホテル・旅館業、など、中間所得者層に支持されていた贅沢消費も抑制されるのは火を見るより明らか。
今、お金のあるうちに…。
今、まだまだ消費者の余力が残っているうちに…。
構造的に問題を抱えた業種・業態は、新しい事業のあり方を模索するべきです。
悲観論だけでなく、ロジカルに考えても、楽観的な未来はたくさん見えてきています。
贅沢消費を我慢している中間所得者層がたくさん出てくるわけです。
我慢は必ず限界がきます。
バブル崩壊後は「安・近・短」と言うキーワードがマスコミから発信され「近場での小旅行や娯楽」が盛り上がりました。
抑圧された欲求は、必ず他に行き場を探します。
外食産業の人たちは、今まで何をお客様に提供していたのか?
・美味しい料理?
・心地よい接客?
こうした矮小化した事業の捉え方では、売上はだだ下がりのままです。
時代が断絶した場合、過去の成功モデルは通用しません。
飲食業界の方以外の方にも考えていただきたい。
私たちは、お客様に何を提供しているのか? と。
その答えは、アフターコロナのお客様が本当に求めているものなのか? と。
自問自答する必要があります。
御社は構造的な変化をどう捉え、いかなるビジョンを描いていますか?
追伸
暗くなった気持ちを取り戻すために、次回のコラムは、アフターコロナで成長する可能性の高いビジネスの切り口を提示したいと思います。
みなさまの明るいビジョンを描く材料になるよう、今週はアンテナを高くしておきます。