「いつかお連れしようと思っていたレストランが潰れてしまったようです。美味しかったのに、本当に残念。 他のお店でも良いですか?」
先日、会食にお誘い頂いた社長がオススメ店に行けずに、とても残念がっていました。
ただ、何となく…ではありますが、社長からそのお店のお話を半年ほど前から聞いていましたが「もしかすると潰れるかも」と感じていました。
行ったことがないので、あくまでも直感でしかありませんが、得てして「ある特徴を持った料理自慢のシェフ」というのは、お店を潰す傾向にあるからです。
ある特徴…
これは、料理店に限ったことではなく、ほぼ全ての商売に当てはまることでもあります。
どんな特徴でしょうか。
勘の良い方ならお気づきの通り「独りよがりの技術自慢」をしている会社やお店です。
「私の料理は、拘り尽くしています。全てのお客様に美味しいと唸らせる自信があります」
「私のところの技術は、他の追随を許しません。精密な加工技術では日本トップクラスだと自負しています」
こういった自負そのものが悪い訳ではありません。
逆に自信のない技術で商売をしている方が、よほど私は「悪」だと思います。
では、何が商売の足を引っ張っているのでしょうか。
それは、お客様から支持をもらうための「着眼点とプロセス」に大きな問題が潜んでいるからです。
これはドラッカーも言っていることはではありますが、全ての出発点は、顧客にあります。
売り手が提供する技術も、もちろん大事です。
しかし、その技術によって生み出される「価値」に、顧客が関心を示さなければ、アタリマエですが、売上には転換されないのです。
つまり、最初の一歩は「顧客を知ること」になります。
そんなことは改めて言われなくても知っているよ!
多くの方がそう思っているでしょう。
しかし、私がコンサルティングという仕事を通じて、様々な企業、事業、商品・サービスと触れ合う中で、本当に顧客を知り尽くしているケースは、逆に少数派だと感じています。
実際、私が顧客の顧客から取材をすると、多くの経営者や営業責任者が驚きます。
「お客様が感じている価値を言語化すると、そのままセールストークになりますね!」と。
意外にも、自社が提供している商品・サービスに対して、顧客は何を期待していたのか、そして何に価値を感じているのか、を正しく理解することは難しいことなのです。
意識して「顧客は何を期待してきているのか?」「どんな満足を欲しているのか?」を追求しなくてはならないのです。
この出発点なくして、「商品・サービスのあり方と伝え方」は、正しく定まりません。
「商品・サービスのあり方と伝え方」が定まらなければ、顧客の認知の範囲でしか、消費はされないのです。
少し伝わりにくい概念なので、具体例を出しましょう。
例えば、いま大流行している「タピオカ」ですが、私の住んでいる町にも立て続けに3店舗もオープンしました。もちろんそれぞれ独立した店舗です。
全国に1000店舗もタピオカを提供する店があるそうですが、「タピオカ」と聞いただけで、多くの人々は「商品」を認知し、価値を感じ、好きな人は「消費欲求」が芽生えてきます。
これが「顧客の認知の範囲」という意味合いです。
自店の「商品・サービスのあり方、伝え方」に創意工夫をしなくても、取扱商品の認知自体で売れてしまうケースです。
一見、楽チンに見えますが、自店が創意工夫をして集客に努力をしないので、市場が右肩上がりの時は、売上が自然と増えていきますが、くだり坂になった時には、集客の打ち手が思い浮かばないはずです。
私の記憶の範囲だけでも「ナタデココ」「パンナコッタ」「ワッフル」など、一世を風靡したスイーツも、流行がバタッとなくなった歴史がありました。
その時、メーカーは在庫の山の前で愕然とし、店舗経営者は、家賃・人件費などの固定費の重たさに、耐えきれなくなったはずです。
「顧客の認知の範囲」で、商売をする限り、すべて市場に踊らされる覚悟が必要です。
そうではなく、自社の広告宣伝や営業活動を通じて、売上を引き上げ、利益を増幅させたいのであれば、やはり「顧客が期待すること、価値を感じること」を知る必要があります。
「美味しい料理」は、顧客によって様々な受け止め方があります。
運動量の多い人が好む料理。
頭脳労働者が好む料理。
ダイエットしている女性が好む料理。
忙しい人が好む料理。
家族と一緒にいる時に美味しく感じる料理。
恋人とロマンチックな空間を共有したいときに美味しく感じる料理。
「美味しい料理」と言っても、本当に様々です。
その美味しい料理は、誰にとって、どんな価値があるのか。
ここを追求することで「提供すべき料理。アピールすべきポイント」が明確になってくるのです。
まずは、既存事業の売上拡大戦略であれば、自店の顧客を観察し、何に期待し、何に満足を感じ、何に不満を覚えているのかを知り尽くしてください。
すると、企業の成長にとって、最重要要素である「非顧客(本来ならウチのお客様になるはずなのに、顧客になっていない人)」へのアピール方法も自然と浮き彫りになるはずです。
顧客、非顧客含めて、彼らのことを知っているのは、彼ら本人しかいません。
売り手は、どうしても売りたい商品をアピールしがちです。
しかし、買い手は商品を購入しているのではなく、期待に胸を膨らませ、得られるであろう満足…つまり価値にお金を払っているのです。
顧客、非顧客の期待と価値を知らずして、大きな売上目標の達成はできません。
御社の商品やサービスを購入しているお客様は、何に期待をし、どんな価値を欲していますか?