とことん「本質追求」コラム第422話 行動の強制よりも、考動の強制で成果をあげる!



「うちにも営業らしい営業がいなくなって強い懸念を抱いていますよ」 

 

先日、当コラムを愛読してくれているという方が、「第421話 攻めの営業に必要な3つのこと」https://www.j-ioc.com/wp2024/column/7226/ の感想を述べてくれました。 

 

20年前の活力ある営業部隊を懐かしんでおられ、藤冨も強い共感を覚えました。 

 

しかし「懐かしい」とは思いますが、「元に戻りたい」とは思いません。 

いえ、そもそも論として元に戻れるはずもありません。 

 

改善の策がないことに憂いを抱いてもストレスしか残りません。 

それならば、今の状況下で「できること」を考える方が精神衛生上、良好です。 

 

人間は環境の動物です。 

 

その時代に適合して、人間の思考や行動が順応されていきます。 

人ぞれぞれの性格、価値観があるように、全体としての「性格や価値観」も環境によって思考や行動に変化していきます。

 

時代という環境変化の影響を受けて「(若者)全体として性格や価値観」が形成されているのは、歴史を見れば明白です。

さすれば、社員の行動を変えよう!と思ったら、この環境そのものを変えなくてはなりません。 

 

宗教のように、下界を一切シャットアウトした環境で洗脳していけば、個の性格や価値観を変える事はできるかも知れません。 

しかし、通常の中小企業がそのような環境を整える事は、困難を伴うはずです。 

 

性格や価値観を変えると言えば、一時期「地獄の研修(仮称)」が有名でした。 

広告が頻繁に新聞に掲載されていたので、相当な人たちがあの研修を受けたでしょう。 

 

おそらく、本コラムの読者さんの中でも参加された方がいるはずです。 

 

私のクライアントさんでも、社長自らが参加され「私の人生が大きく変わった研修だった」と絶大なる評価をされていました。 

その好印象を受け、社員にも積極的に参加を促していました。 

 

しかし、残念ながら社長さんは変わっても、社員が変わる事はありません。 

もちろん、皆無とは言いませんが、いても極々少数派のはずです。 

 

実際、藤冨が20代でサラリーマンをしていた頃、お客さんでとても横暴な担当者がいました。 

その方が、地獄の研修に参加されて戻ってきたときの姿に、目玉が飛び出るほど驚きました。 

 

いつもなら「あー、今日はこっち!」と会議室をぶっきらぼうに案内する方が

「今日は忙しいところご来社いただき有り難うございます!」ぺこり

と礼儀正しく迎えてくれたのです。 

 

と、ここまで書くとみなさんご推察の通り。

残念ながら、1ヶ月が過ぎると元の木阿弥。 

1ヶ月後に再訪すると「あー、こっちに来て!」と横暴な人格に戻ってしまっていたのです。 

 

何十万円かけて研修しても、結果的には何も変わっていませんでした。 

人間が変わるのは、「自分自身が”このままではダメだ。変えなきゃ!”」を一念発起したときだけ。それ以外は変われないのです。 

 

だから、昔の営業活動を懐かしんで、「行動しろ、行動を!」とわめいてみても何も変わりません。 

「先週のコラムではテレアポ、飛び込みを推奨していたじゃないですか?!」と思われるかも知れませんが、それは誤解です。

藤冨は「テレアポ、飛び込み」そのものを推奨したのではありません。 

伝えたかったのは、相手を動かす営業テクニックではなく、自分が変わることで相手の心を動かす大切さです。 

 

なるほど、確かに自分自身が変われば、他人の印象も変えることはできる。

しかし、企業経営者として、または管理者として、社員に働きかける手段はないのか?という疑問が湧いてくるのはある種当然のことです。

 

冒頭の方も、どうやって「営業部員が積極的に行動をするように外から働きかければ良いのか?」を悩んでいました。

 

様々なアプローチがあるかも知れませんが、藤冨が普段のプロジェクトで実感している有効な働きかけの方法があります。

 

一言で言うと「成果」につながる「属人的な要素」をできる限り排除するアプローチです。

具体的に説明します。

 

まず、心構えを変えずとも、行動にブレーキをかけさせないよう配慮します。

 

例えば、同じ電話掛けにしても、ゴールをアポイントという成果に掲げると、相当のプレッシャーがかかります。

 

100件電話かけてアポが取れるのが良くても1件。

99件も心をへし折られる思いを続けたら、プレッシャーが強くなっていきます。

すると、自然と行動しなくなります。

行動(電話かけ)しろ!と命令しても、行動しなくなりますから、どちらもストレスです。

 

ところが、電話掛けを「●●についてのご案内をお送りしています。どちら様に送れば宜しいですか?」と担当部署や名前を聞くことをゴールにすれば、成果は少なくても10倍は上がります。

うまくいけば30倍くらいの成果には繋がります。

 

その後、聞き出した担当者に「手紙と商品紹介」を郵送、E-mail、FAXなどでコンタクトを取り、面談を取り付けていくステップを踏む方が、営業担当者としては明らかに、心理的な負担が軽減されていきます。

 

受注が成功する要素に「手紙」と「商品紹介」が加わるからです。

 

魅力的な手紙や商品紹介(チラシやカタログ、または補足資料)ができれば、極論を言うと、営業マンの習熟度にさほど影響されずに一定の成果が得られるようになります。

 

このように「成果」につながる「属人的な要素」をできる限り排除するアプローチにすることで、思考と行動停止を防止するのです。

 

行動を促すと、行動しなくなるような場合は、手紙や商品紹介のあり方を追求していく「考動」を求めるわけです。

 

成功要素から、どれだけ属人的な要素を抜いていくか…

一定の成果を出すためには、どのような接触方法、媒体、コンテンツが必要か?を考えながら行動修正をしていく「考動力」がこれからの時代は特に重要になります。

 

御社では、考動力を促す社内体制を整えていますでしょうか?