「最近、営業マンは根性がなくて困ります。新規を発掘しようとする意識は薄いし、商談を追いかける気迫もない。売上はかろうじて横ばいで止まっていますが、将来が不安で仕方ないですよ。」
先日、とある経営者の会合でお隣に座った社長が、少々諦め顔でそう呟いてこられました。
ここ最近、多くの経営者や営業管理職からも聞かれる話題でもあります。
確かに、私も「最近の若者は…」と感じることはありますが、ここで思考停止をしてしまっては、単なる愚痴で終わってしまいます。
明治生まれの祖父の世代から見れば、私たち世代も「骨抜き人間」のように軟弱に見えるでしょうし、実際に肉体の強さも間違いなく劣っているはずです。
それでも、時代は進化・発展しています。
もしかしたら環境が人間の能力を規定しているのかも知れません。
そう考えると、最近の若者は…と眉をひそめるのでは無く、彼らの思考や行動を通じて、変化する時代を見極めようと、受け止め方を変えたほうが、創造的な未来が広がっていきます。
私が20代前半の時に修行をしたコンサルティング会社の社長は、よくこう言っていました。
産業革命前後の世界は、筋肉の時代だった。
産業が発展するに従い、人間の筋肉は外部化されていった。
建設業の重機、車やバイク、新幹線など、人間の筋肉の代替品が世界をリードする時代。これが筋肉の時代だった。
しかし、これから(1990年前半の時から見て)は、脳の時代になる。
コンピューター、インターネットが一般に普及すると、人間の脳の代替品が世界をリードする。
記憶、計算などの処理は、脳以外のところで行われるようになると。
私はこの話を聞いたときに、人間は時代の発展と共に、能力が減損していくと感じました。
今、ビッグデータを処理するAIを中心に、さらに脳の機能が外部化されており、記憶、計算などの学生脳だけでなく、知恵や創造など、高度な脳処理までが外部化されようとしています。
今の若者は、次なる時代を察して、適応しているだけなのかも知れません。
また、もう一つ重要な“気づき”が私の頭の中で悶々としています。
それは、利己的な生き方がダサく感じられ、世界中の人々の意識が、利他主義に移行しているのでは?と感じるのです。
社会起業家の台頭、環境型商品の流行などからも感じられますが、私の足元でも強く感じることがあります。
それは、営業が利己的な活動だと認識されている社風の企業では、売上が横ばいまたは低迷していることです。
営業マンの無意識的ボイコットのようにも感じられ、最近強く懸念すべき事柄だと感じるようになったのです。
というのも、藤冨が新規事業の立ち上げプロジェクトのコンサルティングをしている現場では、「商品」を売るのではなく、「顧客メリット」を売り込む術を追求していきますが、その過程で、幹部社員を始めとするチームメンバーの意識が大きく変わることがあります。
「商品を売るのではなく、顧客メリットを提案する」
この意識を強く持ち続けてもらい、実際に営業戦術を組み立てる上で、顧客メリットを軸にする習慣が身につくと、まず最初に「意識」が変わっていることに気づかされます。
ある企業の営業幹部が、はっきりとこう言ってくれました。
「これまでは、自社の都合だけで商品を買ってもらっている感覚が強かったのですが、藤冨さんと一緒に仕事をさせてもらってからは“社会のために活動している!”という感覚が芽生えてきました。仕事って楽しいですね!」と。
部下と共に、その感覚を上手に共有し、社内の空気を変え、着実に売上を上昇させていった会社でした。
売上を上げようと躍起になると、どうしても利己的になってしまいがちです。
昔なら、良かったのですが、今の時代は苦しいかも知れません。
なぜなら、社会が利己的な活動を許容しているのなら、働く人たちも自分の仕事に許可を出し、売上を上げる活動に勤しんでくれますが、社会が利他的な時代へと移行してくると、働く人たちも躊躇するのは当然だからです。
売上を上げようと思うのなら、売上そのものに着眼させるのでは無く、私たちの営業活動がどう社会の発展に貢献しているのか。どうお客様の役に立つのか。
その意味を深く理解し合う環境づくりが必要なのかも知れません。
そのためには「商品そのものを売る」という発想から、「顧客メリットを提案する」という姿勢へと大転換させる必要があります。
一見、禅問答のように感じられるかも知れませんが、急がば回れ。
営業マンに売らせるのでは無く、営業マンが売りたくなる意識づくりが大事なのではないでしょうか。
御社の営業マンは、意識高く元気に営業活動に勤しんでいますでしょうか?