「先日、とあるセミナーを受けてきまして、我々の業界で売上を上げるマーケティング手法を学んできました。採用した企業は、軒並み120%以上の増収だそうです。これが、そのセミナーのレジュメですが…どう思いますか?」
先日、クライアント企業の社長さんと3人で会食をした際、なにやらセカンドオピニオンのような相談を受けてしまいました。
仲良くさせてもらっている社長のご友人だけに、真剣にお答えをしたつもりですが、御機嫌ナナメに…。
セミナーレジュメをパラパラとめくっただけで、即答で「やめた方が宜しいと思いますよ」と言ったのが、気に触ったようです。
理由も申し上げたのですが、せっかくの楽しい会食が台無しになるのでは不本意です。
「詳しい理由はコラムに書きますので、お酒の入っていない時にご覧いただき、ご質問があれば、別途お答えします」と、会話を切り替え、その後は楽しく会談させてもらいました。
このようなご相談は、比較的「あるある話」だと感じたので、その方に理路整然とお伝えするのと同時に、読者の皆様とも共有したいと思います。
私が、真剣にレジュメを読み込まなかったのは、冒頭の説明を聞いて「これはマズイ」と感じたためです。
「同業種の成功パターンをコピペして、我が社も恩恵にあずかろう…」というスタンスは、「需要と供給」「企業間競争」そして「社内文化の育成」という、企業が生き残っていくために絶対に外してはならない3つの視点を見事に無視してしまっています。
目先の利益に心が動かされ、生存者(生存社)の条件を見抜けないと、待つのは衰退しかありません。
「わけあって絶滅しました」という恐竜など様々な絶滅していった生き物の「理由」が書かれたベストセラーがあります。
同書は、今回のテーマである個人、企業にとっても全く同じことが当てはまるので、参考までに主要な文脈をピックアップしてみます。
- 絶滅とは、その種類の生き物が、この世から1匹残らず消えること。
- 生き物が絶滅した理由は、大きく分けて二つあります。
- 地球のせい
- 他の生き物のせい
- 絶滅理由ランキング 1位 理不尽な環境変化(火山の爆発や隕石、気象環境の変化など) 2位 ライバルの出現 3位 人間のせい
- 私たち人間には「絶滅」に立ち向かうための「武器」があります。
それは学んで考えること。
「わけあって絶滅しました」 → (アマゾンで見る)https://amzn.to/303ZQ2D
小学4年の息子に読ませようと思い購入した本ですが、同書は、個人や企業が生き残っていくための本質を見事に突いた本だと感動しました。
それぞれの生き物についての絶滅理由は、同書を読んで頂きたいのですが、読んでいて気がつくのは、絶滅した生き物たちの共通点は「これまでの生き方を変えなかった」「仲間と一緒の行動が安全だと思い込んだ」ことでした。
例えが極論に聞こえるかも知れませんが、本質的には「同業種の成功パターンをコピペして、我が社も恩恵にあずかろう…」というスタンスと変わりありません。
なので、セミナーの内容云々ではなく、スタンスとして話を聞かない方が良いと感じたのです。
もちろん、本当に参考までに… ケースとして学習するのは良いとは思います。
しかし、どうしても一旦脳にインストールされると、記憶として残ってしまうものです。
それが、ちょっと気持ちが弱くなった時に、ずるずると引き込まれてしまうのが「安易な道」の性質です。
引き込まれたら最悪。
絶滅していった生き物のように「右に倣え!」の習慣から抜け出せず、ある環境変化が訪れた時に「窮地」に陥る危険性が迫ってくるわけです。
この「魔の手」は相当意識をして気をつけなければならないと、私自身も常日頃から心掛けています。
では、常日頃から「どのようなスタンスで事業(人生)と向き合えば良いのか?」というテーマが次に重要になってきます。
企業の生存条件を整理すると
- 需要者がいること。(これがないと売上が上がらない)
- 他の供給者(ライバル)と共存または打ち負かす能力があること。
- 様々な環境変化を察知し、それに適応すること。
この3つです。
「わけあって絶滅しました」にもズバリ書いてありました。
- 私たち人間には「絶滅」に立ち向かうための「武器」があります。
それは学んで考えること。
つまり、
- 需要者は、誰か? 彼らは今何を求めているのか? そして未来は何を求めてくるのか?
- ライバルは、何をやっているのか?(またはやろうとしているのか?)
- 今、起きている環境変化の背景、根底は何か?
これを考えることが、企業の生存条件になる…。
そうではないでしょうか。
ドラッカーも言っています。
企業の目的は「顧客の創造」である、と。
需要者(顧客)は誰か。
彼らは、何を求めているのか?
彼は、未来に何を求めてくるのか?
これは、まさに「顧客の創造」の思考プロセスです。
そして、彼ら(需要者)が求めていることをライバルよりも魅力的に提供することができれば、衰退の2文字は消え去るはずです。
こういった「企業の生存条件」を社員一同で共有し、環境変化に適応していく個人感覚を磨けば、組織全体が強くなります。
社内文化育成のキモになるはずです。
経営陣が「学び考えること」を放棄して、「右に倣え!」の思考・行動習慣に終始していたら、それは社員の皆さんだって「思考停止」に陥っても無理がありません。
子供は親の背中を見て育つと言います。
「社内文化」も、トップマネジメントの思考・行動が投影されているのではないでしょうか。
どう教育するかよりも、どう事業活動に向き合うか。
最近、つくづく感じることです。
御社では、企業が生き残る3つの生存条件について、真剣に向き合ったことがありますか?