「先日久しぶりにダイレクトメールを送ったのですが、全然反応がなくて… 何がいけなかったのですかね」
送られたDM一式と共に、2年前ほど前にプロジェクトをご一緒した役員の方から相談メールが届きました。
DMで反応率を左右するのは
- リストの質
- リストに対しての接触頻度
- DMが到着するタイミング(月日、曜日、連休の前後など)
そして肝心要の
- ダイレクトメールのコピー(文書)、デザインになります。
安直に「これがいけない!」と分析できません。
要素分解をして、原因を探らなければなりません。
しかし、送られたDMのコピーを見ると、明らかに「反応」が取れにくい内容。
すぐに電話をして、「このコピーはマズイですね。他にも要因はあるかも知れないけど…まずはやるべきことをやらないと反応は取れません」
とご指摘すると…
「えっ? そのDMは藤冨先生にチェックしてもらったものですよ」と以前私が添削したDMと一緒だというではありませんか?
冷や汗をかきながら、添削履歴フォルダを開けてみると…
いやいや全く違う…とホッと胸を撫で下ろしながら、冷静さを取り戻し改めて話を続けました。
「なるほど、確かに前回のDMを下敷きにしているのはわかります。しかし、微妙に変えてますでしょ」
とご指摘すると
「あっ…はい、もう少し読みやすくしようと社内で話し合って若干変えてました。でもこれだけで反応率に影響しますかね?」とおっしゃるので、ズバリ申し上げました。
「万人受けを狙いましたでしょ? 角がないから刺さらないんですよ」
と言うとハッとされた様子で、「…以前も言われたことでした。気を抜くと忘れてしまいますね。」と呟かれていました。
非常に重要な教訓なので、今一度心に留めておきたいところです。
“言葉”は、人々の思考に強い影響力を及ぼしています。
そして“文脈”や“話の全体構成”は、人々の行動様式に強く影響を及ぼします。
今回は、DMがテーマでしたが、これに限ったことではありません。
WEBサイトも、カタログも、全く同じ意識を持つことが大事です。
無論、商売に限ったことではありません。
コミュニケーション全般に言えることでもあります。
本コラムの特性上、商売に限って話を進めますが、何かの結果を求めるのであれば、言葉に神経を行き届かせることを忘れてはいけません。
優れた思想から生まれた事業であっても、言葉の選択を誤れば、世の中には広がっていきません。
どんなに優れた技術であっても、言葉の選択を誤れば、その技術を必要としている人達に届くことはありません。
ものづくりと言葉づくりは、同じくらいの知力・労力をかけなくてはならないのです。
サービスの開発も同じです。
何かを世に普及させたいと願うなら、人々に届く言葉が必要になるのです。
同じ会社で、同じ商品・サービスを売っている組織の中で、成績の良い営業マンと、凡庸な営業マンがいます。
何が違うのでしょうか?
要素分解をすればわかります。
- 顔、髪型、容姿、服装などの印象
- 声、話のテンポ
- 話す順番
- 話す内容(選択する言葉)
- 話の全体構成
- 相手への理解、共感、そして適応
- 行動への誘発(テストクロージングやクロージング)
などなど、様々な要素が「売れる、売れない」に影響を及ぼしています。
私も営業マン時代に、様々なトライ&エラーを繰り返してきました。
顔は変えられないにしても、髪型、ネクタイの色、服の色など、様々なトライをしていました。
話し方やテンポなども、売れる先輩営業マンのモノマネをしたりもしました。
20代前半は、相当営業関連のノウハウ本も読み漁りました。
しかし結論から言うと、自分らしさにそぐわないものは、結果には結びつきませんでした。
プレイヤーとしての営業マン経験、そしてコンサルタントとしてのサポート役を合わせた30年近くの経験値を振り返ってみます。
相手の思考・行動様式に変化を及ぼした要素には、2つポイントがありました。
優先順位も重要です。
ぜひ振り返って、あなたもイメージしてみてください。
商談でも、愛の告白でも、喧嘩の修復でも何でも結構です。
相手の思考や行動様式が変わり、良い結果が生まれたときは、以下の3つのポイントを押さえていなかったでしょうか?
第一に、「相手への理解、共感」です。
第二に、相手への理解、共感をした上での「話す内容、全体構成」(適応) 。
そして最後の第3ポイントで、話す順番や行動への誘発などが正しく押さえられていたはずです。
意識的にせよ、無意識的にせよ…です。
いくらカッコイイ言葉を並べても、相手の心に響かなければ、スルーされてしまいます。
一生懸命になっていると、どうしても自分(自社)のことを伝えたい…と勢い余ってしまいますが、情報の受け手が「私のことを思って伝えてくれている」「私にとって有益な商品、サービス、技術に違いない」と感じてくれない限りは、スルーされてしまいます。
実は、冒頭のDMも、まさにこのスルーされている状態が想像できました。
私が添削した時には、明確に「相手」をイメージしていました。
しかし、結果的に残念だったDMは、相手がぼやけていて「抽象的」だったのです。
これだけの情報化社会です。
万人受けは、響きません。
誰にとって、どんな有益な情報なのか。
3秒で理解できなければ、次のステージはないです。
DMに限らず、ホームページ、会社案内、カタログ、提案書…
あらゆる顧客接点を見直してみてください。
御社の媒体は、相手への理解、共感をベースにした「言葉」が並べられていますか?
そして、相手が、話の全体像が把握できた時に「行動してみたい」という動機づけを刺激できていますでしょうか?