とことん「本質追求」コラム第331話 新規事業は出発点が命

 

 

 

「自社が有利に戦える市場に焦点を合わせることって、本当に大事ですね」

 

 

最近、絶好調なクライアントさんから嬉しい報告を受けました。

大型商談が1件、また1件と着実に実り始め、業績も向上。

展示会に出展しても、これまでにない「ヒキ」があり、受注ラッシュが続く日々。

 

夢を見ているようです。との1通の近況報告メールが届きました。

 

すぐに電話をかけ、詳しくお話を伺っていたら「たまたま運よくヒットしただけですよね…」と現実を懐疑的に捉えられていたので、藤冨はこう申し上げました。

 

運もあります。でも、この運を掴むために絶対に押さえなくてはいけないことを、全力で考え、努力されてきた…と。

 

そうお伝えすると、「まぁやるべきことは全部やりましたからね」と、心地よい達成感を感じる言葉を発しておられました。

 

 

事業の成功は、こうすれば絶対に成功する!という絶対法則はありません。

あったとしても、それも確率論で「成功しやすい」か「しにくい」かのいずれかです。

 

成功を担保するなんて、そんな美味しい情報は、深い人間関係なくして外部には滅多に流出しません。

 

でも、担保はできなくても、確率をあげることは十分にできます。

いわゆる成功法則やノウハウ書なるものは、その確率論をあげるものです。

 

冒頭の社長は、波及営業の第一ステップである「自社が有利に戦える市場」について、真摯に向き合ってこられました。

そして、ホームページ、提案書、カタログ、もちろん営業マンたちのセールストークに至るまで、全ての顧客接点となる情報に一貫性を持たせる努力をしてきました。

 

 

自社が有利に戦える市場は、藤冨が勝手に定義した概念が、どのようなプロジェクトに入り込んでも、この3条件はとても重要な視点になっています。

  1. 自社の強みが発揮できる市場。
  2. 顧客に明快な欲求や利益があること。
  3. 時代背景が、欲求を後押ししていること。

 

この3条件がすべて重なり合った領域が、自社が有利に戦える市場です。

 

表面的に見れば、当たり前のことを言っているように聞こえるかも知れません。

しかし、「知っている」のと「わかっている」のは違います。

 

この有利に戦える市場は、藤冨がクライアント企業さんと一緒になって成果をあげようと必死になり、結果を振り返ったときに、生まれた3条件です。

 

神経を研ぎ澄ませて…

 

  • どうやったら市場から注目されるのか?
  • 見込客が吸い寄せられるようにくる吸引力は何か?
  • この効用を喉から手が出るほど欲しいマーケットはどこか?

 

様々な試行錯誤を経て固まった、思考のフレームワークです。

 

表面だけ真似してもできるものではありません。

 

マーケッターが使う「SWOT分析」や「バリューチェーン分析」「3C分析」などのフレームワークも一緒です。

使えるフレームワークはたくさんありますが、実戦で頭に汗をかきながらアウトプットし、成果に結びついたり、失敗したりの経験値を積み重ねないことには、どれも使いこなせない代物ばかりです。

 

どんなに優れた道具でも、道具を使いこなす鍛錬なくして、武器にはなりません。

 

ど素人が機関銃を持っても、世界一の投げナイフの達人には、敵わないのと一緒です。

 

同業他社を否定することが真意ではありませんが、最近目に余ることがあります。

 

それは、頭でっかちなコンサルタントが多すぎることです。

そういったタイプに限って、実戦の場を嫌がります。

 

冒頭に嬉しい報告をくださった社長は、藤冨がお手伝いする前は、大手コンサルタント会社に年間数百万円のコンサルティング料金を払っていたそうです。

 

契約前は、優秀なコンサルタントが来て、すっかりと信頼したそうですが、契約後は「あなた実戦経験はあるの?」を思わず嫌味を言いたくなるような若手コンサルタントが担当についたそうです。

 

よく見聞きするフレームワークを持ち出され、教科書通りの指導が続き、「具体的な議論は御社の仕事」と突き放され、ようやく固まった方針も「やってみないとわからない」と頼りない態度。

 

不安に駆られながら上市したものの、鳴かず飛ばず。

結果報告をし、軌道修正のアドバイスを求めるも、また「教科書通りの3C分析からやり直ししましょう」と、通り一辺倒の指導(?)にブチ切れたそうです。

 

フレームワークは、あくまでも頭を整理するための道具にすぎません。

 

これは社内で実施するときにも、利点と限界をよく認識した上で活用する必要があります。

 

フレームワーク通りに思考すれば「正しい方向性」が導き出せるのなら、世の中成功モデルだらけのはずです。

でも、そうならないのは、整理された引き出しの中の「材料」が適切ではないからです。

 

良い材料を使わなければ、丈夫な建物ができないのと一緒で、事業の方向性(事業モデル)も、的確な材料によって組み立てられていなければ、脆くも崩れ去ってしまう運命になります。

 

新規事業が成功するも、失敗するも、全てこの出発点次第です。

 

御社では、事業の方向性を決めるときに、フレームワークは使用していますか?

そのフレームワークには、良い材料が投入されていますか?