とことん「本質追求」コラム第12話 大型商談での反論処理は厳禁

以前より、脱、戦闘用語! を自分に課して、戦略や戦術など「戦争を想起させるような言葉を排除しよう!」と試みたのですが・・・結論的に言うと無謀な挑戦でした。 

顧客を略奪対象にする思想と徹底交戦するつもりでしたが、そもそも、その試み自体が戦闘です。

ビジネスの現場において、競合他社がいる以上、彼らに勝たなければなりません。

そして出来る限り、自社の戦力を消耗させないよう、孔子の言う「戦わずして勝つ」戦略を構築しなければなりません。

なので、これからは戦闘思考バリバリの言葉が飛び出てくるかも知れませんが「顧客第一主義でも売りまくる」発想は捨てませんので、これからの宜しくお願いします!! 

ところで消耗戦というと、よく営業現場では「反論処理」の重要性や「クロージング」の重要性が説かれています。 

これは戦術レベルの話ですが、戦略思想まで影響してくるので、ちょっと聞いてください。

私も新人時代を振り返ると「応酬話法」と称して、よく反論処理を使っていました。 200万円、300万円クラスの小型商談では、これは非常に効果的に働いていました。 

ところが数千万~億商談になると、この営業テクニックは、逆効果となって働き始めます。

かつて某大手飲食チェーンのオーナー経営者と1対1の商談テーブルに座ったことがあります。

オーナー経営者は「君は面白い。成功したいならコレを読め」と本棚にあった中村天風氏の”心に成功の炎を”を取り出し、手渡してくれました。 

「ありがとうございます」とお礼をいって受け取ると「ダメだ、自分で買え。1万円する本だけどきっと君の財産になる。 もらったもので成功するとは思えん。成功したいなら自分で投資しろ」と、また本棚にしまってしまいました。 

「この社長、最高だ!!」と惚れ込んだ私は、提案を交えながら仕事への価値観を話し、最後は、人生の価値観まで発展・・・気がつくと2時間ほど会話をしていました。

そして、私なら御社に貢献できる!と最後に言い切ると 
「よし、やろう! でも俺ひとりじゃ決められん。役員会にかけるから来週また電話をくれ」と、残念ながら、「即決裁」とは行かず。。。

後日、無事に「調印式」を迎えることが出来たものの、オーナー経営者といえども、即断即決できないものなのだと、改めて実感した商談でした。

この商談・・・急展開を見せたものの、実は半年がかりで進めていたものでした。

それまで、上司がアプローチをしていて顧客からの否定に応酬話法で切り返すという典型的な商談スタイルで進めていたのですが、全くラチがあかず、平行線のまま数ヶ月が過ぎていたのです。 

結局、上司は「こういう商談はダメだ。あとはお前に任せる」とすべてを任せてくれたのですが、私がやったことは「反論」がでないように、相手が不安に思うこと、懸念していること、実現したいことを徹底して聞き取り、提案に反映させていっただけです。

つまり「反論」を未然に防止することで、商談が動き出した・・・という事になります。 

これは大型商談に限ったことではなく、小型商談でも非常に有効な方法なのですが、反論を未然に防止するための「商談手順をしっかりと事前に組み立てておくこと」で、強引な反論処理やクロージングをしなくても、しっかりと「調印式」まで持ち込めることが可能になるのです。

営業の小難しテクニックは一切不要です。 自己嫌悪感に陥るような、強気の姿勢も一切不要です。
事前に顧客の「実現したいこと」「懸念していること」「不安に思うこと」などなど、現場のホンネを吸い上げて、反論がでないよう事前に抑え営業話法を変換しておくだけです。 

「先んずれば制す」 

絶対に受注したい商談・・・
失敗できない新市場開拓・・・ 
会社の命運をわける大型商談・・・ 

勝ち取りたい商談があるのなら、これでもか!というほどの現場からのホンネを嗅ぎ取り、説得ではなく、納得して顧客が調印式にたどり着けるよう、商談の段取りを整えることが大切です。