とことん「本質追求」コラム第417話 見えない不安を見える化するアプローチ

「藤冨さんのコラムを読んで勇気が出てきました。こんな時だからこそ、相手の立場に立って物事を考える力が大事ですよね」 

 

先週のコラムを読んだ読者さんから嬉しいお便りが届きました。 

10年ほど前にインターネットビジネスを教えていた際の生徒さんからの、久しぶりのお便りでした。 

 

「昨年末より急激に業績が悪化してきました。原因はこれまでのやり方が我田引水だったからでしょうか。コロナでとどめを刺された感じですが、良い機会だと捉え、根本から発想を変えようと思います」 

 

と締めくくられていたことに、ホッとしたのと同時に、希望に満ちた明るい未来を感じることが出来ました。 

 

結果に悲観するのではなく、原因を究明し、その改善に努力しているのですから、きっと復活されることは間違いありません。

 

もちろん未来がどうなるのか…誰にも明確な答えなどわかりません。 

 

それでも冷静さを失わなければ、勝機は必ず見えてきます。

その冷静さを失わないためにも「見えない不安」を取り除く必要があります。

 

「見えない不安」が、思考回路を停止させ、行動を萎縮させてしまうからです。

 

「見えない不安」は、まず「見える化」できるように全力を尽くし、そこから本質を見抜いていくことが大切です。

 

今日のコラムは、その「見えない不安」の根元となっている概念の一つにアプローチしたいと思います。

そして、これからの激動の時代を勝ち抜くための「冷静さ」を獲得するヒントになれば、この上ない幸いです。

 

藤冨 は「見えない世界」の根元の一つに「対立」があると感じています。

 

『境界線の政治学』(岩波現代文庫、杉田敦氏著)を読むとわかりますが、私たちが住む世界では、絶えず対立が起きています。

 

この対立が、自らの考え方や生き方に強い影響を及ぼしています。

当然のことながら、結果的に人生や事業活動にも影響を及ぼしてしまいます。

 

この表面的に見える事柄だけに捉われていると、「不安」がつきまとうと感じるわけです。

 

そもそも「対立の構造」は、人為的に作られるものだと『境界線の政治学』では言及しています。 

 

男性/女性の区別を始め、今回のコロナ問題を鑑みても「経済活動優先主義/モラル優先主義」「利他的行動/利己的行動」「自立/依存」など、意識的、無意識的に社会を二分化させる空気が醸成され、自然と社会の分断が始まっています。

 

これは、人間社会が成り立つ上で、ある種仕方のないことでもあるため、受け入れざるを得ないのですが… 

 

誰かが人為的に仕掛けたのか…

それとも自然派生的に生まれたかは知りませんが、無自覚な二項対立で、無駄な批判や対立による非生産的な活動に明け暮れているのは、無駄だと思います。

 

仮に人為的であったら、彼から見たら「してやったり」です。

「対立」を否定するスタンスは、表面的には、多くの方達が「ありだよね」と賛同してくれるでしょう。

 

しかし、行動レベルまで落とし込むと批判に合うのが容易に想像できます。

 

今回のコロナ騒動を見てもわかる通り、「感染拡大防止のために”経済活動”は自粛すべきだ!」と言う考え方と「経済活動をストップしたら、それこそ死人が出るぞ」と言う考え方…

 

多くの人はどちらかの考えを頑なに信じ、対立する人たちを批判しているのではないでしょうか。

 

このように発信している藤冨自身も、二項対立の世界の方が精神的な安定を保てると感じることがあります。

それでも意識的に「安定こそ不安定だ」と自分に言い聞かせないと、二項対立に甘んじ無自覚に対立相手を批判してしまいます。

 

無自覚に対立する概念を非難する最大のデメリットは、視野が狭くなることです。

 

視野が狭くなることは、マーケティングを追求する人や事業を主導する人たちにとっては、非常に危険です。

 

視野を広げ、俯瞰することで、成功のチャンスを掴みとり、失敗のリスクを減らすことができるからです。

 

時代の変化が緩やかな時は、多少の視野狭窄では命取りにはなりません。

カーレースが陸上のトラックのようにシンプルなコースであれば、視野の広さとタイムとの関係性が薄いのと一緒です。

 

しかし、ヘアピンカーブなどが存在する複雑なコースでは、コース全体を上部から俯瞰し、走行イメージを予め想定しなければタイムを縮めることは出来ません。

 

変化の激しい時には、全体像を掌握する力が求められるのは、カーレースだけでなく、事業活動でも一緒です。

 

もちろん、ビジネスの世界では、そのコース全体を見せてくれることはありません。

 

特に未来のビジネス環境は、見えないものだらけです。

 

見えない時には、仮説を立てるしかありません。

 

目を伏せたら、そこで「見えない不安」に襲われます。

 

今起きている事実を丁寧に拾い上げること。

そして、“その事実は歴史を振り返った時に、類似概念が起きていなかったか”…を調べてみること。

歴史は繰り返す、と言いますが本当に意外なほどに形を変えて同現象が起きているからこそ、億劫がらずに探求することが大事です。

 

過去に起きた類似概念があれば、未来の仮説を立てるヒントも見つかるはず。

 

そうやって「見えない未来」を「見える化」する努力を行うことで、「冷静さ」が獲得できます。

 

繰り返しますが、冷静さを失わなければ、勝機は必ず見えてきます。

 

あなたは、激動の時代を生き抜くために「冷静さ」を獲得する意識をしていますでしょうか?