「先日のセミナーで一番響いた言葉は“商品は売れるが、製品では売れない。”というフレーズでした。“つくる品”から“商いをする品”という解釈をすることで、我々商社としての営業スタンスが明確になるような気がしています。」
10月に開催したセミナー参加者の方と先週会談した際にご感想をお話し頂きました。
このフレーズは、25年以上前に藤冨が修行させてもらったコンサルティング会社の社長の言葉で、私の言葉ではありません。
でもさすがに20年以上も「製品」の違いと「商品」の違いを意識し、営業の現場で実践を続けていくと、血肉になるものです。
なので、解釈の違いには敏感に反応してしまいます。
セミナーにご参加頂いた方は、『製品はつくる品』であり、『商品は商いをする品』と解釈されていました。
含蓄のある解釈をしてもらい、私もホォホォーと思いました。
しかし、藤冨は言葉の定義は、思考や行動に移すことができなければ、覚える意味がないと常日頃から思っています。
『我が社の商品は、商いをする品として捉えられなければならない』と部下に言ったところで、果たして何かしらの思考や行動に繋がるのでしょうか?
抽象的な解釈だけに、各自さまざまな理解がなされ、組織的行動力には繋がらない可能性が否めないはずです。
製品と商品の違いは、重要な概念だけに、思考や行動に即座に移せるようにしたいものです。
では、真意は何か。
一言で言うと、「顧客がその商品を購入するメリットが理解・納得できる見え方になっていること」です。
顧客メリットには、満足の拡大、不平不満の解消の両軸が存在しています。
満足度の大小、不平不満の強弱によって、価格が決定され、同じ穴のムジナの人(法人)達のボリュームによって売上の潜在力が決定されます。
従って、我が社の商品は、誰に対してどんな貢献をしているのか?を突き詰めて考え抜くことが、製品を商品に替え、販売を圧倒的にスムーズにする要になるのです。
先日、とある技術系の社長からも販売をスムーズにする仕組みを作りたいと相談を受けました。
同社は、化学系の技術に強い会社で、最終商品は化粧品を作っています。
肌の弱い娘さんのために作った商品が、とても効果的で娘さんの肌トラブルも改善。
『これは素晴らしい!世に広めよう!』と新規事業を立ち上げました。
娘さんも入社し、信念を持って営業しているものの中々結果には結びつきません。
『ウチみたいな中小には化粧品は難しいか…』と少し気持ちも滅入っている状況でした。
詳しくお話を伺っていくウチに、極めて重要なボタンを掛け違えていることが、浮き彫りになりました。
化粧品は、パッケージが大事! と思い込み、そこそこのデザイナーに依頼をして、カッコイイ商品を作っていたのです。
大手メーカーばりのパッケージで、とても洗練されています。
しかし、この商品が、誰に対して、どんな貢献をしてくれるものなのか、全くわかりません。
なので、広告宣伝費を投入して市場の認知を取るのかと思いきや、そんな予算はかけられないとのこと。
ネットでの販売は、今やある程度のまとまった費用がないと難しいので、流通経由での販売を考えていましたが、なおさら「かっこいいデザイン」だけでは、売上には繋がりません。
営業マンがいくらバイヤーを説得したところで、店頭でお客様に「誰にとって、どんなメリットが得られる商品なのか?」が意味不明な状態では、売れるはずもないからです。
コミュニケーションなくして、人に想いを伝えることは不可能です。
広告、販売にかかわるコストが限られているなら、パッケージやネーミング、キャッチコピーなど、ありとあらゆる顧客接点で、何とか自社商品の素晴らしさを伝えなければ、売れるものも売れません。
セールスの成功は、商品企画、パッケージ、ネーミング、価格戦略、チラシ・カタログ作成、ホームページ制作から、見込み客発掘にまつわるあらゆる戦術と営業ベースでの商談モデルの確立…全ての顧客接点で織りなされる「トータル・セールス・コミュニケーション」の結果です。
商品は、コミュニケーションが取れている状態。
製品は、作り手の思いだけが表現された状態。
この違いは、時にとてもわかりづらい場合もありますが、結果には雲泥の差が出てしまいます。
愚直に作られたホンモノの商品なのに、非常にもったいない。
その良さをお客様視点から眺め『売れる見せ方』に変換すれば、ある市場層からの評価は間違いなく得られるはずです。
営業活動だけではなく、商売そのものがコミュニケーション活動です。
御社の売り物は、「製品」のままで甘んじることなく、「商品」へと昇華させられていますでしょうか?